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『古事記ディサイファード』第一巻010【Level 1】超圧縮版漫才風古事記 これだけ読めば暗号が解ける (6)

ヤマトタケル

「長い話やなあ。そろそろ飽きてきたから締めくくっといてんか?」
「そんなわけにいきまへんがな。まだまだ続きまっせ」
「まだ暗号あんのかいな?」
「一番肝心なところはこれからなんやで」
「ところで今んとこどの辺が暗号なんかさっぱりわからへんわ。解読なんか無理ちゃいまんの?」
「そんなことないて。よう考えてみいや」
「いやなんぼ考えたかてわかりそうにないわ」
「時代は変わって第一二代景行天皇の息子でヤマトタケル(日本武尊(やまとたけるのみこと))のお話でっせ」
「またいきなりすっ飛ばしますな」
「ヤマトタケル知ってますやろ?」
「よう知らんけど聞いたことある」
「ヤマトタケルは西の蛮族を平定するよう命じられ、帰ってくると今度は休む間もなく東の蛮族を平定しろと言われますねん」
「大忙しや」
「もう大変な激務でんねん。やってらんねーよ、と愚痴を言いながらも出陣します」
「天皇の命令やからしゃあない」
「伊勢に立ち寄って叔母のヤマトヒメ(倭媛(やまとひめ))に会うと超レアアイテムの剣があるから持っていけと手渡されましてん」
「ヤマトヒメいうたらアマテラスの側近ちゃいますの?」
「せやで。有名な倭媛の巡幸いうたらアマテラスの鎮座地を求めて伊勢に至る話や」
「じゃ、もしかしてそのレアアイテムって……」
「スサノオノミコトがヤマタノオロチを掃討したときに尻尾から出てきてアマテラスオオミカミに献上したという……」
「あの天叢雲劒(あめのむらくものつるぎ)か!」
「ピンポーン」
「ここに来て再登場とは意外やな」
「ヤマトタケルは駿河国までやってきたとき敵に野火を放たれ炎に取り囲まれてしまいますねんけど」
「そりゃ大ピンチや」
「この剣で草を薙ぎ払い、窮地を脱しますねん」
「おお、ちゃんと役にたってよかった」
「それでこの剣を草薙劒(くさなぎのつるぎ)と呼ぶことになりましてん」
「ということは、クサナギノツルギってアメノムラクモノツルギと同じものなん?」
「同じ剣の別名ですねん」
「ところでヤマトタケルってクサナギノツルギの他になんか武器持ってたん?」
「大体スルーされがちなんやけど実は熊手(くまで)も持っとったらしいで」
「クマデって掃除用具ちゃいますの?」
「武器やて古事記に書いてるで」
「クマデも活躍するんかいな?」
「いや全然使わへんけどなぜか唐突に書いてあんのや」
「なんでやねん?」
「とくに話の流れと関係あるわけでもないねんけど」
「まあええわ」
「ほんでどんどん東へ進んで走水(はしりみず)までやってきた」
「おお、もう横浜あたりや」
「浦賀水道を渡ろうとしたんやけど、海神が怒って海を荒れさせよってからに、進むことが出来ひんかった」
「それは困った。
  東京の方から陸路でまわったらどうやの?」
「それが出来ん事情がなんぞあったんやろな。
  そこでオトタチバナヒメ(弟橘媛(おとたちばなひめ))からの提案や」
「また唐突に出てきよったな。今度は誰やねん?」
「ヤマトタケルの奥さんやがな」
「奥さんおってん?」
「たくさんおったらしいけどその一人や」
「どんな提案やの?」
「私が海に身を投げて海神の怒りを鎮めますから、貴方は行って任務を全うしてください」
「こりゃまた献身的やな。そこまでせんでもええのに」
「そして海に身を投げるその時に、
  菅畳八重(すがだたみやえ)、
  皮畳八重(かわだたみやえ)、
  絹畳八重(きぬだたみやえ)を波の上に敷きてその上に下りましき」
「ちょっと待たんかい!
  なんやそれ?」
「いちいちうるさいな」
「なんやて? もっかい言うてみ」
「菅畳八重(すがだたみやえ)、
  皮畳八重(かわだたみやえ)、
  絹畳八重(きぬだたみやえ)
  を波の上に敷きてその上に下りましき」
「またタタミかい!?
  三種類、各八枚づつ、合計二十四枚もどっから持ってきよったん?」
「船に積んどった」
「どんな船やねん?」
「水、冷たいし……」
「軟弱か!」
「タタミないと沈むやん」
「何がしたいねん?」
「だから海神の怒りを……」
「よけい怒るで!
  そんなんやったら最初からやめとき!
  オトタチバナ天然ぼけか?」
「知らんがな。
  俺に訊くな。
  古事記にそう書いとんのやからしゃあないやろ」
「まあ、ええわ。
  なんや知らんけどタタミ敷いて入水した。
  それで結局どうなったん?」
「暴風荒波たちまち止んだ」
「止んだんかーい!」
「船は前進することができたんや」
「できたんかーい!」
「そして七日の後、対岸にオトタチバナヒメの櫛が流れ着きよったのでそれを弁天山古墳に祭ったんや」
「オトタチバナヒメかわいそうやな」
「ヤマトタケルはさらに東へ進み、八溝山(やみぞやま)まで来ると何故かオヤジギャグを一発かまして帰っていったんや」
「どんなギャグやねん?」
「ここから先は闇ぞ」
「もうええわ!」

太・稗「ありがとうございましたーっ!」



サーフィンするんかーい!


    *   *   *


 ……と、いうわけで、(どんなわけやねん?)さて、ものすごく早送りで古事記のストーリーの流れをご紹介した。
 因みに最後の「闇ぞ」は筆者の考えたギャグではなく、本当に古事記に書いてある日本武尊が言った駄洒落(?)である。原文または読み下し文でご確認いただきたい。実際筆者は初めてこの部分を読んだとき「もうええわ!」と思った。
 巷の古事記関連書籍ではこのギャグもほぼスルーされている。(無理もない?)
 え?
 たったこれだけ……と思うかも知れない。
 そう、たったこれだけである。
 あくまでも筆者が言う暗号の解読に関して言えばこれだけで十分なのである。
 筆者はこれでも長すぎて余計な情報が多すぎると思っている。
 ここで大負けに負けて特大のヒントを差し上げよう。
 実は基本的な暗号解読のために必要なのはヤカミヒメとオトタチバナヒメ、トヨタマヒメの三箇所だけだと言っても過言ではない。ここにとんでもない驚くべき秘密の暗号鍵が隠れているのだが読者諸氏は果たして気付かれるだろうか?■

(つづく)

※ 最初から順を追って読まないと内容が理解できないと思います。途中から入られた方は『古事記デイサイファード』第一巻001からお読みいただくことをお薦めいたします。

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