長野県 諏訪～蓼科温泉逍遥①【激熱旦過の湯】
※この記事は2020年8月の日記に加筆修正したものです。
温泉大国である日本において、源泉利用の公衆浴場が最も多い長野県。
長寿の秘訣（※長野は日本一の長寿県）は、蕎麦かリンゴか、否、毎日源泉に浸かっているから。まあ、そういうことにしておこうではないか。
茹だるような暑さの中、盆に所用と仕事のため岐阜県へ。
感染対策のため車移動での移動。持病のため長時間運転が出来ず、中間地点で前泊することに。
向かったのは県の中央部に位置する諏訪市。諏訪湖を囲うように街が広がり、南北にそれぞれ上諏訪と下諏訪に大別される温泉群がある。
近年はパワースポットとして有名な諏訪大社や、アニメ「君の名は」の舞台として観光客を集めている。一方であまり知られていないようだが、この地は毎分5,000ℓもの湧出量を誇る実力派温泉地。
街中だからと侮ってはいけない、この一帯に点在する共同浴場の数、なんと72件。私の地元埼玉県全域の件数と同等だ。一見東京のベットタウンを彷彿とさせるような街並み。だが高速のPAにも、そして一般宅にも源泉を引湯できるという全国でも数少ない街。
初回契約料と月会費を支払えば、風呂場の蛇口を捻れば源泉が出る桃源郷。多くの温泉地が湯量不足に駆られ、掘削や動力揚湯、濾過循環に頼らざるを得ない温泉業界。このような湯遣いが出来るのは、潤沢な湯量が出ている動かぬ証。図らずも良泉への期待が高まる。
まずは諏訪湖南側の上諏訪からアタック。
何の変哲もない路地の赤信号で一時停止。信号機に掛かる交差点名「湯小路」。美しき名称に、雷光が背筋に直撃したかの様な衝撃が走る。
とても温泉街とは思えない景観だが、確実に源泉の脈が近くにある。すぐそばの大型駐車場に車を止めて散策を開始。
歩き始めて1分足らずで珍百景に遭遇。Yの字の交差点の中州には、何と3件の鄙び系共同浴場密接している。野沢温泉13か所、渋温泉9か所、草津温泉の19か所。これまで多くの共同浴場街を見てきたが、飛び石はあってもデルタゾーンに3軒連なる浴場は見たことがない。
残念ながらその内2つ、「平湯」と「上湯」は地元民専用。外来は入ることができないようだ。こちらを去ったあとで知ったのだが「平湯」は2014年公開の映画「テルマエ・ロマエ」の撮影で使用されたことがあり、映画の入場チケットを持参すれば入浴ができたそうだ。
当時は温泉が持病の治療になるとは思っておらず。翌年築100年を迎える浴場は外から眺めるだけで入浴の夢は霧散霧消となったた。
最奥に残った1件「大和温泉」は外来を受けているようだが、入口には卒塔婆のような板に「県外からの方は入浴できません」の文字がデカデカと。地元民の結束で守られる共同浴場、感染拡大のリスクを考えれば致し方なし。
結局上諏訪エリアはその後も数件浴場を回ったが、外来入浴を受けている浴場には出会えなかった。デイスパの様な施設に行けば入れてくれたかもしれないが、私が求めているのは「源泉」。
濾過循環のリスクの高い大衆向けの浴場はどうも巡る気にはならず、今回は鉄壁の要塞を切り崩せず後塵を拝す。
湖の北東側、諏訪大社下社秋宮近くの下諏訪エリアに向かうと少々雰囲気が変わる。中山道と甲州街道がクロスするこの地は、かねてから観光客を積極的に受け入れている。
観光協会のサイトの案内も丁寧で一安心。古民家風の旅館が連なる旧中山道沿いには、「日帰り入浴」の看板もいくつか見受けられた。
千思万考の末、ファーストアタックに選んだのは下諏訪で最も熱い源泉が出るという「旦過の湯」。リニューアルされたばかりの綺麗な施設だが湯は強烈。60度近い源泉がかけ流しだ。
小浴槽は47度、大浴槽44度を目安に調整とのことだが、気温が30度を超えたこの日、火刑かと思われるほどの凄まじさだった。数回に分けてダイブを試みる私を長老が苦笑い。負けてなるものかと全身を紅潮させながら、最後は何とか47度源泉に3分程浸かった（※ちなみにもう少し温い露天風呂がある）。
・・・そういえば先日、とあるバラエティ番組を拝見。
人気コメディアンが入る熱湯風呂は何度なのかという企画物だった。リアクション芸を得意とするモヒカン頭のピン芸人さんは46度、一発ギャグで一世風靡した人気トリオは44度だという。。
「私は一体何をやっているんだ・・・」
浴場で茹蛸状態になりながら一人嘲笑。が、源泉に入れた喜びは代えがたいものだ。
令和2年8月10日
＜次回はこちら＞
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