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DXをシンプルに言うと「ゲーム化」で、「ゲーム」のルール設定こそ大事…って話

筆無精なのでちょっとまた間が空きました。
メディア・プロデューサー、クリエイティブ・ディレクターのトミタプロデュース富田剛史です。

前回、分かったようで分からない「DX」という言葉を「ゲーム化」に一括変換すればぐっと意味が通じますよ・・・と書きました。

今回はその続き。

DXとは、いわば「ゲーム化」。
では「ゲーム化」とは具体的にはどういうことか?

ゲームとは、コンピュータゲームばかりではなく、スポーツもボードゲームもピンボールもみんなゲームです。それらはなんで人を夢中にさせるのか?

ルールがはっきりしている。「ゴール」「勝利」「クリア」など目標が明快。イコール『攻略法』が必ず存在する。ということは、適切な努力をし続ければ少しずつでもレベルが上がっていく。すると、達成感がある。

ということなんでしょう。
だからゲームは楽しい。中毒になるくらい人を夢中にさせる。

一方で、現実の仕事や人間関係、勉強などはそうはいかないのでつまらない・・・ん?果たしてそうか?

そういう「現実のつまらないと思っていたこと」に、ルールを決め、ゴールや勝利の目標を決め、攻略法と努力の方向性をはっきりさせて、レベルが上がっていくのを自己認識できるようにしたらどうか? 仕事でも家事でも勉強でも、きっと達成感が出てくるのではないか??

昔なら無理だったことが、IT/ICT技術の発展で可能になってきた

そういう発想は昔からあったとは思います。しかし、仕事や家事や勉強のレベルアップの数値化とか、同じ時期に始めた他人とのデータ比較とか、目標に向かう方法論の”数値に基づくノウハウ化”などは、そうカンタンにできなかったわけです。

ところが、それがここ数年で一気にできるようになった。なぜか?

インターネットの高速化、スマートフォンの高度化と一般普及、AIの発展とクラウド技術の進展、ロボットや自動運転システム、センサーやカメラ技術などハードとソフトが同時発展したデバイスの進化、その全ての低価格化・・・

それらによって、昔だったら「超人」「天才」「上級職人」などしかできなかったことを、分析・練習・再現性高く習得することが可能になったのです。

あとは、それをどう使うか。◯◯とハサミは使いようで、今書いたような技術の進展を、例えば主婦なら「子どもが夢中で宿題やるように」とか、「夫が進んで家事を手伝うように」とか、そういう方向に、まるでゲームのように計画し、ルールやゴールを魅力的に作り、誰かと競わせて、勝利の攻略法を提示し、努力にはご褒美で報いることこそが「ゲーム化」です。つまり「DX」。

もちろん、主婦じゃなくても、経営者と社員、企業と顧客、どんな関係でも同じこと。ゲームのように楽しんでしてもらえるように、ルールを整える。

「DXの本質は、事業構造改革である」・・・は正しいか?

ところで、ビジネス系の記事やコンサルタント・大学教授のインタビューなどでは、「DXの本質は、デジタル時代の本質理解による事業構造改革である」というようなことを散見します。

経営の目的が収益性向上や上場企業なら株価向上というなら、そういう解釈でしょう。

というか、そういう人たちが「DX」なんてややこしい言い方を広めてるんだから、僕が言うことの方が彼らが言わんとしていたことを曲げているのかもしれませんが。

しかし個人的には、収益性の向上は手段であって経営の目的ではないと思っています。

以前「老舗の経営考」という記事にも書きましたが、短期の収益性ばかり追いかけたり、株価の向上を第一に目指す経営というのは歴史的にはごく最近の傾向で、それが地球を取り返しのつかぬほど疲弊させた。もう変わらざるを得ない方向ではないでしょうか。あと10年もしたら「古い考え方」といわれることを期待します。

みんなで継続を目指すゲームだってある

まぁそれはともかく、僕が言いたいのは「ゴールやルールの設定は、収益性や株価向上でなくとも構わない」ということ

老舗企業なら事業継続自体が目標でしょう。何を変えて、何を変えずに、それでも同じのれんを守り続けるか・・・そこに同じくらいの老舗企業がたくさん参加して、競い合いながら継続を続けるなんてゲーム化もできるかもしれません。何も誰かを蹴落として「勝つ」というばかりがルールではありません。みんなで飛ぶ縄跳びや蹴鞠(けまり)のように、長く続くことをみんなで目指すゲームだってあるんですから。

それを、IT/ICTの力をうまく使って、参加している人が夢中になって、もっと頑張ろう、もう少し頑張ろう、よしヤッター!というルールやツールを整備すればいいわけです。

昔、僕が福岡県のラジオ局にいた時に、福岡県の飲酒運転が全国ワーストとなり、何かいい撲滅啓発企画はないか?と相談されたときに、「ワーストワンという福岡県の飲酒運転の数ってどのくらいなんです?」と警察に質問したところ、たしか350件くらいと答えが返ってきて、しかしそれがひと月なのか一年なのかが僕にはピンと来ませんでした。よく聴けば、その数字は一年なのだとか。

飲酒運転ゼロデーの連続記録をみんなで数えることで、福岡の飲酒運転が減っていった企画「Operation DDD」

「だったら、一日1件あるかないかで、ゼロの日もあるのですか?」と聴くと、「2〜3日ゼロが続くことはよくある。しかし1週間ゼロが続くことは無いね〜」とおっしゃるので、「ならば!」と、僕が考えたのはOperation DDDという企画。
飲酒運転ゼロの日が連続何日続いているのかを、みんなで数えて記録が出るのを楽しみにするというものでした。

毎日その記録を、この企画を相談してくれた広告会社のメンバーが運営するWEBとSNSで発信し、当時僕がいたラジオ局でも朝と夕の通勤時間ゾーンで毎日発表しました。すると、1週間連続ゼロデーはすぐ達成し、何週間もゼロということも起きてきました。

当時いろいろなメディアで同時多発的にいろいろな努力をしましたから、その企画のおかげと言いたいわけではありません。

ここで言いたいのは「DX」の話。要するに、ゲーム化することで、楽しくなるよという例です。当時はせいぜいSNSとラジオくらいでしたが、今ならスマホアプリを作り、ゼロデー連続に「懸賞」を募集して、ひと月連続ゼロを達成したら◎◎社が◎◎◎をみんなにプレゼント!などと野球チームの優勝セールみたいにご褒美を共有できたらいいなと思います。

そういうこと、たくさんあるでしょ? さらにおもしろくする企画もいろいろ考えられますので、気になる方は何なりとご相談ください。


「ゲーム化」は、ルールとゴール設定次第で、みんなハッピーな未来も、勝ち組/負け組を分ける未来ももたらす

また話がそれましたが、DXは何も「競争に勝つ」ためばかりじゃなく、あらゆる困ったこと、つまらんこと、人が動いてくれないことにこそ役立てると良いということです。

それには少々アタマを柔軟にして「面白さ」を付加する企画力と、そこに使うべき「デジタル技術の使い方の知識」の両方が必要なんですね。企画マンとデジタル系の技術者とマーケターが一緒に考えること。

DXを、もっと収益性を上げること、もっと株価を上げることにゴール設定をし、ルールを設けたゲームばかりになったら、一体どのような未来が来るでしょうか。

そして現実には、どんどんとそのように動いている世の中に危機感を覚えませんか。

収益性と株価の時価総額が「企業価値」で、「その総和が国の価値」だと思い込み、頭の良い人たちがそんなゲームに夢中になって、本当に大切なものがなくなってしまうのは誠に残念です。

今ならまだギリギリ間に合うかもしれないから、その気のある皆さん、一緒にもう少し別なゲームを考えませんか?

トミタプロデュース株式会社 クリエイティブディレクター メディアプロデューサー 富田剛史 でした。

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