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デフォルトで生きているのか死んでいるのか?

ポール・グレアム(Paul Graham)が執筆したエッセー「Default Alive or Default Dead?」の日本語訳になります。

2015年10月

8ヶ月または9ヶ月以上経営されているスタートアップと話をするとき、私が知りたい最初のことはほとんどいつも同じである。彼らの費用が一定で、収益の伸びが過去数ヶ月間であったと仮定すると、残されたお金で収益を上げられるのか? もっと劇的に言いえば、デフォルトでスタートアップは生きているのか死んでいるのか?

驚くべきことは創業者自信がどれほど知らないかである。私が話しかける創業者たちの半分は、自分たちがデフォルトで生きているのかデフォルトで死んでいるのか知らない。

もしあなたがその数の中にいる場合、トレバー・ブラックウェルはあなたが調べるのに使える便利な計算機を作った。

スタートアップがデフォルトで生きているのかデフォルトで死んでいるのかを私が最初に知りたい理由は、会話の残りが答えによって決まるからである。もし会社がデフォルトで生きている場合、私たちは彼らができる野心的な新しいことについて話すことができる。もし会社がデフォルトで死んでいる場合、私たちはおそらく会社を救う方法について話す必要がある。私たちは現在の軌道が失敗に終わることを知っている。彼らはどうやってその軌道から離れることができるのか?

なぜ自分たちがデフォルトで生きているのかデフォルトで死んでいるのか知る創業者たちがそんなに少ないのだろうか? 主にそのことを聞くことに慣れていないからだと私は思う。3歳の子にどうやって自分の力で生活するつもりなのか聞くのが意味ないのと同じで、早い段階で聞く意味のある質問ではない。しかし、会社が年を取るにつれて、その質問は意味のないものから重大なものに転換する。このような転換はしばしば人びとを驚かせる。

私は次の解決策を提案する。あなたがデフォルトで生きているのかデフォルトで死んでいるのかどうかを遅めに聞き始める代わりに、早めに聞き始める。質問がいつ極性を切り替えるかを正確に言うことは難しい。しかし、自分がデフォルトで死んでいると早めに心配し始めることは、おそらくそんなに危険ではない。一方で、遅めに心配し始めることはとても危険である。

その理由は私が「致命的なピンチ」というエッセーで早い段階に書いた現象である。致命的なピンチはデフォルトで死んでいる+遅い成長+それを修正するのに十分な時間ではない状態である。そして、創業者が最後に致命的なピンチになる方法は、自分たちが向かっているところに気づかないことである。

創業者が自分たちがデフォルトで生きているのかデフォルトで死んでいるのか自問しない別の理由がある。彼らはより多くのお金を調達することが簡単だろうと思い込んでいる。しかし、その仮定はしばしば間違っており、さらに悪いことに、あなたがお金を調達することを当てにするほど、それは誤ったものになる。

もしかすると事実から希望を切り離すことは役に立つだろう。漠然とした楽観主義で未来のことを考える代わりに、構成要素を明確に分離してください。たとえば、「私たちはデフォルトで死んでいるが、自分たちを救う投資家を頼りにしている。」と。あなたがこのように言うと、あなたの頭の中で私の頭の中でする同じアラームが作動するだろう。そして、もしあなたがアラームを十分早く作動させる場合、致命的なピンチを避けることができるかもしれない。

もしあなたが自分を救ってくれる投資家を頼りにすることができる場合、デフォルトで死んでいることは安全だろう。原則として、投資家の関心は成長の関数である。たとえば年に5倍以上の高度な収益の成長がある場合、あなたはたとえ利益にならなくても興味を持つ投資家を頼り始めることができる。[1]しかし、投資家はとても気が変わりやすいので、彼らに頼り始める以上のことは絶対にできない。たとえ成長が素晴らしくても、時にはあなたのビジネスに関する何かが投資家を動揺させる。だから、あなたの成長がどれほど素晴らしくても、資金調達をプランA以上のもののように安全に扱うことは絶対にできない。常にプランBを持つべきだ。もしより多くのお金を調達することができず、プランAが機能しない場合にプランBに切り替えなければならない場合、あなたは生き残るために何をする必要があるか正確に知るべきである(書き留められているように)。

どんな場合でも、速く成長することと安く経営することは、多くの創業者が想定している激しい対立とはほど遠いものである。実際には、スタートアップが費やす金額とスタートアップが成長する速さとの関係は驚くほど少ししかない。スタートアップが速く成長するとき、それは通常プロダクトがある大きなニーズに真っ直ぐ当たるという意味で痛いところを突くからである。スタートアップが多くのお金を費やすとき、それは通常プロダクトが開発したり販売したりするのに費用がかかるためか、シンプルにプロダクトが無駄であるためだ。

もしあなたが注意を払っている場合、あなたはこの時点で致命的なピンチを避ける方法だけでなく、デフォルトで死んでいる状態を避ける方法を聞くことになるだろう。これは簡単である。あまりにも早く雇わないでください。早すぎる雇用は資金調達をするスタートアップの飛び抜けて大きい殺人者である。[2]

創業者は成長するために雇用する必要があると自分に言い聞かせる。しかし、ほとんどはこのニーズを過小評価するよりも過大評価し過ぎて失敗する。なぜか? 一つにはやるべき仕事がたくさんあるためである。素朴な創業者は十分に人を雇うことができれば、それがすべての仕事を終わらせると考えている。一つには成功したスタートアップには多くの従業員がいて、成功するためにはそうするように思えるためである。実際には、成功したスタートアップの多くの従業員はおそらく原因よりも成長の影響である。そして、一つには創業者が遅い成長を持つときに、通常本当の理由であるものを受け止めたくないからである。それは、プロダクトが十分に魅力的でないということだ。

さらに、資金を調達したばかりの創業者は資金を出したベンチャーキャピタルによって過剰に雇用することをしばしば推奨される。ベンチャーキャピタルはポートフォリオ効果によって守られているので、一か八かの戦略は彼らにとって最適である。どちらもフレーズの意味においては、ベンチャーキャピタルはあなたを失敗させたい。しかし、創業者としてのあなたのインセンティブは異なる。あなたは何よりも生き残りたい。[3]

スタートアップが死ぬ一般的な方法は次の通りである。彼らは適度に魅力的なものを作り、そこそこの初期成長をする。創業者は賢く見え、アイデアはもっともらしく聞こえるため、彼らは最初のラウンドをかなり簡単に上げる。しかし、プロダクトは適度に魅力的であるだけなので、成長はまあまあだが素晴らしくない。創業者は多くの人を雇うことが成長をブーストさせる方法だと自分に言い聞かせる。彼らの投資家は同意する。しかし、(プロダクトは適度に魅力的であるだけなので)成長は生まれない。今や彼らは急速に出世街道から外れている。彼らはさらなる投資が自分たちを救うだろうと望む。でも、彼らはコストが高く遅い成長をするので、投資家にとってもはや魅力的ではない。もっと調達することができず、会社は死ぬ。

会社がすべきだったことは根本的な問題に取り組むことである。それは、プロダクトが適度に魅力的であるだけということである。人を雇うことがそのことを修正する方法であることはめったにない。多くの場合、これはそのことを難しくする。この初期段階では、プロダクトは「構築する」ことよりももっと発展する必要があり、これは通常より少ない人数だと簡単である。

あなたがデフォルトでいきているのかデフォルトで死んでいるのか聞くことはあなたをこのことから救うかもしれない。もしかすると作動するアラームのベルは自分を過剰に雇用させる力を打ち消すだろう。それどころか、他の方法で成長を得ようと努力することを強いるだろう。たとえば、スケールしないことをすることや創業者だけができる方法でプロダクトを再びデザインすることによって。そして、ほとんどではないにしても多くのスタートアップにとって、これらの成長への道は実際に機能するものになるだろう。

Airbnb はYコンビネーターの終わりに資金調達してから最初の従業員を雇うまで4ヶ月待った。その間に創業者たちはものすごく過度に働いた。しかし、彼らは Airbnb を今では驚くほど成功した生物へと進化させながら過度に働いていた。

注釈

[1]急激な使用量の増加も投資家の興味を引くだろう。収益は突き詰めていくと使用量の一定の倍数になり、x%の使用量の増加はx%の収益増加を予測する。しかし、実際には投資家は単なる予想収益を無視するので、もしあなたが使用量を測っているのなら、投資家を感心させるにはより高い成長率が必要である。

[2]資金調達しないスタートアップは、金銭的余裕がないため、あまりにも早く雇用することを防ぐ。しかし、絶対禁酒がアルコール中毒になるのを避ける唯一の方法であるのと同じように、これはこの問題を避けるために資金調達を避けるべきだとは意味しない。

[3]創業者を過剰に雇用させるベンチャーキャピタルの傾向が彼ら自身の利益にさえならないとしても私は驚かないだろう。彼らは過剰支出によって殺された会社がもし生き残っていた場合にうまくやっていたかもしれない数を知らない。私の推測はかなりの数である。

[4]下書きを読んだ後、Sam Altman は次のように書いた。

「採用をもっと強調すべきだと思う。YC の最も成功している企業は雇用することに最速であったことはなかったし、素晴らしい創業者の特徴のひとつはこの衝動に抵抗することができると言うのは大体正しいと思う。」

ポール・ブックハイトは次のようにつけ加えた。

「私が多く見た関連する問題は早過ぎるスケールである。創業者は実際には機能していないスモールビジネスを選び(典型的に悪いユニットエコノミックス)、目覚ましい成長の数字を求めるため、規模を拡大する。一度大きくなるとビジネスを修正するのがより難しくなり、その上お金を流出するのが本当に速いという点で、これは過剰雇用に似ている。」

このエッセーの下書きを読んでくれた Sam Altman、ポール・ブックハイト、ジョー・ゲビア、ジェシカ・リビングストン、ジェフ・ラルストンに感謝する。


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