「豊志賀の死(真景累ヶ淵)」(18歳以上向け)
江戸は根津の七軒町に住む豊志賀は、浄瑠璃の富本節の女師匠で、三味線を教えて生計を立てていた。年齢は37歳になるが、男嫌いとの評判で、これまで旦那をとったことはなかった。それでも器量良く年の割にも若々しい容姿であったので、男の弟子からも女の弟子からも評判が良かった。男の弟子の中には彼女の美貌に憧れて通う者も多かった。また身持ちの堅さから、花嫁修行として娘を弟子として彼女に預ける裕福な商家も多かった。
さて豊志賀の家に出入りする者の中に新吉という21歳になる若者がいた。煙草屋