焼けるような日差しを浴びた墓に供えた、真紅の薔薇と白いトルコ桔梗
墓参り客で繁盛する花屋の前に車を停めて待っていた僕は、妻が買ってきた花束を見て、まるでお祝いの席に向かうようだと思った。
「無量寿」と大きく刻まれた墓。
妻は、真紅の薔薇と白いトルコ桔梗が主役の束を広げて、供えた。
僕は墓石を水で流して、線香の束に火を付けた。
墓の前でしゃがんで、並んで手を合わせた。
僕は、ジリジリとした日差しが返って頭の中を静かにしてくれたような気がした。
1分なのか2分なのか、伝えたいことに区切りを付けると、蝉の鳴き声が一段と大きくなり、首筋に流れる汗に気がついた。
妻はもう顔を起こして墓石を見上げていた。
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