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ともみの部屋 #2

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伊佐知美の、世界一周の旅とエッセイ。2016年10月〜
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2018年9月の記事一覧

ひつじ草食み、雲は流れて、私たちはこれから何処で【モロッコ・フェズ→メルズーガ】

ひつじ草食み、雲は流れて、私たちはこれから何処で【モロッコ・フェズ→メルズーガ】

ぷかり浮かぶ、雲の下。ひつじは草食み、青は流れる。

刻む時は、きっと決して同じでない。朝は日が昇ると同時に起きて、ピンクに染まる空を見ながら歯磨きして、夕暮れをぼんやり見たら、空に星が浮かぶを待つ。

何時、何分、バスや電車を待つでなく、「バスが来たら乗る」を待てたら、どれだけ私たちは怒ることをやめるだろう?

青く、蒼く、碧い、街へ。車に乗って、窓の外くるりくらり、変わる景色を見つめていたら。

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「幸せになりなさい」広い空を見ながら思い出したりして【カタール→モロッコ・カサブランカ】

「幸せになりなさい」広い空を見ながら思い出したりして【カタール→モロッコ・カサブランカ】

「幸せになりなさい」と言われたことがあった。その言葉の重みを、大切さを、私はまだ本当の意味で噛み締められていない。気がしている。

「幸せになるんだよ」。なんて深く、遠い言葉だろう?

左手には、久しぶりの晴天の雲の上の海外の空が広がっていた。薄くもやをかける雲の下には、いつもなら見られない茶色く乾いた大地が、どこか不自然に区画されて、大地にナスカの絵を描いているようだった。

10人と人が集ま

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足裏が地面に数センチ近づいたら、旅が始まる合図【日本・東京→モロッコ🇲🇦】

足裏が地面に数センチ近づいたら、旅が始まる合図【日本・東京→モロッコ🇲🇦】

地面に数センチ近づくと、「旅が始まるのだな」と感じ始める。東京にいると、どうしてもヒールの靴を履いてしまう。それはきっと、まだ背伸びをしたいから。見栄を張って、強がって、それでも私はこの街で生きていくのだと、大勢の中に、混ざってどこか安心をしたいから。

「ヒールの高さだけ、違う世界が見える」みたいなことを、昔誰かから聞いた。数センチ高い距離から見るネオン、階段との距離感、あなたとの顔が近づく、そ

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雨上がりの静けさ、響く夜、連休のおしまい【日本・東京】

雨上がりの静けさ、響く夜、連休のおしまい【日本・東京】

久しぶりに、しんと静まりかえった夜。どこか安心する、小さな耳鳴り。「うるさいくらいの静寂」は、「頭痛が痛い」とは少し違って、日本語として成り立っているように私は想う。静けさや寂しさは、時折音を鳴らしながら私の横を通っていく。

走って走って、どこへ行くのか。何度目かの夏はまた指をすり抜けて、花火をもう一度楽しみたかったのに、秋の風を連れてくる。「順番」は、時に意地悪で、けれどずっと守られるものであ

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