マガジンのカバー画像

「不動産小説」ツボ売り

20
時は2005年、オフィス仲介業というニッチな不動産業界に新卒入社した『山本』と取り巻く人間関係、オフィス仲介としての生き方を追う小説。不動産屋成分多め
運営しているクリエイター

#オフィス

ツボ売り1

街は変わった 景色だけではなく、街に暮らす人々の生活。そしてみている風景、時代すべてが変…

ツボ売り2

「君は学生時代何をやっていたの?自分の強みはあるの?」 なんどもインプットされていた質問…

ツボ売り4

「お世話になっております!グランドオフィスのやまもとです!」 「だから移転の話は一旦延期…

ツボ売り5

「インターセクション社の移転、山本君やってみる?」 アポイントから帰る際に岸部から発せら…

ツボ売り6

「結果として御社を含めて2-3社がN.S.Eビルを検討しているという事です」インターセクション…

ツボ売り7

今月の新人売り上げは山本ただ一人だった。 もちろん結果としてインターセクション社に関して…

坪売り8

春があっという間に過ぎ、夏になり、その夏も過ぎようとしている。岸部から案件を一緒にやろうと振ってもらえる機会も増えた。 岸部なりの親心なのだろうか?山本にとっては嬉しい瞬間である。 その分、山本は仕事に没頭せざるを得ない。岸部案件はその教えから物件調査が必須である・・・。日中はリストから電話をして夕方になれば現地調査をする生活である。足りない分は土日にも現地調査と休みなく活動していないと対応できない。 また、各課の担当者にもお願いをして【案件にならない顧客リスト】への電

坪売り9

日が沈むのが早くなったと感じる秋から冬の訪れ。日の沈みと同じくこの日の山本の気持ちも沈ん…

坪売り10

ニューリアル社の総務担当はいら立っていた。営業会社にある光景だ。営業会社で強いのは圧倒的…

坪売り11

呼び出しは意外な結末であった。 岡田ビルの契約はやめた。競合していた仲介会社担当は差押え…

坪売り12

理由は『引き抜き』だった。 2000年以降日本企業に対して外国企業の日本法人の立ち上げや支社…

坪売り15

代わる代わる質問や恫喝のような誘導尋問が何度も繰り広げられた。石田は涙をこぼして「自分は…

坪売り16

翌日、朝会社のエレベータに乗るのが憂鬱であった。月曜に連絡は無い、休むわけにもいかず出社…

坪売り17

岸部からのメールは他愛もないものだった。転職が落ち着いて半年近くが過ぎた事、会社に対しては申し訳ないが後輩の面倒を見きれなかったお詫びと近況の報告といった内容だった。 しかし山本は迷いに迷った。 このタイミングで岸部からメールが来ること自体が何かの罠なのではないかとも感じた。しかし、メールアドレスは会社のドメインからきている。この事態を知っているのかそうではないのか・・山本には判断できなかった。 これ以上濡れ衣を着せられたくはないが、会社に対して気持ちが覚めてしまった今