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『天井棧敷の人々』4K修復について

2020年10月23日より東京YEBISU GARDEN CINEMAを皮切りに、1945年公開のフランス映画『天井桟敷の人々 4K修復版』が全国で順次公開されます。ドイツ占領下のフランスで、パリから南に逃れた映画人たちが作り上げた奇跡の1本(2部構成)。もはや古典中の古典といってもいい作品ですが、それが古典には見えないほどの素晴らしい修復でよみがえりました。

今回、劇場で販売されるパンフレットに、その修復についての記事を書きましたので、そのさわりの部分だけ、ちょっとこちらでお読みいただきましょう。

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 久々にこの4K修復版で『天井棧敷の人々』をご覧になって、とても驚かれたのではないでしょうか。登場人物たちの、着ている服の手触りまでも伝わってきそうな豊かな質感、彼らの声の力強さやセリフに込められたニュアンス……75年も前に発表されたこの作品にこれほどのクオリティが秘められていたのかと。

 今回の修復版、日本での公開は2020年になりましたが、フランス本国では2011年に完成し、その年5月のカンヌ国際映画祭で初めてお披露目されたものです。その頃はまだ4Kでの修復はそう多くはなく、実際、ヨーロッパ映画としては、2010年に完成したヴィスコンティの『山猫』とフェリーニの『甘い生活』に続いて、この『天井棧敷の人々』が3つ目のものとなりました。それくらい、映画史において大事にされている一作なのです。この項では、修復版完成当時の広報資料に掲載されたスタッフのインタビューを元に、修復のプロセスを解説していきたいと思います。

 そもそも「4K」とはなんでしょう? 「K」は「キロ」、つまり「1000」です。「4K」は「4000」ということになりますが、フィルムの一コマ一コマをデジタル化する時、一画面の横方向を約4000のピクセル(画素)で取り込んで(この作業をスキャン、スキャニングといいます)、修復のプロセスもその解像度で行う。これが「4K修復」です。画面上の傷を取り除いたり、揺れを止めたり、音声のノイズを除去したりすることは、フィルムの状態のままでは無理で、デジタル技術を使うことで初めて可能になりました。そして、4Kの解像度があれば、劇場用映画で最も多く使われてきた35mmフィルムが備えていた画質と同等のものを再現することが出来ると言われています。

 『天井棧敷の人々』の4K修復の元になったオリジナル・ネガ(撮影時にカメラの中に入っていたネガ・フィルムをカットごとに貼り合わせてつないだ、映画の大元です)は、フランス国立映画センター(CNC)の倉庫に保存されていた、可燃性のナイトレートという素材で出来たフィルムです……

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この続きはぜひ、映画館で本編を観て、そしてパンフレットを買ってお読みいただければと思います。パンフには、マルセル・カルネ監督インタビューやキャロル・オルエ氏による時代背景解説の翻訳、そして映画評論家の杉原賢彦さんによる作品解説等、読み応えのある記事が満載でございます。

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