難病営業マンの温泉治療㉝【かみのやま~小野川温泉】
<前回はこちら>
鳴子温泉を発ち南西へ、山形県へと突入した。
山形と言えば、さくらんぼ・米沢牛・あき竹城・・・
「温泉」とすぐに答える人は少数かもしれない。だが侮ってはいけない。
スキーリゾートでも知られる「蔵王温泉」、日本一の豪雪地帯「肘折温泉」、大正ロマン漂う街並み「銀山温泉」。リゾート系から秘湯、湯治場系まで揃う超が付くほどの温泉大国。
数ある名湯の中から選んだのは、山形市の南部に位置する「かみのやま温泉」。上山城の城下町として栄えた温泉街だ。
ミニ新幹線(山形新幹線)も停車するこの地、駅から徒歩すぐのエリアには5つの共同浴場が存在し、その入浴料150円と格安。なぜか洗髪する際には「洗髪料」として別途100円収める払う独特の習わしがある(別にシャンプーを貸してくれる訳ではない)。さまざまな浴場を見てきたが、このシステムは他では見たことがない。
中でも沢庵和尚も入浴したと言われる「下大湯共同浴場」は必湯。山形方面に来た際には必ず寄る名湯の一つ。
向かいの無料駐車場に車を停め、浴場へと歩く。何度見ても圧倒される威風堂々の建築美に惚れ惚れしてしまう。外観だけで効いてしまいそうだ。
券売機でチケットを購入。番台は誰もいなかったので募金箱に投券。昭和レトロ感漂う浴場だが、リターン式のコインロッカーもあり清潔感が保たれている。二階は畳敷きの広間となっており、地元民の憩いの場してもその役割を果たしているようだ。
12時半とあって浴場には誰もいなかった。ガラス戸を開けると広がるタイムスリップしたかのような浴室。壁面に掛かるのは「蔵王のお釜」と「上山城」の壁絵、古趣を更に搔き立てる。
熱湯(大)と温湯(小)の2つに区切られた浴槽。ここの源泉温度は64度。配湯量が多い熱湯に挑んだ。ここには温度計があり47度を差している。
湯巡りを始めた当初は1分と入れなかったが、もう激湯も慣れたもの。小さい湯もみ板で3分程攪拌し湯を1~2度冷まし10分程浸かった。塩類系の香り漂うさっぱり系アルカリ性源泉は温まりがよく、脱衣所でも流れる汗が止まらない。
何度でも訪れたい珠玉の一湯。キッチリ効かせることに成功した。
かみのやまから更に南下し、本日の枕は小野小町の美肌を作ったとされる「小野川温泉」。こちらも大好物の温泉街だ。
「山形でどこかおすすめの温泉は?」
と、聞かれるとこの地を答えることも多い。米沢駅から車で20分ほど、路線バスも出ておりアクセスしやすく、米沢牛に時期であればさくらんぼやシャインマスカットなど、フルーツも楽しむこともできる。
旅館も15件ほど集中しており、予算に応じて選択肢も多岐だ。
源泉も秀逸。上品な硫黄臭に女性人気の高いアルカリ性。入った瞬間沸かし湯との違いがはっきりと分かる超美肌源泉。この湯を嫌いだという人は恐らくかなり少数派ではなかろうか。
そんな小野川温泉だが、およそ50年前各旅館が我先にと温泉を乱掘したために湯圧が下がり、源泉枯渇の危機に瀕したという。
若いメンバーが中心になり組合を結成し、現在は街全体で湯を管理するようになっている。旅館によって多少配合の違いはあるようだが、どこの宿にでも安定した湯
をいただけるのだ。
中でも常に街のシンボルであり、守護神の如き神々しさを放つ共同浴場「尼湯」は必湯。伊達政宗が傷を癒したという記録が残る歴史ある浴場は、こじんまりした小さい浴場ながら異彩を放つ存在感。
街全体でも外湯巡りをプロモーションしており、共同浴場への敬意が感じられる点は温泉街としてのポイントが高い。こちらも最安値の200円で拝湯できるので是非立ち寄りたいところ。温泉卵が作れるほどの源泉なので加水しているようだが、湯ノ花が舞う硫黄泉はしっかりと記憶に留まることだろう。
投宿は唯一の自炊湯治場「小野川保養センター」。かつては食事出しもしていたようだが、現在は自炊素泊まり専用となっている。
少し街の中心地から外れるが源泉は他の宿の多くが使用する小野川4号泉。一泊料金3,500円也。温泉街にコンビニ代わりの商店があり、定食屋もあるので街の中でのんびりと一日を過ごせる。
外観は値段相応のものだったが、部屋は予想外に広く綺麗だった。
源泉は内湯が一つ。他の宿と変わらず安定の小野川4号源泉に入れるのでありがたい。サービスを一切求めない湯治旅に取っては、少なくなったこのような宿は本当に有難い存在だ。
行程場今回は見送ったが、山形~米沢近郊には赤湯温泉、白布温泉、新高湯温泉などなど、名湯が粒ぞろいだ。残念だが先を急ぐことに。
小野川を出るといよいよ福島との県境、日本を代表する山の絶景の露天風呂を目指しハンドルを切った。
令和3年5月31日
<次回はこちら>
宜しければサポートお願いいたします!!