コロナ、 マイ エブリデー ビア by こんぶ
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コロナ、 マイ エブリデー ビア by こんぶ

ニューヨーク、ときどきDIARY

今回のテーマ : コロナ生活

1年数ヶ月前まで”コロナ”と言えば、”あれ”ではなく、私のエブリデービアだった。アパート近くの通りの角に小さなグロッサリーストアがあって、私はそこでほぼ6日に1度、コロナビールの6本パックを買っていた。その店は近所に住むスペイン語を話す人たちでけっこう繁盛していたが、アジア人のお客は1度も見かけたことがなかった。

中南米からの移民とおぼしき40〜50代の夫婦が営む店で、なぜだか店の名前は「カリフォルニアデリ」。9年前に引っ越してきたとき、コロナビールの6本パックは10ドルだった。

狭いカウンターの奥で斜め上に置かれたテレビでスペイン語のドラマを見ながら店番をしている奥さんはなかなかの美人で、ビールを買って10ドル紙幣を出すと、ちょっと疲れたような笑顔で「サ〜ンキュ」と言った。「サンキュー」ではなくて「サ〜ンキュ」と。いつも愛想がよかったが、少し退屈そうに見えた。

2、3年前だったか、コロナビールが10ドルから11ドルになった。いつものように10ドル紙幣を出すと、奥さんが申し訳なさそうに、「11ドルになったの」と言ったので、もう1枚1ドル札を出した。

そして、数ヶ月前、コロナビール6本パックは12ドルになった。10ドルから11ドルへの値上げまで少なくとも6年はあったことを考えると、今回の値上げはずいぶん早い。10ドルだったときは近所のスーパーで買うより安かった。11ドルになったらどこで買ってもあまり変わらなくなった。12ドルになったらスーパーで1ダースまとめ買いする方が断然お得になった。

コロナのパンデミックでレストランや個人商店は大きな打撃を受けた。ビールの値上げはやむを得なかったんだろう。 

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帰国の前日「カリフォルニアデリ」に行った。大きな冷蔵庫から、初めて6本パックではなくコロナビールを1本だけ取り出してカウンターに置いた。いつもは奥さんが店番をしていたが、珍しくこの日は夫婦そろってカウンターの向こう側にいた。

財布から2ドル出しながら、「明日日本に帰るの。これが最後のコロナビア」と言うと、主人は驚いた顔で「え、日本に帰っちゃうのかい?またニューヨークに来ることもあるんだろう?そのときは顔を見せてくれよ。長い間サポートありがとね」。奥さんも驚いた表情を見せたあと、いつもの美人の笑顔になって「サ〜ンキュ。セーフトリップ」と言った。

私のコロナビア御用達の店、「カリフォルニアデリ」。なんでカリフォルニアなのかいつか聞こうと思いつつ、店名の由来を聞くのを忘れた。


らうす・こんぶ/仕事は日本語を教えたり、日本語で書いたりすること。21年間のニューヨーク生活に終止符を打ち、東京在住。やっぱり日本語で話したり、書いたり、読んだり、考えたりするのがいちばん気持ちいいので、これからはもっと日本語と深く関わっていきたい。


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専門も趣味もまったく異なるライターたちが、パンデミックをきっかけに始めた日々の共同つれづれ日記。 河野洋、らうす・こんぶ、福島千里の3人が同一テーマで綴るそれぞれのニューヨーク愛。 みんなが知ってるニューヨーク、誰も知らないニューヨークをまるごとお届け!