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Jリーグを支える市井の人たちのことと「デトロイト美術館の奇跡」

僕は地元のJリーグチームを応援していて、それは生活の一部になっている。
去年ある大事な一戦のチケットが買えなかったときのこと。「行かれなくなったから譲りたい」という人から、友人を経由して1枚のチケットを試合直前に手にしたことがあった。
譲ってくれた人は知らない人。僕は、仲介してくれた友人に「チケット代を支払いたい」と言って後日その「彼」の連絡先を教えてもらった。
ショートメールでお礼のメッセージは送ることはできたが、「彼」は僕から代金を受け取らなかった。
「彼」60代。Jリーグスタートの頃からずっと夫婦でチームを応援してきたシーズンチケットホルダーだった。
ところが妻が重い病に伏せ、昨シーズンは、20年以上ペアで購入していたシーズンチケットを解約し、一人でスタジアムへ通い続けたらしい。ところが妻の病が進行し妻に付き添う日々となってしまい、そのチケットが僕に届いたという経緯だった。
ショートメールの文面には「私たち夫婦の考えで、参戦できなかった場合のチケットは応援を変わっていただく手前、お代はいただかないことにしています」とあった。
僕は、その想いを知らずにスタンドで応援したのだが、このことを機に改めて考えることが増えた。
このサッカーチームは誰のものだろうかと。

 ――あたしのお願い、ひとつだけ聞いてくれる?
 最後にもう一度だけ、一緒に行きたいの。――デトロイト美術館へ。
 そうして、フレッドは、やせた衰えたジェシカを乗せた車椅子を押して、DIAへ出かけていった。
 これが最後の訪問になると、フレッドはわかっていた。だから、正面の堂々とした入り口から入って、ホールを通り、リベラ・コートを抜けて、ジェシカが大好きな印象派・後期印象派の部屋へと入っていくことにした。
「デトロイト美術館の奇跡/原田マハ」より引用

原田マハの「デトロイト美術館の奇跡」は、2013年、アメリカ、ミシガン州デトロイト市の経済破綻により存続が危ぶまれた「デトロイト美術館」(通称DIA)が、地元に人たちの力によって救われた事実、実際の経緯をベースにした小説。
DIAに対する地元ファン、アートファンたち、一般の市民や司法関係者、行政関係者の想いに胸が熱くなる。

僕の住む町のJリーグチームを支える市井の人たちのこととオーバーラップしたのだった。



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