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日本の老舗の経営考:文化 or ビジネスではなく、文化をつなぐために経営する

メディアプロデューサー、メディア化支援コンサルタント、トミタプロデュース株式会社の富田剛史と申します。

私は、「メディア」の研究や実験、実践や人材育成などをずっとしてきました。これは私の仕事でもあり、趣味でもあり、性癖でもあります。

クライアントさんや、生徒さんなど、他人にはアレコレと、情報発信の方法・・・それもソフトからハードまでいろいろな観点で教えたり一緒に作ったりするのですが、案外自分のことは何もしません。SNSも一応ひと通り触ってみますが、あくまで「実験」や「研究」のためということがほとんどで、そのコミュニティにどっぷりハマることはまずありません。

このnoteも、アカウントを作ってみたけれど放置していたので、1年以上も経ってようやく初エントリーです。それも気まぐれなので、続くかは分かりませんが・・・もしご縁でこのnoteをご覧になってくださった方がいたら、何か少しでもお役にたてればと思っております。

さて、前置きはこのくらいにして、今日は、私がたまーに書いている自社サイト tomitaproduce.jpトミタブログのエントリーを、こちらでも少し形を変えてシェアしてみます。日本の「老舗」についてのお話です。
(もし、全文お読みになりたい・・・という方はコチラへ)

老舗の経営にSDGs時代のヒントがあるはず

先日のとあるご相談。旅館や料亭、呉服屋、履物屋、和菓子屋、寿司屋(敬称略)など、日本中の様々な古いお店が主なメンバーになっている勉強会の情報発信についての企画がテーマでした。

「一流のお店が教える本物の日本文化・・・」を発信したらどうかという話があるようでしたが、私は「キーワードは老舗では…」と思いました。

「日本文化」だと、能や歌舞伎、お茶お華などの先生の方がコンテンツとしては強そうですが、「老舗」は伝統だけではなく、舗=店…日々生きる糧を得る営み「商売」をしている存在ということ。しかし、英語の「ビジネス」とはニュアンスが違います。「お金」以上に「継続」に重きが置かれ、「勝ち負け」ではなく「お互いさま」の精神が大事にされています。

まさに、今世界がテーマにしている SDGsですよね。

日本は世界でも稀な「老舗大国」だと知ってましたか?

調べてみて驚きましたが、日本は世界でも他に例がない老舗大国でした。

200年を超える企業は世界でもダントツの3000社以上。100年を超える企業は3万社とも10万社以上とも言われ、日本ではさほど珍しくない存在。しかしこれは世界の非常識です。お隣の韓国では200年を超える企業はゼロ、中国では9社インドに3社、ヨーロッパでも数百社程度だそう。

(参考:東洋経済オンライン

どうやら日本の老舗に、今世界が知りたい「サスティナブル経営」への大きなヒントがある一方、それは今、「風前の灯」なのが現実です。

その直接的な原因はもちろんコロナ禍…ですが、それ以上に大きな原因は、日本が老舗大国になっていった「商売の環境」が、今まさに大変化していることにあります。

日本が老舗大国になったのは、経営者の力以上に文化環境の影響が大きいのではないか

老舗企業の経営哲学だけではなく、日本の文化そのものが世界と比べて大きく特徴が違います。2017年の春のブログ(日本の文化はこれからますます世界に注目される…)で書いたとおりまさに「ガラパゴス」で、ユーラシア大陸でつながった世界の文化とはくっきりと違いがあります。

世界文化遺産になった日本食はもちろん、衣にも住でも、音楽や絵画などのアートでも、経営やコミュニティーの維持の仕方でも発想に他国との大きな違いが見られ、それが日本に老舗企業が非常に多い理由の中心ではないかと私は考えています。

そしてその文化を育んできた環境が、いま過去の歴史上無いほど変わろうとしているわけです。

日本の文化が独特な発展を遂げた理由として、

①四方を海に囲まれた島国であったこと
②日本語と言う極めて他国の言語と違う言葉が自然に暗号のようになっていたこと
③世界が大交流をした「大航海時代」に日本はすっかりと鎖国をしたこと
④ 250年も大きな戦争がなかった江戸時代なのに、武士が政権を担い続けたこと

の4つの理由を4年前のブログでも書きました。

その特徴は、開国した明治になっても続きます。主に「島国」であることとマスメディアという旧時代のメディアの特性によって、日本は事実上の鎖国状態が最近まで続いていたと言えるでしょう。つまり、明治維新後も150年間は、日本の「文化環境」はあまり変わらなかった。

そして「老舗」が日本で多いのは、誤解を恐れずに言えば、他国より優れた経営力というよりも、この経営環境要因が大きかった…のではないかというのが私の見立てです。

ところが、メディアの主役がインターネットに変わり機械翻訳の精度が上がったことによってメディア環境は一変しました。また経済のグローバル化によって、商売も日本国内だけで良い時代は終わりました。今はコロナ禍で動きが止まっていますが、いずれ人的交流もますます盛んになるでしょう。

ということは、この国は有史以来初めて本当の「開国」をしようとしているわけです。

何が変わろうとしているのか、その時代に老舗は何をすべきなのか

日本の文化環境の中で奇跡的に続いてきた老舗の多くも、そのままでは続かなくなる。どうしても合理発想と数字を読み解く必要はありそうです。

しかしそこで、西洋型の「ビジネス」のやり方に100%舵を切ってしまっては、せっかく今から世界が注目するはずの日本の老舗の良さが根こそぎなくなってしまう…。これがジレンマです。

では、この変化の時代に日本の老舗は何をすべきなのでしょうか。

それは、経営のスピリットは変えず、しかし新時代の「メディア環境」=「文化の土俵」を自分たちで理解し、感じ考えて、立ち振る舞うこと。

義理では無く かといって損得だけでもなく「存在そのもの」にファンをつける必要があります。

まず初めに、自分たちの何が価値があるのかを、世界の視点、未来の視点で、徹底的に見つめ直すことでしょう。

そしてそれを、言葉や価値観が違う人にもわかるように、言語化し、デザインし、時間を彩り、相手に届くように形にしていくこと。

次には、情報発信。
その時に、世の中の多くの人のニーズに合わせるような考え方ではなく、広い世界のどこかにいる、本当に自分たちの良さを価値として受け取ってくれる誰かに向けて、自分たちの商売が継続できるお客さんの数を獲得できるように発信すること。

ターゲットは誰か? それは「未来の日本人」です。10年後の日本を中心になって支えている人たち。

「文化 or ビジネス」ではなく、「文化をつなぐのが経営」

20世紀の世界では、「文化」と「ビジネス」は対立軸だったと言っても良いでしょう。文化にかまけるのは、ビジネスでたっぷり金を稼いでから余暇でせよ…という考え方です。

逆に昨今は、コンテンツ・イズ・キングや、ブランド価値の最大化などと言って、「文化」こそビジネス発展のための一番の武器のように言うこともあります。

しかしこのマーケティング発想では20世紀の広告でモノを売る発想の延長で、日本の老舗の経営哲学とは全く異なるものだと思います。

二宮金次郎は、

「経済なき道徳は戯れ事であり、
道徳なき経済は犯罪である。」

と言いましたが、
それをもじるなら

「経営なき文化は続かぬ夢であり、
文化なき経営は続く悪夢である」

という感じでしょうか。

価値観の合うパートナーと一緒にDX=数値化発想に向き合おう

インターネット時代、世界の人がオンラインで言語の壁を越えて意志を疎通し、新しい価値観をどんどん受け入れながら交流していく時代を前提に、情報を届けるためのノウハウはどうしても身に付ける必要があります。

その点では、日本の老舗もDXに向き合わなければならないのは確かです。

そういうことが苦手な人が多いのはわかっています。幸い、日本の老舗の経営哲学に興味を持つ若い人や外国人の中でDXに強い人もどんどん現れています。はじめの1歩か2歩は、不器用でも大変でも、何とかして自分たちの価値観をぶらさずに発信をして、そうした本当に気持ちの合うパートナーに出会えるまで頑張りたいものです。

新しい時代の波は、もうすぐそこまで見える形で現れています。

日本の島国環境の中で奇跡的に生き残ってきた、今の日本人にとっては古臭く感じることもある考え方、習慣、文化を、世界の人が別の発想から求め、それをずっと先の未来につなげてくれる「未来の日本人」がどんどん育ってきています。

そんな世界の人、未来の人にとっては新鮮な宝物を、時代の変わり目である今なくしてしまうのではなく、なんとか彼らにバトンをつなぎましょう。

お読みいただき、ありがとうございました。

全文読みたい…という方はコチラへどうぞ。


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