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おちろ

 俺には、小さい頃から不思議な能力があった。それは、願ったものをおとすことができる能力だ。
 小学校の頃、俺に意地悪した森田というやつがいたが、そいつが階段を降りてくるのを見たとき、「くそ森田め、階段から落ちろ」と心の中で願ったら、森田は階段から落ちて腕を骨折した。高校の頃は、「谷村め、大学落ちろ」と願い、気に食わない谷村の合格間違いなしと言われていた大学受験を失敗させることができた。社会人になると、嫌いな上司が出張するとき、「中山部長が乗った飛行機墜ちろ」と願って完全犯罪を成し遂げた。こうして俺は、嫌いなやつを排除し続けた。
 ある日、付き合っていた彼女から「好きな人がいる」と別れを告げられた。
 この俺に屈辱的な思いをさせやがって……。この俺に——。
 カフェから飛び出す彼女の後ろ姿を見て俺は願った。
 上から看板落ちろ。
 その瞬間、俺の視界が真っ暗になった。

 どうやら俺は、地獄に堕ちたらしい。

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