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えびカツを思い出した。

さて、きょうはエビを揚げてみます。

この台詞を聞いてどんなメニューを思い浮かべましたか。えびフライでしょうか、海老天でしょうか。

そう。そうなりますよね。エビを揚げると聞いて、最初に思い浮かぶのはどちらかでしょう。洋のフライ、和の天ぷら。


🍤えびフライでも海老天でもない

でもね、でもですよ。エビを揚げるとき、こんな選択肢もなくはないでしょう。あったんです。きょうの自分には。たとえ誰の脳裏にも思い浮かばないとしても。

もはや、画像を見てもすぐメニューの名前を回答してもらえるかすら不安ですが、これ。

えびカツです。

なんだろう、この懐かしさ。えびフライはいまもバリバリの現役で、それどころかとんかつが揚げ物界の王様なら、その国のクイーンともいうべきポジションなのに、おなじエビでつくるのに。

🍤懐かしのえびカツづくり

えびカツにはずいぶんご無沙汰している気がしませんか。ほんと、よく思い出したなと自分でも思います。

🍤材料(2個分)
・えび…2尾
・はんぺん…1/2枚
・玉ねぎ(小)…1/2個 
・片栗粉…大さじ1
・こしょう…ひとつまみ
・天ぷら粉…適量
・水…適量
・パン粉…適量

■練ってまとめて

ポイントになるのははんぺん。本来はえびをすり身にして使うところですが、それはなかなか手間なので、魚のすり身からつくられてるはんぺんで代用します。

ボウルにはんぺんをいれて揉むようにして崩したら、ぶつ切りにしたえび、片栗粉、こしょうを投入。

ハンバーグの容量で練って、タネをひとまとめにしておきます。

タネを2つに分けて、正方形に整形します。厚みは小判型のコロッケよりすこし薄めぐらいがいいと思います。

■えびカツは四角い

そういえばえびカツといえばこの形だよなぁ。つくりはじめてあらためて思います。なんでコロッケと形が違うんだろう。自由自在に整形できる、タネモノなのに。

こんなに真四角な揚げ物って、ほかに浮かぶのはフィッシュバーガーの白身フライくらいじゃないですかね。しかもあちらはおそらく、巨大な白身を四角く切り分けていると思うのですが、こちらは自由な権利を与えられているというのに、あえて四角四面なこの形にまとめるわけです。

建築家さん的にいうならば、白身フライが1枚物の白木のカウンターだとすれば、こちらは寄木造りみたいなものか。いや、小エビを隙間なく並べて正方形をつくり出してるんじゃないから、そうではないか。

まあ実際のところ形はお好みで決められるので、突然実用的な話になりますが、タネを小さな真ん丸に丸めてつくると、お弁当にも重宝すると思います。

でも今回はおうちごはんなので、ビジュアルにえびカツだぞ感はほしい。というわけで、正方形で衣をつけていきます。

水で溶いた天ぷら粉をまとわせて、パン粉を付けました。

🔥衣をつけたら揚げましょう

天ぷら粉はタネにまとわりつくよう、どろりとした濃度に溶けばOK。水溶き天ぷら粉を使うことで、小麦粉、卵の2段階の工程をまとめることができます。衣をつけ終わったあと、卵が残ることもないので、フライをつくるときに誰しもが一度は感じたことのあるだろう、もったいない感も防げます。

パン粉を付けるときは、側面や正方形の角にもしっかりと付けるようにしてください。

さあ、これを揚げていきます。

タネのうち、生の素材はエビと玉ねぎ。どちらも火通りはいいので、油の温度は高めでOK。

下になった面が固まったらいったん返して、両面がきつね色に色づくまで揚げます。

うん、いい感じ。油をしっかり切っておきます。

🍤わたしはえびカツ

このまま盛り付けてもまったく問題はないのですが、えびカツってなかなか出会わないじゃないですか。最初思い出せなかったでしょ。

ということはこのままお皿に載せてしまうと、このフライは、なんだかわからない四角い揚げ物…ということになってしまわないか。

せっかくつくったえびカツ、それはさすがに忍びない。というわけでカットすることにします。

対角線でカット。おお、強い。断面にぷりぷりエビの紅白がちらつくこのビジュアル強いぞ。

切る前は正直まったくなにかわからなかった、四角い茶色い物体が切った途端、色彩鮮やかに訴えかけてきます。

わたしはえびカツ。よろしくね。

しかも紅白。めでたい。白一色の白身フライには絶対出せないセレブレーション・コントラストです。

この紅白、盛付けのときにも見せるしかないですね。こんな感じで1ピースを寝かせておいたら、もうひとつはそこにもたせかけて、断面アピール。

もちろんソースはタルタルソース。これはエビの宿命であり、運命の出会い。

タルタルソース側からすると、エビちゃん…ずいぶん変わってしまったのね。でも、あなたはあなただものね、わたし、いつまでもあなたのそばにいるわ。みたいな気分でしょう。

仕上げに刻みパセリをぱらぱら。断面の紅白にタルタルソースの白、緑の彩りが加われば、これはもう色彩の完全食。

🍤ふわふわプリプリ

ひと口食べれば、口の中にカリカリの衣の中からふわふわのはんぺんとプリプリのエビという食感の三重奏が響き渡ります。

つなぎに使ったはんぺんもシーフードなので、タルタルソースとの相性は素材に分解しても、えびカツという成果物として見てもマリアージュ。

えびカツ、いいですね。近ごろエビも高くなってるので、はんぺんでかさ増ししつつフライとして楽しめるので、お財布に優しいえびフライアレンジという気もしてきました。

エビフライとは違い、小エビなんかでもできるので、ますます経済的かも。

📒洋食の歴史を紐解く日のために

ところで以前書いた、ポークピカタの記事。

このときも思ったんですが、今回のえびカツといい、かつてはもっと目立っていた日があったはずなのに、いつの間にか存在感の薄れてしまった洋食メニューっていますよね。

ニッポンの洋食は本場の西欧料理を、日本人の口にも合うようにアレンジして生まれ育ったメニューです。いつしかフランス料理やイタリア料理がそのままに近い形で普及していく土壌が日本にできたことで、日本向けアレンジだった洋食メニューの中で、生き残りの明暗が分かれてしまったのかもしれません。

黎明期を支えた日本生まれの洋食の中には、今回のえびカツやポークピカタのように、歴史に埋もれてしまった、あるいは絶滅危惧種となってしまったメニューがいくつもあることでしょう。

でもそれも洋食が日本で発展していくうえでの、大切な礎であり、先人たちの工夫と努力の歴史だと思うのです。

あらためて、ニッポンの洋食の歴史を紐解き、そんなメニューを振り返ってみるのもいいんじゃないかなと思ったりもしています。いつかくるその日のために、きょうもまた次の懐かし洋食を探すのです。


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