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スターバックスCEOだった私が社員に贈り続けた31の言葉

みなさん、スターバックスは好きですか?

本書はスターバックスコーヒージャパン元CEOの岩田松雄氏が書かれたマネジメントに関する本です。

松田氏は経歴は以下の通りです。(AMAZONより引用)

1982年に日産自動車入社。製造現場、セールスマンから財務に至るまで幅広く経験し、社内留学先のUCLAビジネススクールにて経営理論を学ぶ。帰国後は、外資系コンサルティング会社、日本コカ・コーラ ビバレッジサービス常務執行役員を経て、2000年(株)アトラスの代表取締役に就任。3期連続赤字企業を見事に再生させる。
2005年には「THE BODY SHOP 」を運営する(株)イオンフォレストの代表取締役社長に就任。店舗数を107店から175店舗に拡大しながら、売上げを約2倍にする。伝説の創業者、アニータ・ロディックからの信頼も厚かった。
2009年、スターバックスコーヒージャパン(株)のCEOに就任。「100年後も輝くブランド」に向けて、安定成長へ方向修正。ANAとの提携、新商品VIA(スティックコーヒー)の発売、店舗内wifi化、価格改定の実行など次々に改革を実行し、業績を向上。日本に数少ない“専門経営者”として確固たる実績を上げてきた。

こう見ると松田氏は華々しい実績を上げてスターバックスのCEOに上り詰めたスーパーエリートな印象を受けますが、実際のところ日産時代に泥臭い営業を続けて全国トップクラスの営業成績をたたき出し、英語が全然できない中UCLAでMBAを取得し、イオンフォレストCEOに就任後も現場の社員を第一に考えた経営方針で業績を上げるなど、非常に努力家で人間味に溢れる経営者であり、共感を抱くことができます。

さて、冒頭の質問ですが、スタバを好きな方は相当数いらっしゃると思います。ちょっとコーヒーを飲もうと思ったらスタバへ、または友人と駄弁ったり、一人で仕事をしにスタバに行く人も多いでしょう。高校生などの若者にはスタバに行くこと、スタバのコーヒーを片手に移動することがファッションになっており、一つのブランドとして確立されている感もあります。

なぜスタバは世界中の人々を魅了したのか。他の喫茶店やカフェと何が違うのか。それを読み解くにはスタバの改革をけん引したハワード・シュルツ氏ら経営陣が作成したミッション・ステートメントを読み解きたいと思います。

シュルツ氏の狙いは「会社の目的を明確に伝えるために言語化し、それを土台にあらゆる意思決定の適不適を判断する基準を定めること」だったそうです。そして、このミッション・ステートメントを起点に50人以上の従業員とともに、3ヶ月間をかけて経営戦略策定を行いました。

“スターバックス・ミッション・ステートメント(社訓)1990年版”
【使命】
最高級コーヒーの世界一の供給者になると同時に、われわれの主義・信条において決して妥協することなく成長することである。
6つの信条(意思決定の妥当性を判断する基準)】
1. 働きやすい環境を提供し、社員が互いに尊敬と威厳をもって接する。
2. 事業運営上の不可欠な要素として多様性を積極的に取り入れる。
3. コーヒーの調達・焙煎・流通において、常に最高級のレベルを目指す。
4. 顧客が心から満足するサービスを提供する。
5. 地域社会や環境保護に積極的に貢献する。
6. 将来の繁栄には利益率の向上が不可欠であることを認識する。

参考:「スターバックス成功物語」ハワード・シュルツ、ドリー・ジューンズ・ヤング著 日経BP社刊より

シュルツ氏はおいしいコーヒーを提供したうえで、誰にとってもくつろげる、人のつながりを大切にできる空間を提供しようとし、結果的に「スターバックス」という一つのブランドが確立されました。

これはスタバが人々に”Third Place”を提供することに成功したと言い換えることもできます。Third Placeとは、自宅(First Place)、職場(Second Place)の他に自分らしくいることができる第三の自分の居場所という概念です。(多くの日本人は職場がFirst Placeになってしまっていますが・・・)

「マインドトラベル」「平等」「一人になる」「人とつながる」などの付加価値を付けることでスタバはこれまでのコーヒーショップと差異化を図り、世界中で圧倒的なシェアを占めていったのです。

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ちなみに上は私が2019年にシアトルに行ったときに撮ったスターバックス一号店の写真です。とても混雑しており中には入りませんでしたが、ここからスタバのストーリーが始まったかと思うと感慨深かったです。

さて、前置きがかなり長くなりましたが、岩田氏が書いた本書の中で印象に残った部分を記しておきたいと思います。

本書の冒頭部分に「なぜスターバックスは高給でなくても離職率が低いのか」という問題提起がされています。これはTokyo Disney Resortを運営するオリエンタルランドなどにも共通することかと思いますが、スターバックスの従業員(役職や社員、アルバイトなど立場に関係なく「パートナー」と呼ばれます)たちが高いミッション意識を持っているからだと思います。

Mission Vision Passion

一般的にリーダーにとってミッション・ビジョン・パッション(頭文字を取って”MVP”と言います)が必要だとはよく言われます。

M:ミッション(個人や組織が挑戦する目標)
V:ビジョン(目標実現にむけた具体的な道筋)
P:パッション(夢や目標にむかって燃やす情熱)

従業員の一人ひとりが上にも書かせていただいたミッション・ステートメントを深く理解しているからこそ、スタバはここまで大きく成長を遂げたのだと思います。それではなぜ授業員一人ひとりが高いミッション意識を持つことができるのでしょうか。

一つはスタバに入社する従業員(アルバイトを含む)たちは、スタバが提供するおいしいコーヒーと”Third Place”という概念に魅了されて入ってきているはずなので、最初からミッション意識が高いはずだということです。ただそれだけではなく、やはりマネージャーたちのマネジメントがしっかりしているのだと思います。エリアマネージャーや店長などが上のMVPをしっかりと理解し、そしてそれを末端の授業員にまで伝播できるからこそあの空間が出来上がるのだと思います。

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https://tai-gee.com/blog/22592

一人のお客様より、一人の従業員の方が百万倍大切

岩田氏はTHE BODY SHOPを運営するイオンフォレストの社長に就任した際売り上げは60億円ほどでしたが、それを140億円まで伸ばすことに成功しました。その原動力になったのは「従業員の満足度」を上げたことだと述べています。

小売業というのはとかくCS(顧客満足度 Customer Satisfaction)を上げることに注力しがちですが、ES(従業員満足度 Employee Satisfaction)を上げなければCSも上がらないというのは経営の基本と言えます。

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https://media.unipos.me/employeesatisfaction-customersatisfaction

とりわけブランドビジネスは、モノを売るというより、お客様に満足を売るビジネスです。

CSを上げるためにESを上げる。

基本だとは言え、そう簡単なことではありません。自分も一人のリーダーとして、従業員の満足度を上げるためにできることはすべてやっていこうと新ためて決意しました。(そのために1 on 1のミーティングが重要だと思っています)

7つのお願い

下は岩田氏がイオンフォレストのCEOに就任した際に従業員に話した「7つのお願い」です。(本書のタイトルはスターバックスCEOとなっていますが、イオンフォレスト(THE BODY SHOP)の社長時代の話が紙面の多くを割いています)

1.一緒に働ける縁を大切にしましょう。
2.共に人間成長しましょう。
3.社長が交代しても「一人ひとりに変革に参加する気持ち」がなければ何も変わらない。一緒に会社を良くしていきましょう。
4.社長ではなく現場を見て仕事をしましょう。
5.自分の大切な気持ちを自宅に招く気持ちで接客をしましょう。
6.バック・トゥ・ザ・ベーシック。創業の原点に戻り、バリューズを大切に。
7.ブランドは細部にまでこだわりましょう。

成長する組織というのは「一体感」のある組織だと思います。一体感を生むためには、従業員がそれぞれのミッションやビジョンを理解し、パッションを持って行動していくことが肝要です。そして、現場が経営者の視点を持つことができれば結果は必然的についてくるはずです。THE BODY SHOPもスターバックスも確実に成功を遂げていった要因は、この「一体感」を作り出した経営陣やミドルマネージャーたちの功績と言っても過言ではないと思います。

ここまで本書を読んで気になった点を列挙してきましたが、やはり組織のトップというのは明るく人間的に魅力がなければいけないと強く思いました。もちろんそうでないリーダーや経営者もたくさんいるのはわかりますが、自分は一緒に働く人たちに幸せを提供したいと思いますし、その先にステークホルダーを含めたさらに多くの人々の満足と幸福があると思います。

まだまだ未熟な自分ですが、勉強を重ね、経験値を増やし、理想のリーダーに近づいていければと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。


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