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『百年の孤独』を代わりに読む

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ガブリエル・ガルシア=マルケスの『百年の孤独』をゆっくりと読んでいきます。月1回更新予定です。
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書籍版「『百年の孤独』を代わりに読む」をstores.jpで販売開始しました

【お知らせ】BOOTHからstores.jpにネット通販を移転しました。(2019/07/14) 2018年5月6日開催の文学フリマ東京にて頒布いたしました拙著「『百年の孤独』を代わりに読む」をstores.jpで販売開始しました。ガルシア=マルケスの『百年の孤独』を読者の代わりに読むというnoteでの四年にわたる連載(1〜17章)に新たに18〜20章を書き下ろした全20章です。 文フリで「『百年の孤独』を代わりに読む」のブースに多数ご来店、ご購入いただきありがとうござい

第17回 如何にして岡八郎は空手を通信教育で学んだのか?

【前回までのあらすじ】 バナナ農園のストライキが労働争議と駅前での大虐殺という最悪な結果を迎えて以来、マコンドに雨が降り続いた。アウレリャノ・セグンドはペトラ・コテスと愛を交わそうとして、「そんなことしてる時じゃないわ」と拒まれた。屋敷の周りを埋蔵金を求めて掘り返すばかりで、家のことは任せっきりの彼に、フェルナンダは堪忍袋の緒が切れた。代わりに読む「私」は「そんなことしてる時じゃないわ」という言葉を手掛かりに、感動のあまりコピーせざるを得ない私たちについて思索を巡らせた。

第9回 マコンドいちの無責任男

【『百年の孤独』を代わりに読む】 ※無料で最後まで読めます。 前回までのあらすじ:自由を求めて幾度も戦乱をくぐり抜けてきたアウレリャノ・ブエンディア大佐とマコンドの人たちだったが、二十年近くに及ぶ戦争ですっかり疲弊していた。 「戦いのむなしさを最初に意識したのは、ヘリネルド・マルケス大佐だった」。彼は「市長兼司令官として、…週に二回はアウレリャノ・ブエンディア大佐と電信で話し合った」。最初のうちは状況や決定は具体的だったし、「アウレリャノ・ブエンディア大佐には親近感を抱か

¥100

第2回 彼らが村を出る理由

第1章はマコンドを開拓した若き族長ホセ・アルカディオ・ブエンディアがジプシーたちの持ち込んだ発明品にはまるあまり、妻や子供をほっぽりだして、文明との接触を目指し引越しを画策するも、やがて落ち着いてマコンドに腰を据えるという話だった。第2章は、彼らがもといた村を去らねばならなかったいきさつ、マコンドに住むものがマコンドを出て行く理由を中心に話が進んでいく。今回はこのメインストリームをたどりながら、その時々に彼らが遭遇するありえない出来事とその応じ方の可笑しさについて見ていきたい

第1回 引越し小説としての『百年の孤独』

ホセ・アルカディオ・ブエンディアの一族が海から遠く離れた内陸の土地にマコンドという村を開拓し、繁栄させ、百年の後に村も一族も滅んでしまう。大雑把に言えば『百年の孤独』はその一族と村の年代記である。しかし、それを知ったところで『百年の孤独』を体験したことにはならない。この文章では、大雑把なあらすじとは対極のこと、細かいところに拘りながら読み進めたいのだ。なにしろ、可笑しなことは細部に宿るのだ。町を繁栄させるのも、滅ぼすのも、国家を転覆しうるものもやはり最初は細部に宿ったはずだか

第0回 明日から「『百年の孤独』を代わりに読む」をはじめます

ガルシア=マルケスの『百年の孤独』をはじめて読んだ時のことが忘れられない。あれは本当に世界がひっくり返るような経験だった。現実には起こりそうもないことがつぎつぎとまるで手品ショーのようにして起こる。それでいて、かつてこんなことが私の家族にも起こったのではないかという親密な感覚が、すっかり忘れていたことを思い出したときように迫ってくる。こんなことが小説でやれるのかと私はひどく驚いたのだ。ただただずっとこれを読んでいたいと思った。と同時に、多くのひとに読んでほしい。『百年の孤独』