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書評シリーズ第5回 『チェンソーマン』

著者:藤本 タツキ

「ぶっ飛んでるとはこういうこと」

第6回目は、集英社「週刊少年ジャンプ」にて2019年から2021年まで連載された「チェンソーマン」です。

同作品は、2020年に「第66回小学館漫画賞少年向け部門」を受賞しています。

舞台は現代の日本。世の中に蔓延している「悪魔」と、彼らを駆逐するための組織「公安」との戦いを描いた作品です。

まだ絵に粗々しさは目立つものの、悪魔との戦いの描写・構図が非常に迫力があり、まるでアクション映画を観ているような、とても見応えのあるバトル漫画です。

主人公は幼い頃に父親の借金を背負い、その返済のために「デビルハンター」としての生活を余儀なくされた「デンジ」。

彼は一日三食のご飯を食べることや、友達と遊んだり、女の子とデートしたりと、普通の生活を望んでいます。

しかし、「ポチタ」という、主人公の唯一の友達である頭にノコギリがついている犬の悪魔と契約したことから、「チェンソーマン」に変身する能力を身につけ、公安4課にてデビルハンターとして新たな生活を送ることになります。

デビルハンターは捕らえられた悪魔と契約することで彼らの能力を使い、人々に危害を加える悪魔と戦います。

この設定が面白く、悪魔と契約するためには体の一部を差し出す必要があるなど、能力の強さとその代償は比例するようになっています。

このあたりの駆け引きが、ただのバトル漫画とは一線を画しているところです。「ジョジョの奇妙な冒険」や「HUNTER×HUNTER」に影響を受けている印象を受けました。

主人公は仲間と共に慎まやかな生活を送れることに満足していましたが、やがて、次々と彼を狙いに来る悪魔たちとの戦い、その戦いで失っていく仲間たちなどの経験を通じて、少しずつ心境が変化していきます。

また、主人公は公安4課の上司である「マキマ」という女性に一目惚れし、彼女に認められることを目標としていますが、最後の最後、マキマの真の目的を知った後の葛藤など、人間の心理描写についても深く追求している作品です。

ネタバレになってしまうのでラストについては述べませんが、現在第1部「公安編」が11巻で完結しています。

第2部は2022年夏より「ジャンプ+」にて連載開始予定ですので、早く続きが待ち遠しい作品の一つです。

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