NPO東京ライトハウス

どうやってみるか 東京ライトハウスっぽい話

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最近の記事

つながりは元気のモト

視覚障害のある方の中には、見えないからつまらないから、面倒かけるから申し訳ないからなど、さまざまな理由で気の知れた仲間との集まりから遠ざかる方がいます。だから、たとえ目が見えにくい状態を抱えている方であっても参加を歓迎し、活動を楽しむ方法を一緒に考えてくれるグループとのつながりを、できる限りたくさんつくりたいと思っています。大きなグループじゃなくてもいいんです。数名で定期的にどこかに集まって、ただただ日常のことをしゃべるだけでも良いと思います。こうしたいつもの何気ない集まりが

    • 広めたい点字とゲームの輪

      先日友人家族とトランプのばば抜きをして遊ぶ機会がありました。視覚障害があるなしにかかわらず、就学前の子供から50代の男女まで、同じゲームを楽しみ大いに盛り上がりました。世代を超えて盛り上がることができた理由としては、もちろんばば抜きというゲームの持つ魅力のおかげというのもあるのですが、実はそればかりではなく、そのトランプが点字トランプだったということも大きかったようです。 特に4歳と7歳の子供にとっては、初めての点字の触感や点の数や配置の違いで文字や数字が表せるという事実は

      • 補助具を使ったロービジョンの人の自動車運転の取り組み

        昨年このnoteで高齢者や障害がある人が運転を継続するための北米の取り組みについて紹介しました。(記事)今回は視覚障害のある人が補助具を使って運転を継続する北米の取り組みを紹介します。 <視力が基準より低下している場合> 米国では40の州で、制限のない運転には20/40(0.5)以上の矯正視力を要求しています。もしドライバーの視力がこの基準を満たさなかった場合、ただちに運転禁止になるのではなく、制限付きの免許が発行されます。49の州と地区で、視力が基準を満たさなかった場合

        • ヒトとの対話、モノとの対話

          ダイアログ・イン・ザ・ダークとは先日、小学生の息子とダイアログ・イン・ザ・ダークに参加しました。ダイアログ・イン・ザ・ダーク(Dialog in the Dark)は、1988年、ドイツの哲学博士アンドレアス・ハイネッケの発案によって生まれたもので、これまで世界47カ国以上で開催され、900万人を超える人々が体験しました。日本では1999年11月の初開催以来、これまで24万人以上が体験しています(ダイアログ・イン・ザ・ダークホームページより)。 ダイアログ・イン・ザ・ダーク

        つながりは元気のモト

          Low VisionでiPad--もしかしたら役立つかもしれない小道具達--

          筆者は浜松の「ウイズかじまち」という訓練施設でロービジョン者のICT訓練に関わることがある。ipadは見えにくさを飛び越えて楽しいこと便利なことを運ぶツールとして人気が高い。ところが操作技術は簡単なようでいて、ロービジョンゆえの難しさ、年齢ゆえの難しさも存在する。 指導役は、これを使って〇〇をするんだ!というご本人の意気込みが、その操作の壁によって萎えてしまうのは極力見たくない。その前に不要な失敗体験を防ぐtipsがあるなら些細なことでも知りたいと思うものである。 アクセ

          Low VisionでiPad--もしかしたら役立つかもしれない小道具達--

          視能訓練士の講習会に参加しました

          昨年7月にパートタイマーではありますが視能訓練士として臨床に復帰しました。子育て等でブランクが長く、単発のお手伝いを除くとなんと13年ぶりです。その間、視能訓練士協会の生涯教育プログラムや学会参加で多少の勉強はしていましたがとても久しぶりの視能訓練士業務は視力検査も手早くできませんでした。週1〜2日のお仕事なので感覚を掴んでもすぐに戻ってしまうのですが、半年が過ぎ、ようやく慣れてきたように思います。 10月に視能訓練士協会の生涯教育プログラムの視能障害という講座に参加してき

          視能訓練士の講習会に参加しました

          オリエンテーリングと視覚障害がある人のナビゲーションスキル

          今年の夏、数年ぶりに友人と共にオリエンテーリングを楽しみました。私たちが歩いたのは、日本オリエンテーリング協会公認の6.5kmのパーマネントコースです。このコースは中世の山城跡とその周辺地域にわたり、10個の「コントロール」(通過すべき地点)が配置されています。使用した地図の縮尺は1:10000で、地図上の1cmが実際の100mを示しています。オリエンテーリングの地図は基本的には地形図であり、地名や道路名などの文字情報は含まず、主に地形や特徴物(例:道、川、建物)を表示してい

          オリエンテーリングと視覚障害がある人のナビゲーションスキル

          老眼とみんなに便利な近用メガネのはなし

          年齢的には完全に老眼で困っているはずなのだが、それほど困っていない。ずっと昔は、老眼になると、近くを見るのが大変になる、つまり遠視になるのだと理解していた。そう思っている人は少なくないかもしれない。しかし、今も、毎日パソコンの画面を見て長時間仕事をしているが、メガネをかけなくても、パソコンの画面を見るのに困ることはない。幸運ではあるが、では老眼とは何だったのか?僕は老眼にならないスーパーヒューマンなのか?そして、これは視覚障害やロービジョンとどう関係があるのだろうか?そのこと

          老眼とみんなに便利な近用メガネのはなし

          先天眼振のある日常

          先天眼振の症状は個人差が大きい。ここに記したものは、あくまでも私の個人的体験による独断レポートであることを確認しておく。 「この子の目、揺れてる」 生後の3ヶ月検診を待つ病院の待合室、隣に座った方に指摘され、母は私の異常な眼の揺れ、つまり先天眼振にはじめて気づいた。まだ幼い頃、母に連れられ、大学病院の眼科などへ検査に通ったことをよく覚えている。 眼球は見た目では気づかないほど小さく揺れている。固視微動という。先天眼振の人は、眼球の揺れが見た目でわかるくらい異常に揺れてい

          先天眼振のある日常

          聴覚障害と老眼

          私は大人になってから補聴器をするようになった。 そして、長い時間をかけて少しずつ少しずつ順調に(?)聴力が低下している。 以前は、家の中で補聴器をしていなくてもインターホンは聞こえたものだが、最近は補聴器をしていてもあやしい時がある。しっかりインターホンのモニター画面を見ていないと気がつかない時があり、家にいるのに宅急便もしっかりと不在連絡票が入っていたり。 聴覚障害者は目で見て話しかけられているのを認識しているので後ろから呼ばれるのに気がつかない、とよくいわれるが、昔

          受け入れられない老化現象

          最近とみに老化を受け入れざるを得ないと感じ、かなり気分が落ち込んでいる。中でも聴力の衰えは泣きたくなるほどで、屋外を歩いていると反響音を聴きとれずに、電信柱はおろか、建物内の壁にまで正面からまともにぶつかる始末。 以前は、白杖を持たずに歩いても、停まっている車はお手の物、電信柱も、看板を支える金属の棒も、その辺に立っている人も、ほとんどのものを触れる前に認識することができた。酔って電車や居酒屋に白杖を忘れることはあっても、それでもけが一つせず、むしろ晴眼者気分でさっそうと街

          受け入れられない老化現象

          1か0ではない運転免許交付制度の議論を

          (画像はADEDのホームページより) 運転免許の返納により自分で自由に仕事や買い物に行けない、社会参加ができなくなると、個人の幸福や自立に否定的になり、高齢期の危機が訪れるというアメリカの研究結果があります(Rothe, 1994など)。とりわけ車での移動が前提になっている地方に在住している場合、事態は深刻です。 そこで北米などいくつかの地域では、限られた地域や時間帯のみ運転することができたり、衝突被害軽減ブレーキなどを搭載した車でのみ運転ができるなど一定の条件のもと、運

          1か0ではない運転免許交付制度の議論を

          マジョリティとマイノリティ −視点の転換−

          写真:UnsplashのRupert Brittonが撮影 今、社会は視覚障害がない人を基準にしてさまざまなシステムが作られています。しかし、視覚障害のない人たちは「マジョリティ」であるため、視覚障害のある人たち(「マイノリティ」)が日々直面するバリアーに気づきにくい状況にあります。 以前、私は障害平等研修(Disability Equality Training: DET)を受けたことがあります。この研修は障害者自身がファシリテーターとなって進める障害学習です。1990

          マジョリティとマイノリティ −視点の転換−

          私の子どもの近視と眼鏡のこと

          近年、子どもの近視が話題になっています。新型コロナウイルス初期の一斉休校のあとくらいからテレビなどでもよくトピックに挙げられるようになったと思います。眼科領域ではもう少し前からホットな話題だったように思います。 さて、ここからは私の息子の例です。子どもは一般的に小さい頃は軽い遠視〜正視であることが多いですが彼は小学校入学前に正視〜わずかに近視がありました。でも不便はなく、裸眼で過ごしていました。1年生の秋、学校の視力検査で引っかかりました。BとCでした。そのうえしばらくする

          私の子どもの近視と眼鏡のこと

          ハイテク再考,ローテク再興,ニーズ志向の支援を熟考

          工学分野の視覚障害者の移動支援の論文を漁ると,ここ数年機械学習・AI関連のナビゲーションアプリの開発を報告した論文が頻繁にヒットするようになった.盛り上がっているように見える反面,日本に限ってみればそういうナビアプリを恒常的に使用しているとおっしゃる視覚障害者にほとんど会ったことがない.知り合いの歩行訓練士に尋ねても誰も使っていないという悲しい返事が返ってくる.もちろん筆者の狭い人間関係での話なので,実際に使われている方はいらっしゃるとは思う.しかしそういえば数年前に「視覚障

          ハイテク再考,ローテク再興,ニーズ志向の支援を熟考

          見えない位置にある目的地

          ある時、東京ライトハウスの「見えにくさの相談会」に50代の方がガイドへルパーと一緒に来られました。その方は、ガイドに頼ることなく一人でスタスタと真っ直ぐに私の相談テーブルに近づいてきました。その方の様子に視覚障害をうかがわせるものはありませんでした。席についたその方に「どのようなご相談ですか?」と尋ねると、「家から徒歩10分ほどのところにあるバス停に一人で行けないのです」とのことでした。そのため、外出する際には、視覚障害はないけれども、ガイドヘルプを使っているのだそうです。家

          見えない位置にある目的地