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真夏の温泉ワーケーション⑦【磐梯熱海グルメ】

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 4連休中の磐梯熱海。アクセスの良さと林立する巨大旅館の数から、少々騒がしくなるものと思われた。私が寝泊まりしていたゲストハウス風の宿からは、駅前のロータリーが見える。

 磐越西線は1時間に1本しか来ない。到着時間に合わせ、タクシーや旅館のマイクロバスが出迎えに。だが人出は連休前とさほど変わらないようだった。どこの宿かは分からないが、添乗員がアロハで迎えていたのは少々滑稽だった(磐梯熱海は南国リゾートではない)。
 街を歩く人も少なく、静かな連休となりそうだ。私は変わらず、部屋と共同浴場の往復が基本。神社参拝と食事の買い出しで外出する程度だ。仕事もフレックスタイム制なので体調に合わせて作業を行う。


 3泊でお世話になる宿、こちらも通信状態も快適で部屋も清潔。洗面台は部屋付き、トイレは共用だったが綺麗に手入れされていた。スタッフはカジュアルスタイル。対応も良く気に入った。

 連休最終日は定休日のため他の宿に移るが、その後またこちらに戻り3泊のすることに。本旅はこれで終幕となる。
 こちらの宿、ひとつ驚いたことがあった。連休を過ぎると客は私一人しかいなかったためか、昼間は無人でオペレーションしていた。メイン玄関は電源が落とされ自動扉が開かない。

 宿泊者には定期的に変わる暗証番号を伝えられ、入館時にスマホでその画面を撮影する。サブ玄関はデジタル式のキーロックとなっており、入退館時にはパスワードを入力し開錠する。低価格を実現するための工夫が随所に見られた。
 
 ご主人と女将さん、若いスタッフ3人ほどで交代制で宿守をしていた。聞くと福島県内にもう一軒ゲストハウスを経営しているという。
 ロビーの壁面には投影機でAbemaTVが流れていて、外出の際にニュースを見ながらスタッフと会話をした。すぐに皆さんとは親しくなった。

 その中の一人、恐らく私と同年代の男性スタッフ。毎日浴槽の環水清掃をしているという。源泉かけ流しのため、温度調整が難しく定期的に湯温を測り、バルブで微調整をしているという。当たり前のことのようだが、循環消毒液を使用しているホテルや旅館では、1週間清掃しないという施設も存在する。こんな会話ができるのも、小さい宿ならでは。

 旅館は大きくなるほど経営者の顔が見えない。一方湯治場や家族経営の宿は、連泊すると信頼関係が生まれたりもする。過去に滞在した湯治場のご主人や女将さん、今も交友が続きSNS上でやり取りをしている方もいる。
 

 一人旅のニーズは増えているとは言え、まだまだ未経験の方が多いようだ。どうも、「寂しい」というイメージがあるらしい。かつて文豪がランタンの下、黙々と執筆をする姿が連想されるのかもしれない。

 磐梯熱海は一人旅デビューの地としては割と適している印象を持った。 
駅前にはもぬけの殻となってしまったスーパーや食堂が目立つが、裏路地に入ると居酒屋や中華屋、蕎麦屋にスナックも1軒あった。
 流石に昨今の情勢もあり居酒屋は控えたが、駅から3分ほどの「あたみ食堂」には何度か足を運んだ。

 人気メニューはスタミナ定食。もやしとニラ、レバーにモツ、ニンニクと一味も効いている。いかにもパワーが付きそうだ。暑さから食が細くなりがちなこの時期だが、これはご飯が進む。
 アクリル板で仕切られたカウンターで一人食べていると、タクシー運転手や地元の常連客もぞろぞろとやってくる。観光地値段を感じさせず、安価で盛りが良い。

 
 湯治も終盤に差し掛かったある日、夕刻にまた食堂に向かった。定食を食べ終えたらまた共同浴場へ、閉館時間の20時までじっくり温湯に浸かる。
のはずが、、、食堂のテレビに映っていたのはオリンピック柔道男子66キロ級の準決勝。これを見ては最後を見るまで帰れない。

 奴豆腐に餃子にビール。地元民に混ざり同胞にエールを送る。粘闘の末阿部一二三選手の金メダルが確定した瞬間は、拍手で勝利を称えた。今は流石にハイタッチは出来ないが、疫病さえなければ一体となり狂喜乱舞の瞬間となっただろう。

 車で人里離れた寒村地で、孤独と向き合い湯治に励むのも勿論好きだ。
だが今回人生初の電車湯治旅。その魅力が日々涵養されていくようだ。
 「寂しい」、と二の足を踏んでいる方も、磐梯熱海ならその心配は少し緩和されることだろう。旅もあと少し。


                         令和3年7月24日

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