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さすらいの秋旅 弾丸三県湯巡りへ⑥【ホンモノの米と源泉を求めて】

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 宮下温泉「ふるさと荘」を出発し新潟方面へ。只見線不通エリアの会津川口駅を過ぎると、大塩温泉が現れる。

 こちらは湯元近くから炭酸水が湧出することで有名で、天然サイダーは金山町の名物となっている。全国配送も可能だ。「大塩温泉共同浴場」に張られる源泉も二酸化炭素が含まれており、肌にパチパチと気泡が付く。

   源泉温度は38度と温く、10月以降は加温が施されている。
脱衣場には内湯と露天それぞれの温度がデジタル盤で表示され、どちらも40度以下に保たれている。

   日本でも希少泉質の二酸化炭素泉。熱を加えればその炭酸ガスは飛んでしまうため、加温は最小限に留めているようだ。

 
 途中、九州から湯巡りをしているというおじさんと一緒になった。日本一周の旅路らしく、新潟の沿岸部から青森を目指すそうだ。
だが、「これじゃ身体が冷える」とそそくさと出ていってしまった。

 今やどこのスーパー浴場に行っても「温湯浴槽」は見受けられるようになったが、「温泉は熱くなければいけない」という風習は根深く残っているようだ。

 
 大塩温泉では1時間ほど滞在し、ここからは九十九折の六十里越峠を登って行く。途中、日本最大規模を誇る田子倉ダムの無料休憩所で小休止。

 「田子倉レイクビュー」は、展望台や遊覧船を愉しむことが出来るが、この日も生憎の雨だった。ちょうどこの辺りが小出と会津若松の中間地点になり、標高も500mを超える。

 週末は駐車場に出店が出ており、好物のキノコ汁がいただけるが、到着したのは10時。まだ完成していないとのこと。田子倉での休憩は早々に、ここからは一息で小出へ出る。

 
 緩やかなカーブを降りて行くと会津方面よりも少し色づいた紅葉が見られ始めた。やがて国道17号にぶつかると、日本一の米処魚沼ゾーンへ。


 毎年特A評価を受ける名実共に最高品種の魚沼コシヒカリ。時折都内のデパートなどで㎏千円を超える高価で出回っていることもあるが、基本は魚沼産コシヒカリは地産地消だ。

 スーパーなどで見受けられる「魚沼コシヒカリ」には不純米がブレンドされている。地元民の言葉を借りると「完全に偽物」だという。本当に旨い米を食べるには、この辺りの農家から直接購入しなければならない。

 実食すべく、私が昼食にと立ち寄ったのは石打塩沢IC近くの「我が家の卵」。民家風の建物だが、人気店となっておりいつも客で溢れている。

 人気メニューは親子丼やカツ丼に、定食類も数多いが、私が食べたかったのは「米」。豊富なメニューが揃う中、注文したのは最も安い「ムラ定食(500円)」。

 小鉢に味噌汁、ご飯に卵2つという所謂「TKG」だ。日本一の米、いざ実食。

 「う、、美味い」
求めていた味だ。卵も地元魚沼の養鶏所から仕入れたというブランド物。八海山の名水と昼夜の寒暖差に鍛えられた逸品。
 ここ近年の湯治生活で様々な米を食してきたが、やはりチャンピオン強しと言ったところ。


 腹を満たした後に向かったのは、本日2湯目。激渋名湯「大沢山温泉 幽谷荘」。こちらも一見ただの廃屋のようで、誰もここが温泉であることは気付かないだろう。しかも、超が付くほどの美肌成分を含む源泉だ。

 大沢山には日本秘湯を守る会所属「大沢館」や、雲海を望める絶景露天風呂が自慢で、その優れたデザイン性から数々の賞を受賞している「里山十帖」がある。両宿に源泉を供給している本家は幽谷荘だ。


 雨がパラつく中、幽谷荘に到着すると母屋に足場が組まれていた。
嫌な予感。(まさか・・・廃業、閉館???)

 相変わらず看板も何も出ていない入口を入って行く。 

 「すいませーん」

 暫くすると女将さんが出てきた。

私  「お風呂入れますか??」
女将 「大丈夫ですよ。500円」
私  「この足場は?」
女将 「瓦が古くなったので、修理をしているの」
私  「(ほっ。)」


 杞憂に終わった。ここの温泉もなくなっては困る一つ。
そう言えば4年ほど前、男女4人で群馬新潟旅をすることとなり、温泉ソムリエとして私が行程をプランニングした。

 日本を代表する名湯「貝掛温泉」、日本秘湯を守る会の雄「法師温泉」に紛れ、こちら「幽谷荘」もアサインした。

 皆驚いた。

 「こんなところに温泉があるの??」
 「大丈夫。行けば分かるから」、と私。


 家風呂さながらの男女別の内湯。簾がかかっており外すら見えないが、まずは鼻を突く油臭に衝撃。新津温泉(新潟)には劣るが、でめ金食堂(岩手巣郷温泉)、羽根沢温泉(山形)を彷彿とさせる。


 ph8.5のアルカリ性、典型的な美人の湯として知られる炭酸水素塩泉は纏わりつくような肌感。古い角質がどんどん落ちていくようだ。
 先の旅行で、結果的に3つ回った名湯の中で、最も女性評価が高かったのは「大沢山幽谷荘」だった(見た目のインパクトも込だろうが)。
 
 少々外観はハードボイルドだが、是非チャレンジしていただきたい一湯だ。

 この日の宿は六日町の少し外れ。鄙びて、安くて、あまり知られていない素晴らしき宿がある。弾丸秋旅も、仕上げに入る。


                          令和3年10月21日

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