雪宮冬馬

日本生まれ日本育ち。noteは2021年10月11日からスタート。 主に趣味で作ってる…

雪宮冬馬

日本生まれ日本育ち。noteは2021年10月11日からスタート。 主に趣味で作ってるショートショート(短くて不思議な物語)を投稿していきます。ショートショートガーデンでも活動中。 ご覧いただけると幸いです。コメント等していただけるととても喜びます。 よろしくお願いします。

最近の記事

男子宝石【毎週ショートショートnote】

「この指輪から変な声が聞こえるんです。宝石店なら何かわかるかと思いまして」 「はい。正確には指輪についた宝石が声を出しているのですが」 そう言って店員は奥から特殊なスピーカーのついた箱を持ってきた。 「この箱に指輪を入れると、宝石の声がスピーカーから聞こえてきます」 店員が箱に指輪を入れると、 『えっまじで。あいつ告ったの。ま、俺は今特殊組織のスパイの活動してるから恋愛とかどうでもいいけど』 男の子の声が聞こえてきた。 「これは男子宝石ですね」 店員はまた奥に

    • 全力で推したいダジャレ【毎週ショートショートnote】

      僕が全力で推してるダジャレ?そんなこと言ってるの誰じゃ? 今度僕が出演する番組に、箱推ししてるアイドルグループが出るから一発笑わせて顔を覚えてもらいたいって、君マネージャーのくせに出しゃばるなよ。まあ僕はある組織によって改造させられた人造ダジャレ人間だからな、ダジャレを思いつくなんて朝飯前さ。でもな、能ある鷹は爪を隠すっていうだろ。思いついても披露せず隠すさ。隠せるかって?僕の本業は小説家だよ。隠し事は得意だよ。 箱推しはこうしてこうして発酵し なんて五七五をプレゼントす

      • 棒アイドル【毎週ショートショートnote】

        某アイドル。 私はいつもそう呼ばれてきた。 人気俳優・高川太一、某アイドルと熱愛! この某アイドル、私。 「ねえ知ってる?この前某アイドルのチャンネル登録者数1000人突破したんだって」 この某アイドルも、私。 私は顔も名前も覚えてもらえず、私のことが話題にあがるときはいつも「某アイドル」と言われるようになった。 ならいっそのこと「棒アイドル」になってやる、と私はふと思いついた。 私は懸命にダイエットに取り組み、ついに体は棒のようにガリガリになった。はたから見

        • ジュリエット釣り【毎週ショートショートnote】

          「あ、ジュリエット」 「あら、ジュリエットじゃない」 「何してるの?」 「またジュリエットショッピングで何か買おうと思ってスマホで検索してたのよ。ジュリエットは何してたの?」 「私は偶然ここを通りかかっただけよ。それにしてもいいわよねジュリエットショッピング」 「よね。私たちと同じ名前で安心感があるし」 「あ、でも最近変なメールが来たの。これ」 <ジュリエット様  先ほどご注文された商品ですが、手続きがうまく処理されなかったため、下記URLより再度クレジットカード情報をご入力

        男子宝石【毎週ショートショートnote】

          リモート墓参り【ショートショート】

           墓石に彫るのは名前ではなくURLにしてくれという遺言も今では珍しくない。一昔前は「◯◯家之墓」や「南無阿弥陀仏」などが多く、「和」や「ありがとう」なんて好きな言葉を入れているのも見かけたものだ。ところが最近は違うらしい。「墓石にURLを入れたい」という要望が多いと石材店で働く友人から聞いた。 「URLなんて入れて一体どうするんだい?」 「墓石に刻まれたURLにはな、亡くなった人の情報が記録されてて、それをパソコンやスマホに入力したら墓が画面に表示されて、いつでもどこからで

          リモート墓参り【ショートショート】

          ネコノオテパン屋

           仕事で広島を出張中のことだった。商店街を歩いていると、外れた道の向こうに何かがいるのが目に入った。よく見ると猫だった。しかも、こっちおいでと言っているかのように手招きしている。私は自然とその猫のほうへ歩を進めていた。  私が近づいても猫は座ってじっとしていた。猫に見惚れていると、その猫が私に右の前脚を差し出したので私はその手をとった。一瞬、視界が虹色に変わった。振り返ると雲海のような景色が広がり、商店街が消えていた。  訳がわからず向き直ると、さっきまでいなかった猫がいる。

          ネコノオテパン屋

          Don’t Be Left in the Dark.

           2016年3月11日。人々を恐怖に包んだあの日から5年が経った。大学からの帰り道、見慣れない脇道を進むと、噂の「時計神社」はあった。都市伝説じゃなかったのかと驚く気持ちを抑えて鳥居をくぐった。  時間を巻き戻してくれるという「時の神様」がいる時計神社。  5年前の朝、いやあの時刻の30分前でもいい。戻りたい。  思いが通じたのか、目を閉じ祈る私の頭の中で声が聞こえた。 『わかった。では、お前を2011年3月11日14時16分に戻そう』  目を開けると見覚えのある部屋にいた

          Don’t Be Left in the Dark.

          “それ”が宿る

           休日の朝、都内を散歩をしていると70代くらいのおじいさんがうずくまっていた。 「あの、大丈夫ですか?」  おじいさんはこちらを見て「あぁ、大丈夫じゃ」と言った。おじいさんの手には黒いビニール袋がある。  あれ、このおじいさんどこかで見たことあるような……。 「今の、あの人が捨てた空き缶を拾っとったんじゃ」 「ゴミ拾いですか。素晴らしいですね」 「はっはっは。お前さんにはただのゴミ拾いに見えるか」 「違うんですか?」 「人はの、知らず知らずのうちに”それ“を捨てとる。ある人の

          “それ”が宿る

          サイコロ

           これは、サイコロを知らない男の物語である。  一つの部屋に閉じ込められた男がいた。男の両腕は壁に固定され、身動きが取れない状況。男の目の前には顔の高さほどのテーブルがあり、その上にはサイコロが置かれていた。男からは1の目が見えているが、サイコロをしらない男は、「白地に赤い丸が1つのもの」がただテーブルの上にあるとしか思っていなかった。  少しすると、地震が起きた。男は驚いて天井を見上げる。揺れがおさまり、テーブルのサイコロに目を向けると、今度は2の目が男から見えていた。しか

          サイコロ

          料理製造マシン

           レストランで食事をしていると、友人が店員に「シェフを呼んでくれ」と言った。何を言うんだろうと思っていると、やってきたシェフに友人が言った。 「このトンカツ最高にうまいですね。どうやって作ってるんですか?」  どうせ秘密だろうと思っていたら、「料理製造マシンで作ってます」とあっさり教えてくれた。 「料理製造マシン?」 「はい。その機械に食材を入れて設定を合わせると、1分後には料理ができあがっているのです。もしトンカツの注文が多い場合は、豚まるまる1匹を入れて1分もすれば大量の

          料理製造マシン

          おちろ

           俺には、小さい頃から不思議な能力があった。それは、願ったものをおとすことができる能力だ。  小学校の頃、俺に意地悪した森田というやつがいたが、そいつが階段を降りてくるのを見たとき、「くそ森田め、階段から落ちろ」と心の中で願ったら、森田は階段から落ちて腕を骨折した。高校の頃は、「谷村め、大学落ちろ」と願い、気に食わない谷村の合格間違いなしと言われていた大学受験を失敗させることができた。社会人になると、嫌いな上司が出張するとき、「中山部長が乗った飛行機墜ちろ」と願って完全犯罪を

          金持ちジュリエット

          「おいジュリエット、お前また英語のテスト100点にするようジョージ先生にけしかけただろ」 「だって私はお金持ち。ジョージ先生はお金をちらつかせたらチョロいんですもの」 「ジョージ先生はそうかもしれんけどな、私はそううまくはいかんぞ」 「なら、お金の力でこの国の法律を変えますわ。私の数学のテストの点数を100点にしないとボブ先生はクビっていう法律を追加するの」 「お前は一体どこまでの金持ちなんだ……」 「でも、やめとくわ。私も忙しいから。貧乏暇なしって言うけど、金持ちだって忙し

          金持ちジュリエット

          君に贈る火星の

           いよいよ火星に到着する。  自社の名前を広めるため、オリンポス山の頂上に会社の旗を立てに来たのだが、トラブルで予定よりかなり離れた場所に不時着した。不運にもその際、帰り分の燃料がどこかへ飛ばされた。  会社からはロケットを送るからそれで帰って来るよう言われたが、それが到着するのは半年後。あぁ、こりゃ来年の結婚式は中止だな。恋人は「仕方ない」と言ってくれたが、彼女に最高のお土産を持って帰ろうと、山の頂上を目指すことにした。  山は比較的緩やかだが距離がある。何しろオリンポス山

          君に贈る火星の

          コロコロ変わる名探偵

           ある家の主人で高野探偵の親友の林氏が何者かによって殺害された。林氏はネクタイを結んでいたようで、大きな鏡の前で倒れている。誰かが近づけばわかったはずだ。争った形跡もないことから顔見知りの犯行とされた。 「林氏が死ぬ間際に書いたと思われるダイイングメッセージは『こう』。つまり犯人は被害者の子、孝太さんです!」 「俺はやってない! 親父が殺されたとき、俺は出張で千葉にいたんだ」 「彼のアリバイは警察で確認が取れたよ、高野くん」 「じゃあ奥さんの幸さんだ! 幸は『こう』とも読むか

          コロコロ変わる名探偵

          しゃべるピアノ

           うちには代々伝わる「しゃべるピアノ」がある。指の体操はこうしたらいいとか、ここはもっと優しく弾いてなど、思ったことを何でも言ってくれる。音楽一家ではないが、的確なアドバイスで俺のピアノの腕はプロ級だ。  いいことを思いついた。最近SNSでは音楽系の動画をよく見る。残念なことに、俺はピアノは弾けても歌は絶望的だ。試しにしゃべるピアノに歌わせてみると、案の定、歌もうまかった。よし。これで俺が口パクすれば、俺は弾き語りの名人になれる。  SNSに投稿した俺の(口パク)弾き語り動画

          しゃべるピアノ