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超短編小説『三人』

「正月に入るとさ、テレビが2になるよね」
「うん、正月に入るとさ、背筋は3になるね」
 その時、背後から声がした。
「ご飯できたわよーご飯できたわよーご飯できたわよーご飯できたわよー」
 パパの料理は格別だ。チョコミントアイスにこんにゃくを混ぜたような味がする。そこに胡麻ドレッシングをかけるのが私は好きだ。
「木曜日にはさ、君田さん家のトイレに行ってみようよ」
「いいねそれ楽しそう」
「レジャーシート敷いてさ」
「それならうな重作って行けばピクニック気分よ」
 パパは料理を吐き戻しながら言った。

 食事を終え、菓子パンに貼り付いた割引シールを剥がす内職を手伝っていると、私の耳元でねっとりとパパが囁いた。
「ねえ、今度泥水に浸ってみない?肩甲骨の辺りまで」
 なんて素敵なアイデアだろう。パパは……パパはなんて素敵な生き物なんだろう。やろうよ、と言って、私はまた菓子パンに貼り付いた割引シールを剥がす内職を再開した。

 ああ、穏やかだ。こんな日常が永遠に続けば良いのに。我々はただ、平和を望んでいるだけなのに。

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