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マジョリティとマイノリティ −視点の転換−

写真:UnsplashRupert Brittonが撮影

今、社会は視覚障害がない人を基準にしてさまざまなシステムが作られています。しかし、視覚障害のない人たちは「マジョリティ」であるため、視覚障害のある人たち(「マイノリティ」)が日々直面するバリアーに気づきにくい状況にあります。

以前、私は障害平等研修(Disability Equality Training: DET)を受けたことがあります。この研修は障害者自身がファシリテーターとなって進める障害学習です。1990年代に英国で開発され、日本では2014年度から導入されました。一昨年の東京五輪・パラリンピックでは、競技会場などの案内をする大会ボランティア必修のプログラムにも採用されました。研修の目的は、マジョリティのための社会がマイノリティの人たちに課している障害(バリアー)に気づく視点と、バリアー解消のための行動の獲得です。

研修では、障害者がマジョリティである世界に健常者(マイノリティ)が迷い込むストーリーの映像を視聴します。その世界では、障害がないことを理由にタクシーやバスに乗車できず、飲食店の入店も拒まれます。公園では奇異の目を向けられ、訪問先では点字資料を渡されるなど障害者と健常者の立場が逆転した世界での生活が描かれています。

これと少し似た話がヨシタケシンスケ氏の「みえるとかみえないとか」(2018)で描かれています。宇宙飛行士の主人公が降り立ったのは、目が三つある宇宙人の星。普通にしているだけなのに、後ろが見えないからと「ふべんじゃない?かわいそう!」とか、「すごーい!ちゃんとあるいている!」と言われてしまいます。目が三つある宇宙人がマジョリティであり、目が二つある人間がマイノリティの世界です。

一般的に、マジョリティの視点ではマイノリティが日々経験している障害や不便さに気づきにくいものです。ですが、高齢化が急速に進んでいる昨今、加齢による見えにくさから視覚障害に関してマジョリティとマイノリティの比率が変わってくる可能性も考えられます。マイノリティの視点に立つことでバリアーに気づき、その解消を試みる人が増えれば、社会はもっと暮らしやすくなるのではないでしょうか。近い将来、より暮らしやすい社会が実現するように、マイノリティの視点に立って考える習慣を身に付けたいものです。

文:西脇 友紀

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