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伊佐 知美
2017年10月23日 22:59
旅をしていると、時折どうしようもなく美しい時間に出会うことがある。同じようなことを感じたことが、これまでも何度かあった。何度も。たとえばクロアチアのドゥブロヴニク、スプリット。石畳響く夏の音、小さな猫が私の膝に乗る瞬間。この夜が明けないで、と願ったこと。オーストラリアのフリーマントル、ロットネスト。フィンランドのヘルシンキの教会の坂の上で、ひとり夏の風に吹かれたこと。なんてことない日常
2017年10月16日 23:46
どうしてひとりの旅が好きなのか、その理由は薄々理解できるようになってきて、私は本当にことばを紡ぎたくて、湧き出てくることばを手放したくなくて、それを綴って、綴って、閉じ込めて開放したいのだ、と。ひとつ残らず、見つけたことば、できれば手のひらにおさめて、つかむ。それが複数いると、どうしても上手くできない。さみしいから、甘えたいから、ねぇねぇ、と聞きたいから。話して話して、おしゃべりね、止まらない
2017年10月14日 22:57
温かいお茶が好きなので、コーヒーショップでもためらいなく紅茶を頼んでしまうことがある。ベトナム・ホーチミンの街歩きで、偶然見つけた3階建てのコーヒーショップに入ったときも、そうだった。「Hot or Cold?」が全然聞き取れなくて、「ん?」と何度か聞き返してしまう。てっきりコンデンスミルク入りがいいのか、そうでないのかを聞かれたのだと思った。「Non suger」と言ってもらちがあかず、
2017年10月13日 22:53
その日、ホーチミンに着いたとき雨は降っていなくて、わたしが宿にたどりついてそして眠りにつくころ、ごろり、という光と音の幕開けの合図とともに、激しい雷雨がはじまった。わたしの部屋は、ホーチミンの賑やかな市街から離れた小さなブックストアの、3階だった。地上から離れているぶん空に近くて、そして雨にも近しい場所。ざああ、という形容では足らないくらい、雨は降って、降って、一晩中降り続いていたように思う。
2017年10月3日 21:32
不思議なもので、人生というのは「あれはだめ」「これはだめ」と言われているうちは「それもしたい」「これもほしい」「あぁ時間がない」なんていうくせに、「さぁどうぞあなたはもう自由の身」といわれた途端、「なんかまぁ、今度でいっか」なんていう、どうしようもないものである。人生、なんて大きく括ってももはや何の意味もないだろう。結局単なる自分の話である。「行かないで」という人がいたときは「えっ……」と思っ