山下泰司 Yasushi Yamashita

会社では映画専門チャンネルの番組や古いヨーロッパ映画のBlu-rayを作ったり。雑誌で…

山下泰司 Yasushi Yamashita

会社では映画専門チャンネルの番組や古いヨーロッパ映画のBlu-rayを作ったり。雑誌では映画の話や音楽のことを書いたり。障害のある二人の子どもの父親であったり。妻との共著に「格安世界一周お二人様ご一行」(講談社)、著書に「雨のち晴子 水頭症の子と父のものがたり」(晶文社)。

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  • ボローニャ復元映画祭2020 レポートまとめ

    オンライン参加で観た映画や講義の記録です。

最近の記事

『ノスタルジア』撮影監督インタビュー

ジュゼッペ・ランチ:光のかたち ロベルト・アイタによるパレルモでのインタビュー(2001年) ジュゼッペ・ランチ(1942年ローマ生まれ)はカメラ・アシスタントやカメラ・オペレーターとしての修行を積んだ後(その中にはベルナルド・ベルトルッチの1970年作『暗殺のオペラ』がある)、撮影監督としてのキャリアを1977年にスタートさせた。以来、ランチはイタリア映画界で最も尊敬されている監督たちと、時に緊密な関係を築きながら撮影監督として働いてきた。たとえばマルコ・ヴェロッキオとは

    • 3/31発売『暗殺の森』UHD+Blu-rayについて②

      年末からこちら、制作の作業を進めておりました『暗殺の森【4K修復版】』UHD+Blu-ray、いよいよ発売が迫ってまいりました。権利取得前の準備段階から含めると、およそ1年間にわたって取り組んでいましたので(いつもいつもこのことを考えていたわけではないにしろ)、「ようやく!」という感じで感慨もひとしおです。加えて、新年度の「午前十時の映画祭」でも、10〜11月にかけて全国の映画館で上映されることが決まりました。こちらの配給については自分の勤める会社のテリトリーではないのですが

      • 3/31発売『暗殺の森』UHD+Blu-rayについて①

         2023年3月31日に、ベルナルド・ベルトルッチ監督、ヴィットリオ・ストラーロ撮影監督、ジョルジュ・ドルリュー音楽、ジャン=ルイ・トラティニャン、ステファニア・サンドレッリ、ドミニク・サンダほか出演の大名作『暗殺の森』が、4K UHDとBlu-rayの同梱という形で発売となります。発売元はWOWOWプラス、販売元はTCエンタテインメント、お値段は高くて申し訳ありませんが7,800円+税でございます。7,800円というのは、なにか出始めのレーザーディスクの一枚ものの値段だった

        • 「『幾多の北』と三つの短編」にいたるまで②

           どうもこんにちは。今回、「『幾多の北』と三つの短編」を、山村浩二さんのAu Praxinoscope(オープラクシノスコープ)と共同配給するもう一社、WOWOWプラスの担当の山下と申します。今、クリスマスの夜ですが、1/27〜29の新文芸坐での劇場公開に向けて準備に奔走しております。ようやくポスターとチラシ(下の方に画像あります)の印刷に取りかかれます。新文芸坐さんでは新年になればそれらを見たり、お手に取ったりしていただけると思います。予告編も作ってます。これも年明け早々に

        『ノスタルジア』撮影監督インタビュー

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        • ボローニャ復元映画祭2020 レポートまとめ
          7本

        記事

          「『幾多の北』と三つの短編」にいたるまで①

          来る2023年1月27日(金)から3日間、東京・池袋の映画館、新文芸坐で「『幾多の北』と三つの短編」と題した、アニメーションの作品集を上映します。全4作品とも、アニメーション作家・山村浩二が監督したか、プロデュースした作品で、初長編となる『幾多の北』と短編『ホッキョクグマすっごくひま』が山村さんの監督作、東京藝術大学大学院の教え子である幸(ゆき)洋子監督の『ミニミニポッケの大きな庭で』、矢野ほなみ監督の『骨嚙み』が山村さんのプロデュース作、ということになります。いずれも202

          「『幾多の北』と三つの短編」にいたるまで①

          辛抱強い恍惚者たちの祭り 第8回新千歳空港国際アニメーション映画祭

           気がつけばもう1週間が過ぎていて。先週の今頃は、ホテルの自分の部屋で、山村浩二さんご夫妻や、そのお弟子さんたちと、新千歳空港のエアターミナルホテルの自分の部屋に集まって、ビールやらワインやらをしこたま飲んでたのである。もう1週間? 昨日のことのようだけど。 講演をするために呼んでいただいて初めて行った、もう第8回になる、新千歳空港国際アニメーション映画祭。無観客の講演をオンライン配信するために千歳まで行くというのもなんだか倒錯した行為だが、一向にかまわない。そして、きっと

          辛抱強い恍惚者たちの祭り 第8回新千歳空港国際アニメーション映画祭

          第8回新千歳空港国際アニメーション映画祭

          11/9(木)から19日(金)まで、この映画祭にかかった100本以上の短編と現地開催時に行われた講演のアーカイブ(トータルで30時間44分)が2500円で見放題になっています。一度お金を払ってログインされた方が、ここで紹介する作品群のタイトルをクリックすると、その視聴ページにダイレクトに飛べるようにリンクを貼りましたのでご利用ください。もともとアニメーションがお好きな方はもちろん、映画が好きな方、映像が好きな方、絵が好きな方、なにか自分の表現をしている方、これからしようとして

          第8回新千歳空港国際アニメーション映画祭

          骨の歴史 ジョン・ルーリー 回想録

           まるでトリュフォーのデビュー作『大人は判ってくれない』のアントワーヌ・ドワネル(ジャン=ピエール・レオー)を見ている時のような気持ちにさせられる本だった。「アントワーヌ、それをやっちゃ絶対に良くないことが起こる」とハラハラしていると、案の定、最悪の事態になってしまうのだ。しかし、アントワーヌはまだ10代の子どもである。ここに描かれているのは、10代の時もあるが(まあ悪さばっかりしている)20代、30代、40代……と十分に大人であるはずのジョン・ルーリーなのだ。それなのに……

          骨の歴史 ジョン・ルーリー 回想録

          ボローニャ復元映画祭2021覚書き

          はい、今年もオンラインでいくつかの作品を観ております。自分用のメモですね。 まずはガストン・ラベルGaston Ravelという監督の1928年作『フィガロ』FIGARO。タイトルからわかるとおり『セビリアの理髪師』『フィガロの結婚』『罪ある母』っていうボーマルシェの三部作。オペラにもなってますね。映画はこの三部作を2時間にぎゅっとまとめたサイレントです。僕は全然オペラ知らないんで、改めてそれぞれのストーリーをちょっと読んだんですけど、結構込み入った話でね、これ普通に歌

          ボローニャ復元映画祭2021覚書き

          児童公園のヤシ

          「型抜き」が危機に瀕しているというニュースが出ている。型抜きというのは、縁日の屋台で供される射幸心を煽る遊びである。3センチ×4センチくらいのきわめて薄い板(その記事で知ったが、砂糖にでんぷんやゼラチンで作るもののようだ。僕が子どもの頃に見たものはあんなピンク色ではなくてもっと白っぽくて、食べるとちょっとハッカの香りがした)に様々な形のラインがレリーフのように刻んであり、子どもたちはそのラインに沿って釘で擦り、まわりをどんどん外していって(まわりは破片になって構わない)形がキ

          アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ

          年の瀬に驚きのドキュメンタリーを見ちゃいました。タイトルは"DAWSON CITY : FROZEN TIME"。2016年の米国映画ですが、実は2017年のイメージフォーラム・フェスティヴァルで日本でも公開されてたようです(まったくアンテナに引っかかってませんでした)。その時のタイトルは『ドーソン・シティ:凍結された時間』。ちなみにキャッチコピー的な副題が付いていて、”Film was born of an explosive."。「フィルムは爆発物として誕生した」です。

          アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ

          展覧会「川本喜八郎+岡本忠成パペットアニメーショウ2020」

          12月19日から、東京・京橋にある国立映画アーカイブ7階の展示室で上記、展覧会が始まります(来年3月28日まで)。チラシをよく見ていただくと、<企画協力>というところに株式会社WOWOWプラスと入っています。実はこの展覧会、ずいぶん前に国立映画アーカイブの方たちに「こういう展覧会をやりませんか?」と僕が持ちかけて、それがまさかまさかの本当に実現してしまったもので、展覧会のタイトルも僕が最初に企画書に書いていたままのものになりました。  そもそも川本喜八郎って、岡本忠成っ

          展覧会「川本喜八郎+岡本忠成パペットアニメーショウ2020」

          『天井棧敷の人々』4K修復について

          2020年10月23日より東京YEBISU GARDEN CINEMAを皮切りに、1945年公開のフランス映画『天井桟敷の人々 4K修復版』が全国で順次公開されます。ドイツ占領下のフランスで、パリから南に逃れた映画人たちが作り上げた奇跡の1本(2部構成)。もはや古典中の古典といってもいい作品ですが、それが古典には見えないほどの素晴らしい修復でよみがえりました。 今回、劇場で販売されるパンフレットに、その修復についての記事を書きましたので、そのさわりの部分だけ、ちょっとこちら

          『天井棧敷の人々』4K修復について

          JUST ANOTHER

           僕はパンクを通ってない。子どもの頃、今は齢60を越えてなおロック・バンド活動やDJ兼バーテンダーなどをしている兄に「買ってこい」と金を渡されてレコード屋から持ち帰ったセックス・ピストルズの『勝手にしやがれ』は最初から最後まで全部同じ曲に聞こえた。それがあったせいか、なんとなく「パンク」と呼ばれるものに対する距離があって、クラッシュなんかも全然聞かずに大人になった。その後「一人クラッシュ」なんて呼ばれ方で現れたビリー・ブラッグなどは初来日時に都内を何か所か追っかけたし、今でも

          『新しい街 ヴィル・ヌーヴ』

           タイトル聞いたときはね、やっぱり「?」って一瞬なりましたよね。『ブレードランナー2049』とか、今度『デューン』が公開される監督にドゥニ・ヴィルヌーヴっていう人がいるもんですから。これで、そうか、「ヴィルヌーヴ」って、「ヴィル・ヌーヴ」=”Ville Neuve"なのかと初めて気が付きました。日本の名前で言ったら、「新町さん」とか「新村さん」ってことですね。  そのドゥニさんもカナダ人なんですが、この『新しい街 ヴィル・ヌーヴ』という作品もカナダの2018年作。80分近い

          『新しい街 ヴィル・ヌーヴ』

          ボローニャ復元映画祭2020 DAY 7

          ついに最終日でございます。一週間お疲れさまでした、と誰に言うでもなく。 さあ、最終日に観た映画の話です。 神々の寵児(1930) スチル見たらカンフー映画かなんかだと思われそうですけど、これ、オペラに出演するための扮装で、映画そのものは、その人気オペラ歌手の栄枯盛衰を描く1930年当時のドイツの現代劇。主人公演じるはエミール・ヤニングスで、この人、何日か前に観た『裏町の怪老窟』にもバグダッドの王様役で出てましたが、当時、ものすごい人気スターだったそう(今の人気スターの顔

          ボローニャ復元映画祭2020 DAY 7