「見る」を見る/植本一子『フェルメール』
点在するフェルメールの全作品をカメラにおさめるために、世界の美術館を一度に巡った記録だと聞いて慌てて私は本書を手にとった。植本一子『フェルメール』(ナナロク社・Bluesheep)は彼女が撮影したフェルメールの写真とそれを巡る旅のエッセイから構成される。彼女は現存するフェルメールの35の作品を弾丸のように旅してカメラに収めていく。特長は彼女が絵だけでなく、その細部やそれが掲げられた空間、それを見る人たちを撮っている点にある。絵の前に立ち絵を眺める人がいることで、絵の中の女がこ