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不登校支援の現場、放デイの「臨床心理士」インタビュー

不登校支援へインタビュー第二弾
今回は放課後等デイサービスの「臨床心理士」さんに取材いたします!

ところで、「デイサービス」とはどんなイメージがありますか?
お年寄りや障害のある方の憩いの場で、介護士さんが働いているイメージではないですか?

放課後?デイサービス?イメージが湧きづらいと思います。

放課後等デイサービスとは?

放課後等デイサービスとは心身に障害や発達に特性をもつ子どもたちが、
放課後や休日に通う療育を行うまたは居場所を提供する福祉サービスです。
簡単に話すと障害や特性のある子に向けた専門家のいる学童クラブのイメージで、特性に合わせた学習を行う指導員や言語・理学・作業療法士、心理士さんが働いています。

市区町村、施設によっては不登校の子どもが午前中から利用している施設もあります。
放課後等デイサービスの臨床心理士とはどんなお仕事なのかインタビューして参ります!

※放課後等デイサービスには預かりに特化したところ、個別の専門療育に特化したところなど様々あり、今回は前者です。施設によって取り組みは異なります。
※市区町村によって不登校の子どもが利用できない場合があります。

放課後等デイサービスとはどんな施設ですか?

A先生:障害をもった子ども達の、学校や幼稚園・保育園以外で居場所となる、「お預かり」がベースの施設です。ただ、放課後の時間一緒に過ごすだけではなくて、その子の特性を理解し成長するためのお手伝いをしています。得意は伸ばし、苦手には一緒に向き合う。背伸びすれば出来るようになることは、モチベーションになるものを探してやってみるきっかけを作る。そして、その子が持っている力を最大限活かして、その子なりの豊かな生活を実現するために伴走します。
ただ、施設の大切なキーワードは「お預かり」。安全で快適な居場所を子どもたちに届けること、そして、保護者の方の自分時間を取っていただくということに大きな価値があると思っています。保護者の方にとって、障害を抱えている子供と一緒に暮らしていくことは私達にも想像できないような世界があるでしょうから。

SST(ソーシャルスキルトレーニング)とは?

りんだ:放課後デイサービスを調べさせてもらった時にSST(ソーシャルスキルトレーニング)という言葉が出てきたのですが、どういったことをされているのですか?

A先生:SSTとは「認知行動療法」という技法を用いて、社会で人と関わりながら生きていく上で求められる適切な言動を身につけていくためのトレーニングでソーシャル(社会性)とついているのは、社会で生きていくために必要な力を身につけること。私なんかは例えば、ご飯を食べることや服を着ることも SSTの一環じゃないかと考えています。
社会活動に必要な力を上手に習得するトレーニングの中で、無理に苦手なことをやらせるのではなく、自分のできることをどう形にしていくのかを突き詰めていくのがSSTかなと感じています。例えば「目が見えない人にそれでも視力を使って物を見なさい」というのはむずかしいでしょう?つまり、その子が社会で生きやすい自分でいられたらいいのです。

りんだ:A先生が心理士として、子ども達一人一人にどのように接しているのかを伺ってもよろしいですか

A先生:中々難しく、痛い質問が飛んできました(笑)
心理士であり SSTの専門家だからこそこの施設で働かせてもらっているけども、実情として一人一人と向き合う時間は足りていません。これは心理士としてはすごくもどかしい部分です。「一人一人が違うということをわかっていますよ」と個人の特性<個別性>に向き合う専門家ですから、しっかり個人を見つめたいです。しかしデイサービスという施設である以上難しい。今 SST がしっかりできているかと言うと、満足はしていません。
ただ子どもと一緒に過ごす職員として心がけていることは、その子のためになるならば嫌われる覚悟で接することです。専門的じゃないことでも長い目で関わる。今日だけの関係だったら楽しく過ごしてもらうのが一番だけど、私たち職員も、子ども達もこの地域で生きていくことを考えたら、本当に子供のためになるように関わりたいなと思っています。

放デイと不登校

りんだ:今、私たちが作成している映画(『絆王子と無限の一歩』)では不登校のお話ということもありお聞きしたいのですが、放課後等デイサービスの方でも学校に通級することが厳しいお子さんは実際いらっしゃったりするんですか?

A先生:そういうケースもありますね。

りんだ:そういった場合、放課後等デイサービスの関わりってどうなりますか?

A先生:さっきも一人一人<個別性>と言ったように、「ゴールがどこにあるのか」学校に行くことがゴールなのか、学校に行かなくてもその子が社会の中で生きていけることがゴールなのかによって違います。
「苦手なことにも挑戦してほしい」という保護者のニーズをそのまま受け入れるのは本来あるべき姿ではないように個人的には思っていて、「学校に行けるようにしてください」と言われたら、それを目指すことを考えますが、しかし学校には行けなくてもいいから「死にたい」と言う子どもについて、「生きていて欲しい」と願う保護者の方もいる。そんな風に追い詰められているご家庭に、「学校に行くためには」という目標は合ってないじゃないですか。多様化している社会では、個人の持つ学校の価値もそれぞれ違うだろうし、どこをゴールにするかによって、その子の直近の目標も変わります。放課後等デイサービスだから「不登校の子にはこうします」という共通目標のようなものはありません。

保護者の方との関り方

りんだ:保護者の方との関わりについてもお話しいただいていますが、放課後等デイサービス保護者の方にも配慮するということは大きいですか?前にインタビューした教育支援センターのお話で、子供と一番密接な保護者の方のケアをすることも教育支援センターの役割だと伺ったので、放課後等デイサービスでもやはりそうなのかなと。

A先生:大きいと思います

りんだ:親御さんと接していく中で、どこまで踏み込むべきか。支援や相談に乗られることがあると思うのですが、その保護者の方と接していく中で気を付けていることや、子どもの状態をどこまで共有するのかなどを伺うことできますか?

A先生:保護者の方の支援で気をつけることは、踏み込み過ぎないことです。「特別扱いしすぎない」とも言い換えられます。「しんどい」という感情は底がなく、子どもの悩みを抱えている保護者の方の不安は掘れば掘るほど出てきます。私たちはその不安の全てを受け止めきれるわけじゃない。24時間のサービスではないし、保護者の方へは大前提子どもへのサービスをしている上で対応できる限りという枠組みを持たなければいけません。ビジネスなので、「ここまではできるけどここからは出来ない」という制限がある。個人としては甘えていただきたいし助けたい気持ちもあるけれど、それでは長続きしないと思います。
子どもを育てることは長期戦だから、今耐えて頑張っているところに心の蛇口をひねるとドバドバ溢れるモノがあると思うから、上手にスッキリさせて楽にしてあげることが必要だと考えます。でも今は我々でその役割を担えているかと聞かれたら、それは十分ではないでしょう。子ども達と同じ時間を一緒に過ごすだけでも精一杯で、それがウチの放課後等デイサービスの実情です。SST でさえ十分だとは言い切れませんし。

放デイの臨床心理士のやりがいは?

りんだ:SST など、お仕事をされている中で子供たちを見ていてやりがいを感じる所ってどういうところですか?

A先生:何でしょう、大きなエピソードはそんなになくて、日常が続いているだけですね。子どもたち自身が障害を抱えて生きていく、保護者の方が障害を抱えている子どもが自分の子どもとして育てていくということは、日々感動的なエピソードがあるわけではないと感じています。「現状維持」というのはすごく大事。今日も大きな事故なく元気に1日が終わって、みんなの一日が平和に終わったということがこの仕事・生活のなかで大切なことであると私は感じています。
ただ一例をあげるとするならば、1年と少し関わった子のことですかね。家から出られない状態から関わり始めて、定期的に SST を受け入れてくれるようになりました。そこから1年くらいで、その子の学校の校長先生がその子の頑張りを認めてくれて、週3回デイサービスに通っていることを出席扱いにしてくれるまでに評価されたことがとても嬉しかった。それを得るために色々あってすごく大変だったことのご褒美と考えています。だけれど日々そんなことがあるわけじゃなくて、とりあえずみんなで生活をできているというのがやりがいです。

働こうと思ったきっかけ

りんだ:最後の質問なんですけど、この放課後等デイサービスで心理士として働こうと思われたきっかけはなんですか?

A先生:これは正直に答えるのが面白いんでしょうね(笑)じゃあ2パターンお話しましょうか!
1つは、お給料が良かったんです。心理士って本当に正社員の求人が少ない。時給としては高いんですけれど、正社員で働きたい気持ちはありました。安定した正社員で、お給料が高いというが魅力的でした。でも、心理士としては、条件面さえ良ければどこでもいいわけじゃなくて・・・。

だから2つめとしては、私はどこで働くにしても「会えるアイドル」みたいに「会える心理士」という「地べたに近い心理士」を目指せることを重視しました。心理士のいるクリニックは、病院でも会うための予約が3か月待ちとか、1回のカウンセリング代が8000円とかすごく敷居が高い。スクールカウンセラーとかはいるけれども、生活をする中で心理士と出会いにくいなと考えています。私は生活していく上で、小学校の先生くらい身近に心理士がいていいと思っています。そのために福祉の業界は地域社会に開けている。そんなに高い敷居までみんなに登ってきてもらうんじゃなくて、同じ地続きの場所で生きている、そんな心理士になりたかったっていうのがあります。
この2つの理由から放課後等デイサービスと思いました。
りんだ:では以上で質問を終わりますお時間頂き本当にありがとうございましたありがとうございました

〇取材後記

「現状維持が大切」何か大きな支援をするというのではなく
日々の生活の積み重ねを守ることこそ大切で、その先にこそ子どもの成長や努力が結ばれることがたまにご褒美のように現れる。

心理士さんやカウンセラーさんってどこか遠い人のような存在でしたが、
一緒に地域で生きていく心理士さん、そんな人がどこかにいてくれると感じるだけで心強いですし、そんな身近な心理士さんがどの地域にもいてくれる。
そんな時代が訪れたら良いなと思いました。

告知

とまりぎクリエーターズでは「不登校の支援者のこと・支援の現場のことを知って欲しい」という思いで、支援者の方や当事者の方へのインタビューを行い、不登校を題材にした映画『絆王子と無限の一歩』の制作を行っています。

もっと支援の現場のことを知りたい・知って欲しい、
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