カフカの日記を読む日記 3(2024年6月8日から6月11日まで)

2024/06/08

 しかしどうしたものか。ほんとうに「おれ」でいいのだろうか。だんだん自信がなくなってきた。その点、ドイツ語は「ich」と書くだけでいいから迷わずに済みそうだ。原文を参照すれば、カフカが日記にichと書いていたことはすぐにわかる。


2024/06/09

 カフカのichを日本語にするとしたら「ぼく」だろうか「私」だろうか、それとも「おれ」だろうか。あるいは「うち」や「わし」の可能性だってある。
 そもそもカフカの一人称として、ほんとうにichはふさわしいのだろうか。


2024/06/10

 カフカは、西ヨーロッパ系の同化ユダヤ人として、ボヘミア王国の首都プラーク(現在のプラハ)に生まれた。チェコ人の乳母、ドイツ系の教育、そしてユダヤ性。このように簡単に見ただけでも、彼の出自を一つに定めることの困難さが理解できるだろう。


2024/06/11

 自身の出自についてカフカ本人がどう思っていたのかは、いまや彼が書いたものから想像するしかない。ドイツ、プラハ、ユダヤ。そこに家族という問題も含めていいかもしれない。何であれ、その出自からカフカという作家に迫っていくという方法は、一定の効果をもたらすだろう。

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