フィンランド人は本当にシャイなのか
フィンランド人はシャイである。昔からこの話は聞くと思います。
note以外の場でもこの件について言及されている記事を多く見かけます。
あながち間違ってはいません。また「人による」という身も蓋もない結論も既に出ているでしょう。
少し補足したい
シャイな気質を秘めているフィンランド人は確かに一定数います。
しかし一言で片づけるには少し語弊が生じるかもしれません。
シャイとは一般社会においては「恥ずかしがりや」とされています。
つまりフィンランド人は恥ずかしがりやさん?
うーん、これだけの説明ではちょっと足りない気が。
一方、社会心理学上はほんの少し説明の方向が異なります。
「他者が存在することによって生じる不快感と抑制」と位置づけられているようです。この説明であればもう少し的を得ている気がします。
彼らは得体のしれない人間が近くにいることに無意識に抵抗する傾向があるように思えるからです。これは人間なら誰しも経験があることでしょう。
しかし日本と比べて愛想を振りまかないのがスタンダードなフィンランドでは冷たく見られがちです。
前の職場で経験したこと
自分の経験に基づきそう感じました。前職場では入社間もないころは周りから少し距離を置かれていたからです。
自分を採用した上司と2名ほどの同僚は興味があるのか日本について聞いてきたり話しかけてはくれました。しかしそれ以外の同僚は挨拶や最低限の仕事の説明以外はなし、それこそ世間話はほとんどしませんでした。
さらに他部署の同僚にいたっては挨拶もなくすれ違っても無言、時おり品定めでもしているのかというレベルで"じーーっ"と見てくることも。
またこちらは相手の名前も知らないのに相手は自分の名前を知っている、というケースが非常に多かったです。恐らく彼らの世間話に話題としてあがっていたのでしょう。「よくわからんアジア人が来たぞ」みたいな。
※アジア人は当時自分以外にいませんでした。
外国籍の社員は居てもアイスランド人やエストニア人でした。
仕事場は友達と遊ぶ場でもないですし自分は気にせず仕事をしていました。
なおこの状況は人種差別じゃないかと思う人もいるかもしれませんが、自分はこういう風潮なんだろうなくらいにしか捉えていませんでした。
転機は1年後、唐突に来た
数名を除いて、仕事以外の話は全くしない期間がほぼ1年経ったころ急に変化が訪れました。最低限の挨拶くらいしかしなかった同部署の同僚が頻繁に話しかけてくるように。仕事と関係のない話もしてきます。
また挨拶すらしない関係だった他部署の人間が、親しげに名前を呼んできて、笑顔で「おはよう!」と肩をたたくボディタッチ付きの挨拶。
パラレルワールドに来た気分です。一体何が起こったと思いました。
素晴らしい実績を残したとかそういったことはありません。ごく普通の日に起こりました。またその後も継続して親しげな態度だったので一時的なものでもありませんでした。
長い付き合いのフィンランド人の知人Sに何事かとこの件を聞いてみました。「こんなことが職場で起きたんだけど何が起こったのだろう」と。
知人S「ああ、1年経ってTokageは家具になったんだよ」
は?
家具??と混乱していたので彼は説明を続けてくれました。
つまりその人が存在することに慣れたとのこと。
ちなみに他の知人に同じ話をしたところ、その方は違う方法で表現してくれました。
※なおいずれも本人たちのポエマーな表現方法でありフィンランドの一般的な共通認識ではありません。ご留意を。
今の職場
今の職はそれに比べて最初からそこそこフレンドリーでした。
元来そうなのか、それとも過去フィンランドでの職務経験があり「外国人だけど、まあ大丈夫だろう」と抵抗が少なかったのかはわかりませんが。
それでもやっぱり1年という期間を目安に仲良くなった感覚はあります。
「同僚」から「職場の仲いいやつ」みたいなレベルアップ度です。(わかりにくいですが)
2年もたつ頃には上司ともプライベートなメッセージをやりとりをするようになったので、ここでも無事に家具になれたのでしょう。
家具になった後は逆の立場に
こんな経験をしたのはおそらく自分だけではないでしょう。
フィンランド人もそれに近い経験をしているはずです。
なぜなら新しい人が来るとなったとき、たとえ相手がフィンランド人でも裏では話題にあがることが多いからです。
このように興味があると言えばあるのです。表に出さないだけなのです。
(もちろん粗探しとかそういったネガティブな意味で聞いていません。)
そんなに気になるなら本人に聞けばと思わなくもないですが、それをしないのがフィンランド人だったりします。
これがフィンランド流の"シャイ"なのでしょうか。不思議です。
もちろん人によっては質問もせずに「ふーん」で済まします。
彼らの心中は実際どうなんでしょうね。