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成長する組織をつくる1on1マネジメント

学校で管理職をしています。

一般企業の管理職とはだいぶ色合いが異なるとは思いますが、組織のマネージャーという点においてはなんら変わりはありません。一番の大きな違いは、我々は営利目的で活動をしているわけではないので、経済的利益を出そうと思っていない点、ゆえに数字で評価をできない点、などでしょうか。

とはいえ、私立の学校で勤務していますので、並み居る強豪としのぎを削りあい、戦略的に勝ち抜いていかなくてはならないことは一般企業と一緒かもしれません。

さて、組織のマネジメントを学び続けているので、それ系の本もたくさん読んでます。

ざっとレビューを書いた投稿を載せてみました。他にも経営に関する本はたくさん読んでいるのですが、全部noteに書ききれているわけではないのが残念。

そして、その中でも非常に興味深かったのがこちらの一冊。

この本を読んで感化された私は、早速自分の組織で1on1ミーティングを取り入れました。まずは自分の部署で、そして学校全体で導入しました。(こんな企業とコラボしたりもしました↓)

一般企業では当たり前の1on1ですが、学校で実施しているというのは聞いたことがありません。教師が超多忙な職業であるがゆえになかなか教員間でのミーティングにも時間が割けない現状があると思うのですが、その多忙さゆえにコミュニケーションの欠如やミスコミュ二ケーションが頻繁に起こるのが学校です。

極論すれば、労働環境において上司や同僚とのコミュニケーションが機能していれば、仕事はいくらでも生産的になると私は思っています。コロナ禍で直接的なコミュニケーションが減り、顔の表情を見ながら行うコミュニケーションがしづらくなった今こそ、職場の風通しを良くし、自分たちのミッションを遂行するための一助になると考え、1on1を導入した次第です。

そして、今回学内における1on1をさらに機能的なものにしたいと考え、本書を手に取りました。

「個」に向き合うマネジメントの時代

時代は変わりました。これまでは自分を押し殺して「企業にとっての最適」に合わせるのが当たり前でしたが、今は「自分にとっての最適」を求める時代に変わったのです。

それは旧来型の上司と部下の関係性が機能しなくなったことも意味します。以前であれば上司の言うことは絶対で、パワハラ・セクハラ上司がいたとしても自分を殺して職務に専念することがある意味当たり前のようなところもありましたが、今では転職のハードルも昔より低くなり、自分に合わないと思えばやめていく若者が圧倒的に増えました。

そのような時代に求められているのが、職場における「心理的安全性」です。

「心理的安全性(psychological safety)」とは、組織の中で自分の考えや気持ちを誰に対してでも安心して発言できる状態のことです。
組織行動学を研究するエドモンドソンが1999年に提唱した心理学用語で、「チームの他のメンバーが自分の発言を拒絶したり、罰したりしないと確信できる状態」と定義しています。

リクルートマネジメントソリューションズ「人材育成・研修・マネジメント用語集」より引用

1on1マネジメントとは、一人ひとりの価値観や個性、何をしたいかといった本人の希望を尊重し、活かしながら能力を発揮してもらうように指導していくこと。部下が「会社にとっての最適」に合わせるのではなく、上司がそれぞれの「個性」に合わせてマネジメントをしていき、個々の能力を最大限に引き出すこと、です。

「1on1マネジメント」で上司と部下はともにゴールを目指す

そもそも部下のマネジメントとは、「一人ひとりのパフォーマンスを最大化させること」です。当然その一人ひとりは個性も特性もモチベーションもスキルも何もかも違うわけですから、1対1の対応が基本になってきます。

その場合前提になるのが「上司は伴走者である」というマインドです。そしてこのマインドは我々教師の生徒に対するマインドと一緒です。イメージとしては先頭を走って部下を引き連れるというよりは、二人三脚でゴールを目指す感じです。

そのために上司は、個を最大限生かしてもらうために、「どんな仕事のやり方がいいか」「何に困って、どう解決したいのか」など、部下の感じている課題一つひとつに寄り添って解決していかなければなりません。

そんなマネジメント方法を導入し、飛躍的な発展を遂げた会社がGoogleでした。彼らは「プロジェクトアリストテレス」というプロジェクトの他、様々なリサーチプロジェクトを行い、より生産性の高い組織として成長してきたのです。

部下に信頼してもらうために最も大切な2つのポイント

備忘録のために書いておきたいと思います。

まずは、先にも出てきた「『部下と伴走する』という心構え」。そして、「自分の価値を押し付けない」こと。

どちらも簡単ではありません。ゆえに自分自身の成長も問われているのだと思います。

部下の価値観がわかればマネジメントは難しくない

今の管理職は、旧来の画一的なマネジメントから脱却し、「部下一人ひとりの『個』を活かすマネジメント」へと、大きくシフトする過渡期にいると言えます。

先ほどから述べている「部下一人ひとりに向かい合って、各人の個性に合わせて寄り添っていく」マネジメントを実践するためには何が必要かというと、部下のことをよく知ることです。

本書には部下のタイプ別マネジメントポイントが書かれています。本書によると、部下を5つのタイプに分けることができるそうです。

  1. 他者誘導型

  2. 組織貢献型

  3. 組織調整型

  4. 理論運用型

  5. 正義調和型

それぞれのタイプに会ったマネジメントのやり方が本書には書かれていますが、ここでは割愛します。興味があれば、本書をお読みください。

「1on1マネジメント」のベースとなる心理的安全性

こちらもすでに書かせていただいたように、「1on1マネジメント」を行う上で「心理的安全性」の担保は欠かせません。

Googleは「プロジェクト・アリストテレス」に4年の歳月を費やして、「誰がチームメンバーであるか」よりも、「チームがどのように協力しているか」が真に重要であると突き止めました。そしてチームメンバーが協力し合う際、最も重要な要素が心理的安全性だったのです。

心理的安全性の高いチームは、メンバーがお互いを尊重し、ネガティブな指摘を含めて意見を言うことができます。

意見やアイディア、疑問など、どんなものでも受け止めてもらえるとわかれば、誰に気兼ねすることなく提案ができます。様々な点において、真にオープンな意見を戦わせることで、これまでにない視点が生まれてきます。
Googleはそうやって、既成概念にとらわれずにアイディアを活用し、共通の目的に向かって助け合うことで、生産性を高めていったのです。

「共感型」と「迎合型」でマネジメントの結果は大きく異なる

「迎合型」のマネジメントでは、部下は上司に言いたいことを言えるので、心理的安全性が担保されているように見えるかもしれません。
しかし、「迎合」とは相手の言うことを都合よく受け入れる方法なので、「ぬるま湯」状態になり、個人も組織も成長しません。

一方「共感型」とは先にも書いた「伴走者」のことです。部下の価値観に寄り添って共感し、相互の信頼関係を作ったうえで、より高い成果や目標へのモチベーションを見出したり、時には厳しいことや耳障りの悪いことを含めてしっかり伝え、責任感を維持してもらえるような、心理的安全性に基づく関係をことで、チームの成績も確実に伸びるはずです。

「1on1ミーティング」で大事な4つのポイント

「1on1マネジメント」で必要な3つのステップは以下の通りです。

STEP1 管理職は「聞く」ことに徹することが重要
STEP2 部下の価値観に合った共通目標を設定する
STEP3 上司は「あるべき姿をサポートする」存在と知ってもらう

この3つのSTEPに進んでいくうえで欠かせないのが1on1ミーティングです。正しいやり方で1on1ミーティングを行っていけば、上司も部下も心理的安全性が確保され、ゆるぎない信頼関係を築くことが可能です。その結果、モチベーションや責任感を持った、生産性の高いチームに育つのです。

そして1on1ミーティングに重要な4つのポイントは以下の通りです。

  1. 発話促進

  2. 安心感情勢

  3. 共感

  4. 活性支援

1から3まではこれまでの話ともだいぶ被るので割愛しますが、4の「活性支援」は何のことかわかりにくいと思います。活性支援には2つの要素があり、1つは部下の心を前向きにして、明日への活力を与えること。もう1つは部下が抱えるモヤモヤを解消して、ネガティブな要因を排除する手伝いをすることです。

これらのポイントを満たすと部下の行動が変化する、とのことです。

「1on1ミーティング」の効果を最大化するコツ

この章では「1on1ミーティング」を効果的に実施するためのコツがいくつか書かれていますが、一番興味深かったのが「上司と部下の話す割合」についてでした。

筆者の会社が提供している「エアリー1on1クラウド」というサービスを使って様々な1on1ミーティングを解析したところ、適切な上司と部下の発話の割合は「上司3割、部下7割」だそうです。

ちなみに、これもやはり教師と生徒に当てはまることで、例えば生徒と面談をする場合、教師が一人でべらべらとしゃべりがちですが(自戒の念を込めていってます笑)、できるだけ生徒の話を引き出さなければいけません。

また、英語教育界では「Lazy Teacher, Busy Student」という言葉があります。あまり世間では理解されていませんが、英語は言語なので、実技教科のようなものです。日本の英語の授業では、ずっと先生が話しっぱなしで、生徒が英語を使う機会がほとんどないのが一般的でしたが、本来は全く逆のはずで、「先生はLazy(怠け者)で、生徒は忙しく発話したり、活動をしたりしているべき」という意味です。

最後に

プレイヤーとして優秀だった人がマネージャーの立場になると機能しなくなるのはよくある話です。そのような状態を避けるために、ミドルマネージャーたちに1on1ミーティングならびに1on1マネジメントを機能させてもらい、組織全体をより魅力的で、生産性の高いものにしていきたいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。


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