「幸せなひとりぼっち」人と繋がる優しさを語る 6回目の映画
※前半はネタバレなし、後半はネタバレが含まれています。
8時ちょ~どのあずさ2号~で旅に出たくなった奇成(キナリ)です。
ベッドに横たわり何もない天井を見上げ、時折、夜の静けさと共に押し寄せてくる心細さに泣くことがあります。
同じような苦しさを感じている人に是非観てほしい、そうじゃなくても観てほしい映画「幸せなひとりぼっち」についてお話ししていきたいと思います。
0.作品紹介
原題「En man som heter Ove」2015年 スウェーデン映画
ジャンル:コメディ/ドラマ
本作は、16年のゴールデン・ビートル賞で6部門にノミネートされ、観客賞など3部門を受賞。
(ゴールデン・ビートル賞はスウェーデンのアカデミー賞みたいなもの)
原作:フレドリック・バックマン「幸せなひとりぼっち」2012年
スタッフ
監督・脚本:ハンネス・ホルム
製作総指揮:フレデリク・ヴィークストレム・ニカストロ
:ミカエル・ユルト
撮影:ギョーラン・ハルベリ
編集:フレドリック・モルヘデン
衣装デザイナー: Camilla Lindblom
あらすじ
愛する妻を亡くした中年男のオーヴェ( ロルフ・ラッスゴード)。
偏屈な言動のおかげで近所の住民にとっては厄介なおじさんと化していた。
そんな中、43年間勤めた仕事をクビにされ、生きることに嫌気がさし、妻の後を追うことにした彼は自殺を図るが....。
他キャスト
ソーニャ:イーダ・エングヴォル
パルヴァネ:バハー・パール
オーヴェ若年期: フィリップ・バーグ
1.優しさの抱擁 ※ネタバレなし
一度目は一人暮らしの時に、泣き笑いして顔がぐちゃぐちゃになり、ゴミ箱にはティッシュの山。無駄遣いしてしまったことは地味に後悔していますが、この映画に出会えた喜びに比べればなんてことはありません。
この記事を書くために観た二度目も結果ティッシュのお世話になりました。
オーヴェ役のロルフ・ラッスゴードの素晴らしい演技がまた心揺さぶります。
そして不変の死を悲観的にだけでなくコミカルに描き、絶妙な色使いの映像と演出は、より幸福感をもたらしてくれます。
最後には寂びた心が優しさで包まれ、幸せで満たされました。
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2.追憶 ※ここからネタバレあり
オーヴェが自殺を図る度に入る回想シーンでは彼が本当はどういう人なのかが語られます。
一度目は母の葬式に始まり、実直な父との生活、そして父の死で彼は現実に戻ってきます。ここの父とのドライブが後のシーンに繋がってきます。
二度目は彼の全てになる女性、ソーニャとの出逢いと関係が描かれます。
目覚めた彼の目に入ったのは赤いハイヒール、顔を上げると赤い口紅がよく似合う太陽のような笑顔。ここで正直な彼が初めて嘘をつきます。それだけ彼女に惚れたというのがもう溢れていて、見てるとニヤニヤしてきます。
そして初めてデートの時「君が好きなものを食べられるように食べてきた。」
的なことを言うのですが、彼の性格をよく表していてすごく好きな台詞です。
そして監督曰く、ここのシーンだけなのか後のシーンも含むのかは定かではないですが、『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』(85)や『フォレスト・ガンプ』(94)へのオマージュが込められており、『アバウト・シュミット』(02)や『恋愛小説家』(97)もお手本にしているそうです。
この中にはまだ観てない作品が多いので、どこらへんを参考にしていているのか探してみるのも新しい発見ができると思います。
3.頼る勇気
普段は保守的な彼ですが他人のためとなると凄まじい行動力を発揮します。
さながらヒーローのようですが、その強すぎる正義感と責任感が原因で人に頼ることが苦手なぶきっちょな人間になってしまいます。唯一頼っていた妻が死んでからはさらに増長され、孤独になってしまいます。
新たな隣人パルヴァネとの関係で他人を信じ、頼ることを学びます。人に頼るのは案外難しいことですが、パルヴァネにもらった勇気で彼は他の人々と協力して一人では為し得なかったこと、友人ルネの自由を勝ち取ります。
そして彼は孤独ではあることを止め、人との繋がりを得て幸せなひとりぼっちになります。
4.最期
■繋がるシーン
父になれなかったオーヴェが父親が自分にしてくれたようにパルヴァネの娘とドライブします。ここが過去のシーンと繋がりかなり胸熱です。
そしてもう一つ繋がっているシーンがあります。
彼の死後、目覚めると少し使い込んだ赤いハイヒール、顔をあげると赤い口紅がよく似合う太陽のような笑顔。
まさしく、オーヴェがソーニャに初めて出逢ったシーンです。
しかし違う所もあります。この後、オーヴェは幸せそうに微笑み、彼女の人指し指を握ります。
■人指し指の意味
人指し指の指輪には積極性を高めるという意味合いなどがあるそうです。
そして、”導く”という意味合いもあります。
この場合、指輪ではありませんがオーヴェが握ることにより、二人で一つでその意味が完成するのかもしれません。
今まで彼女は彼が落ち込んだ時、人指し指を差し出し、導いてきました。
最期のシーンでは死後の世界に導くという意味にも受け取れます。
そしてパルヴァネの台詞で「まるでソーニャが神みたいにされている」と言っていましたが、彼にとっては不安な時に導いてくれる彼女は神というより聖母のような存在だったのだと思います。
5.おわりに
こじつけのような気もしますが一つの考え方として頭のどこかに投げといてください。
そして同じ原作者の「ブリット=マリーの幸せなひとりだち」が7月17日に上映されます。
予告
最期まで読んでいただき、感謝感激雨あられ
ではまた!
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