それでは今日も尾崎紅葉の『二人比丘尼色懺悔』を読んでいきたいと思います。
やせ衰えた体で脛を組み、刀にすがって乱髪の頭を垂れる小四郎。自分の体も今宵で見納め……。思い出すのは、妻の若葉のこと。出陣の際の別れは、2月6日、春の曙……。草履を結び、兜を受け取り、身を動かさず、声を出さず、見つめ合うふたり……。「健固で……」という小四郎、「御無事で……」という若葉。胸は煮える、五臓は千切れる、身を伸ばして見渡せば、小四郎の影は二尺ばかり……。小四郎を眺めるが、あいにく眼を曇らす涙。拭ってまた見れば、薄黒き粒となった姿も跡なく消えます。
ここで、出陣の際の回想は終り、現実に戻ります。
ということで、この続きは……
また明日、近代でお会いしましょう!