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山の恵み冬の悦び、ぼたん鍋

“ジビエ”という言葉もすっかり定着したような気がします。この季節、グルメガイド系のサイトでフランス料理のレストランのメニューを見ると、ふだんのお肉メニューに加えて、鹿肉や野兎、鳩に雷鳥、珍しい素材の名前が並んでいますね。

🐗ジビエの季節です

食べる立場、調理する立場から見ると、ジビエには大きく分けると2種類あって、いわゆる4つ足と2つ足。つまり前者はシカやノウサギ、イノシシ、後者はハトやキジ、ヤマウズラなどの鳥類です。

フレンチ的にはつい合わせるワインを考えてみたりもするのですが、鳥類系ならピノ・ノワール、4つ足の獣類ならシラーやカベルネ・ソーヴィニニヨンの赤ワインがいいですね。

🐗ことしも来ました

そんなジビエ。この季節になると毎年いただくのがイノシシ。山の近い地方に住んでいる親戚が送ってくれる、まさに山の恵みです。

このたっぷりの脂がきれいなんですよね。

ひっくり返すとこんな感じ。骨のあとがわかります。

冬の恵み、そんなイノシシをいただくと、毎年必ず作るのがお鍋。ぼたん鍋とかしし鍋とかいうあれです。もちろんこの冬もまずはそれでいただきます。

お肉はそこそこ薄切りです。やわらかいと切りにくいので、一度冷凍して、半解凍くらいで包丁を入れます。

豚肉より赤が濃く、脂身の白とのコントラストがきれいです。

脂身はあとでお鍋の下準備に使うので、少しだけ切り取っておくことにしました。

🍲ぼたん鍋の準備

今回お鍋に入れるのは、いのししのお肉と野菜、そしてボリュームと味のバリエーションの役目の肉団子にします。

肉団子はいのししのお肉で作ってももちろんOK。でもせっかくのいのししなので、お肉はお肉の形のままいただきたい。弾力とか、それを噛みしめて生まれる旨味とか、形のままの美味しさってありますよね。

というわけで今回は、豚肉で肉団子を作ることにしました。野生のいのししを家畜化したものが豚ならば、相性が悪いわけないですよね。

🔴肉団子の材料(15個分くらい)
・豚ひき肉…200グラム
・玉ねぎ…1/4個分
・卵…1個
・パン粉…1カップ
・味噌……大さじ1
・砂糖…大さじ1
・片栗粉…適量

材料はボウルに入れて、ハンバーグの要領で練ってから丸くまとめます。今回は和風のお鍋なので、下味にお味噌を使うのがポイント。丸めるときは手のひらにサラダ油を塗っておくと、べたべたとくっつかずきれいに丸められます。

丸めたら表面にたっぷりと片栗粉をまぶします。こうしておくと形がきれいに揚がるのと、衣がつくことでお鍋の出汁がよくからむようになります。

あとは中温でじっくり。下になった面が固まったら返して、全面に揚げ色がついて中まで火が通るように揚げていきます。

🍲お鍋の具
・いのししのお肉
・肉団子
・大根
・にんじん
・ねぎ
・ほうれん草
・しめじ
・まいたけ

野菜はお好みのものでいいと思いますが、山の素材なので、きのこは相性がいいと思います。

ほうれん草は下茹でして、水気を絞ってあります。

🌹咲いた咲いたよ牡丹の花が

いのししのお鍋は、お肉の名前から“しし鍋”とか“いの鍋”と呼ばれるほかに、もうひとつ。

ぼたん鍋という呼び名もあります。

赤いお肉を花弁のように盛りつけた姿から、そう呼ぶのだと思っていたのですが、調べてみたら“ぼたん”の名前が先で、それに合わせて盛り付け方が生まれたみたいですね。

せっかくいのししを食べるなら、あのきれいな盛り付けはしたいですよね。やっていきます。

まず最初の一枚をくるくる巻いて、お皿に立てておきます。

その周りに一枚、また一枚、巻きつけるように盛り付けます。

何層かくり返すとこのとおり。牡丹の花が咲きました。

🍲いよいよお鍋がはじまります

お鍋の出汁は昆布にします。かつおぶしや煮干しでもいいと思います。今回昆布にしたのは単に好みです。

🍲味付けの材料(1人分)
・昆布だし…1.5カップ
・みそ…大さじ1
・いのししの脂身…適量
・みりん…大さじ1
・こしょう

昆布は水に浸けて出汁をとっておきます。

ここから先は煮込むための土鍋で調理していきます。

お肉を切るときに取っておいた脂身を入れて火にかけます。

脂が溶けだしたらお味噌を入れます。

みりんを足して味噌を溶かしながら全体がなめらかになるまで練ったら、昆布だしを加えて伸ばします。

お味噌が溶けたら、いのししとほうれん草以外の具を入れて煮込みます。

🧅小鉢は新玉ねぎ

煮込んでいる間に小鉢づくり。

お鍋の箸休めはそろそろ出はじめた新玉ねぎにしました。冬のジビエと春のはじまり新玉ねぎ。季節の美味しさの共演です。

🧅材料
・新玉ねぎ
・めんつゆ
・オリーヴオイル
・かつおぶし
・こしょう

皮を剥いた新玉ねぎは横方向にスライスします。新玉ねぎは水分が多くて、甘みが強いので、このままで美味しくいただけると思いますが、ひと口味見して辛味が気になるようであれば、10分ほど水にさらしておくといいと思います。

スライスしたらあとは簡単。

めんつゆとオリーヴオイルを回しかけて、こしょうをぱらり、かつおぶしを載せて完成です。

🍲ぼたん鍋の完成です

大根とにんじんが柔らかくなったら、彩りのほうれん草を入れて、いのししのお肉を並べます。

お肉の色が変わったら、ぼたん鍋のできあがり。

仕上げにあらびきこしょうを飾ります。

山の恵み、冬の味。ぼたん鍋。春の訪れを予告する新玉ねぎとのコラボです。

いのししのお肉は、噛み応えがあって、噛めば噛むほど旨味を感じます。お肉そのものの味が濃くて美味しいんですよね。

🐗おまけのひとコマ

切り分けたいのしし肉の端っこ。

せっかくなので焼いて味見してみることにしました。脂たっぷりなので、熱したフライパンに油は敷かずそのまま投入。

ベーコンみたいにカリカリに焼き上げて、塩をひとつまみ、こしょうをたっぷり。

お肉の旨味ってこれなんだな。

そんな美味しさです。煮込んでもそうでしたが、ひと噛みごとに旨味が出る感じ。

この時期だけの貴重な山の恵み。自然に感謝です。


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