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『古事記ディサイファード』第一巻007【Level 1】超圧縮版漫才風古事記 これだけ読めば暗号が解ける (3)

稲羽(いなば)の白ウサギ(稲羽素兎)

「やがてスサノオとクシナダヒメの間には多くの子どもができましてん」
「そりゃめでたい」
「ほんで七世の孫の中に
  オオクニヌシ(大国主命(おおくにぬしのみこと)
  =別名・大穴牟遲神(おおなむちのかみ))
  いうのがいてましてん」
「オオクニヌシ知ってるで、有名やがな」
「オオクニヌシには八十神(やそがみ)の兄弟がおったんやけど……」
「ヤソガミてなんや?」
「八十の神と書いて八十神(やそがみ)や」
「八十人も兄弟おってん?!」
「ものの例えかも知れんからほんまに八十人おったんかどうか知らんけどとにかくオーケストラが作れるぐらいにぎょうさんおってん」
「オーケストラ作らんでええがな。
  四重奏(カルテツト)ぐらいにしとき」
「こいつらがろくでもない奴らでいつもオオクニヌシに意地悪しとってん」
「そりゃオオクニヌシかわいそやな」
「ところで当時ヤカミヒメ(八上比賣(やかみひめ))いう神界のアイドルがいてましてん」
「また話が唐突やな。
  神界にもアイドルおるんかい?!」
「当然おりまんがな」
「黄泉比良坂(よもつひらさか)フォーティエイトとかいいますのん?」
「そんなんおらん」
「高天原フォーティーセブン?」
「人数足らん……。
  ほっといて先行くで……」
「スルーかいっ」
「オマエがボケてどないする?」
「ええやないかい、たまに」
「八十神の兄ちゃんたちはみんなヤカミヒメの追っ掛けや」
「大ファンやったんか」
「ある日兄弟みんなでヤカミヒメのところに押しかけてオタ芸でもやって求婚しようということになった」
「いや神様オタ芸やらんやろ」
「兄たちは荷物を全部オオクニヌシ独りに持たせて自分らはハンズフリーでスタスタ先に歩いていってしもた」
「ポーターか!」
「オオクニヌシが兄貴たち全員の荷物を背負ってとぼとぼと気多の前(けたのさき)にさしかかったときのことや」
「どないした?」
「ふと気がつくと行く手に毛をすっかり毟り取られた裸のウサギが佇んで泣いとるやないかい」
「なんで泣いとりますのん?」
「ウサ公が答えるには、淤岐の島からこの地に渡ろうとしていたんやけど渡る手段がみつからへんかった」
「カナヅチやったんやな」
「そこでサメ(和邇(わに))を欺して利用することを思い付いたんやで」
「サメのこと当時はワニいうとったらしいで」
「もしもしサメよ。サメさんよ……♪」
「どっかで聴いた台詞やな」
「うちらの種族とあんたらの種族ではどちらが多いか競争せえへん?」
「ウサギ競争好きやなあ」
「できるだけ仲間を集めてきてこの島から気多の前まで並んでみてんか? 僕がその上をぴょんぴょん跳んで数えたるさかいに」
「それでサメは欺されたんか」
「列をなしよったサメの上を飛び跳ねて数えるふりをしながら渡ってきたっちゅうわけや」
「なるほど」
「岸にたどり着く寸前でウサギはつい、
 〈やーい、欺されよったー!〉
  と本心をバラしてもうた」
「そりゃサメ怒りまんがな」
「最後のサメがウサギを捕えるとすっかり毛を剥いでしもた」


「それでサメザメ泣いとったっちゅうわけか」
「ダジャレかい!」
「自業自得やんか」
「いやいや、まだ先があるんや。痛がっとったら八十神(やそがみ)兄ちゃん達が通りかかりよった」
「ハンズフリーの兄ちゃん達や」
「そして海で塩水を浴びて風に当たって伏せっていなさい、とデタラメの治療法を教えよった」
「性格わるっ!」
「ウサギがそれに従ったところ返って傷が増えて痛くなってしもた」
「そりゃそうや、かわいそうに」
「それからしばらくしてオオクニヌシが通りかかったっちゅうわけや。オオクニヌシは、すぐに水門へ行って水で体を洗い、その蒲(がま)の穂をとって敷き散らし、その上を転がって花粉をつければ膚はもとのように戻り必ず癒えるだろう、と正しい対処方法を教えたんや」
「それでほんまにようなりますの?」
「知らんけど」
「知らんのかいっ!」
「ウサギが指示通りにすると体調は回復しよった」
「良かった良かった!」
「これが稲羽(いなば)の素兎(しろうさぎ)や」


「想い出したで。昔絵本で読んだことあるわ」
「ウサギはオオクニヌシに言った」
「お礼言ったんか?」
「あなたの兄弟達は全員ヤカミヒメにふられます」
「ざまあみろ!」
「あなたが彼女のハートを射止めるでしょう」
「やった!」
「ウサギの予言通りになってオオクニヌシとヤカミヒメはハッピーエンドや」
「めでたしめでたし」
「このウサギ今では兎神として祭られとるんやで。
  それが白兎神社っちゅうわけや」

(つづく)


※ 最初から順を追って読まないと内容が理解できないと思います。途中から入られた方は『古事記デイサイファード』第一巻001からお読みいただくことをお薦めいたします。

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