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補助具を使ったロービジョンの人の自動車運転の取り組み

昨年このnoteで高齢者や障害がある人が運転を継続するための北米の取り組みについて紹介しました。(記事)今回は視覚障害のある人が補助具を使って運転を継続する北米の取り組みを紹介します。

<視力が基準より低下している場合>

米国では40の州で、制限のない運転には20/40(0.5)以上の矯正視力を要求しています。もしドライバーの視力がこの基準を満たさなかった場合、ただちに運転禁止になるのではなく、制限付きの免許が発行されます。49の州と地区で、視力が基準を満たさなかった場合、bioptic telescopeという図のような特別なレンズを使用して運転することができます。

<周辺視野が欠損している場合>

連邦政府は運転に必要な視野はそれぞれの眼で水平方向に70度と定めています。ドライバーがこの基準を満たしていない場合、多くの州では車にミラーをつけたり、患者にプリズムメガネを処方するなどして視野を拡大する試みが提案されています。視野を拡大する方法は研究レベルでは実装され、安全性も確認されていますが、現在のところどの州でも視野拡張装置を使った運転は許可されていません。この状況は、視力を補償するためにBioptic Telescopeが広く許可している状況とは大きく異なるといえるでしょう。

<半盲の場合>

ドライバーがそれぞれの眼で視野の片方ずつがみえていない半盲の人の対しては、運転シュミレータを用いた視野回復訓練を行ったり、メガネの上から視線の上下に膜プリズムを貼り、これによって視野を最大30度水平に拡張させる取り組みが研究レベルで行われています。ただし、2023年の時点で、プリズムデバイスを半盲の人の運転補助として正式に認可する州はまだありません。

<最後に>

ロービジョンの人が運転すれば交通事故の増加につながると多くの人が考えるかもしれません。しかしこのような考えは科学的データに基づくものではありません。アメリカの連邦法では、障害を理由に運転免許を取り上げることを差別だとして禁止しています。ロービジョンの人が安全に運転するためにどんな補助具をどう使えばいいか、科学的データを出していく必要があるのではないでしょうか。

写真は EyeNetMagazine(2017, October) Clinical Update Low Vision Drivers : The Ophthalmologist’s Role and Responsibility
https://www.aao.org/eyenet/article/low-vision-drivers より

文:麻野井千尋

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