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自転車のペイント(塗装)とコーティング等についてのお話■2024年01月08日更新

広島県広島市にある『動く自転車屋』『自転車の便利屋』サイクルサービストグトのnoteをご覧いただきありがとうございます。

あまりにも多忙のため、アシスタントJに手伝ってもらっている『快適長持ち系自転車安全整備士』ノーリー(店長)です。
世間のこの連休はメーカー(問屋)さんが動いていないので、進めることができない部分も出てきました。
というわけで、いただいたご質問への回答も兼ねて自転車のペイントやサビ、自動車との比較等について蘊蓄うんちくを書いていきます。


■閲覧者さんの疑問

当店公式noteYouTubeInstagramX等、サイクルサービス・トグトとして発信しているコンテンツの閲覧者さん(以下、質問者さんとします)から質問が来ていました。
他店様にてお買い上げになった自転車についてですが、ざっくりまとめると…

①ママチャリのフレーム及びチェーンカバーなどの塗装部分はどのくらい正常な状態を保てるものか?

②購入してから屋根ありの駐車場に自転車カバーをかぶせて保管していたのにサビが目立つようになったので品質に問題があるのでは?

③19ヶ月前に購入したのに、そんなに早く塗装がダメになるものなのか?

④クルマやオートバイのボディは19ヶ月くらいで錆びることが無いのになぜ自転車は錆びるのか?

という感じです。
実は私、ノーリーは自動車整備士資格も持っています。
と言っても全科目3級止まりで、自動車整備士としての実務経験はありません。
20年以上の昔、ガソリンスタンドのバイトでオイル交換とかはしていましたし、某自動車メーカーの製造工場で働いていたこともあるので、全くクルマに興味が無い人よりは少し知識があるってだけのレベルだと思います。
現役の自動車整備のプロではありませんが、自動車業界にも自転車業界にも身を置いたことがある立場です。
私がその実車を見たわけでも写真を見たわけでもないので、一般論や考察を含む回答と解説をしていきます。

■回答と解説

結論から申し上げると、少なくとも塗装については品質に問題があるわけではないと考えられます。

以下、あくまでも回答と解説であり、決して説教をするような意図はありません。
文面だけだとキツく感じる言い回しもあるかもしれませんが、その点は予めご了承下さい。

自転車のメーカーや車種・仕様が不明なので精度の高い回答はできませんが、サビが発生した原因はいくつか考えられます。

◆自転車のカバー

気になったのは、まさにカバーの問題です。
質問者さんはおそらく自転車を大切に保管なさっていたのでしょう。
屋根付きの駐車場でカバーをかけて保管していたそうですが、1台の自転車に対してカバーをちゃんと複数枚使い回していたのでしょうか?
おそらくそれは無いと思います。
「え?
なんでカバーを2枚以上用意しないといけないの?」
という声が聞こえてきそうですね。
自転車のカバーは雨が直接車体に当たることを避けてくれますが、内部には湿気がたまります。
レインウェアを着たらムレを感じることがありませんか?
まさにそういう状況です。
よほど高性能なレインカバーなら、防水透湿機能があるのかもしれませんが、一般的な自転車カバーにはそんな機能はありません。
晴れの日にカバーをこまめにしっかり干したりしていればまだマシですが、湿気を含んだカバーを被せるとそのまま自転車に湿気を加えることになってしまいます。
もちろん、晴れでも紫外線による塗装面への影響はあるので、できるだけカバーをかけて保管するのは良いことですが、それならカバーは複数枚用意してローテーションで使い回すのが正解です。
当店で自転車用カバーをお求めのユーザーさんには、販売時にそのことをちゃんとアナウンスしています。
もっと言うと、当店では自転車1台に対して高価な自転車カバー1枚を買うより、安価なカバーを2枚以上購入することを実際にオススメしているくらいです。
私自身も1台の自転車に安いカバーを2枚以上使い回しています。
しかしどうやら、そこまでアナウンスする店はあまり無いのでしょう。
ネット通販とかだとそもそもアナウンスがありません。
その手間(人件費)をカットすることで販売価格を抑えているからです。
プロから対面で物を購入する価値はそこにあると思います。

◆自動車と自転車の塗装方法の違い

自動車の製造工場で見た光景で今でも思い出すのが特に塗装です。
とてつもなく大きいプールのようなところに、クルマ(のボディー)をそのままドボンと漬け込んでいました。
塗料の入った水槽内にフレームを入れ、電位差を利用してフレームの内外に均一な塗装皮膜を形成する『電着塗装』というものですね。
フレームの金属部分が外気に直接触れないため、高い防錆効果を得る事ができます。
当然ながら耐久性も折り紙付きですが、その分コストが跳ね上がるため、自転車ではあまり使われることはありません。
趣味性や専門性の高い車種同士はまた別ですが、実用品としてのファミリーカーと一般軽快自転車の価格差にはエンジンの有無だけではなく、こういう塗装の方法や工数の違いも含まれるということですね。

実はクルマもボディーはそうそうサビませんが、シャーシー(車体下面)はサビが生じていたりします。
それを防ぐために、

↑のようなものを使うこともあります。
自転車屋が使うことは基本的に無い物ですが、当店ではご依頼内容によって使うので、自転車屋にしては出番が多いでしょう。

自転車の塗装は基本的に外側だけをスプレーで塗装するだけなので、自動車やオートバイと塗装の寿命を比較するのは現実的ではありません。
特に自転車は構造上、内部に水が溜りやすい乗り物です。
カーボン素材ならサビとは無縁ですが、クロモリも含めてスチール素材はどうしてもサビが出てきます。
よほど手の込んだメンテナンスをすれば別ですが、毎日乗る度にいちいち分解してエアーコンプレッサーでパイプ内部の水滴を飛ばしたりするユーザーさんはいないでしょう。
私も自分の愛車ではそこまでできません。
ちなみにアルミ素材でもサビは発生します。
『白サビ』と呼ばれるものですね。

◆塗装面の寿命

余談ですが、自転車の法定耐用年数は2年とされています。
交通事故での減価償却についての話なので実際の寿命とはまた違いますが、新車購入から2年経過していた自転車の場合、その自転車はもう無価値であると算定されてしまう可能性があるわけです。

タイヤや各ワイヤー類、チェーンやギア類も同じですが、寿命というのは回答のしようがありません。
こういう消耗部品については半年から1年で交換が推奨されていますが、使用頻度や保管場所によっても異なります。
仮に同じ車種、同じ製造品質、同じ組立品質、同じ色、同じ期間、同じ天候、…等々、こういう条件が揃っていたとしても、海から近い立地なのか海から遠い立地なのか、というだけでも寿命に大きな差が出るのは避けられません。
また、本人がどれだけ愛車を大切にしていても、駐輪場等で他人や他人の車体からぶつけられるとキズが入ります。

そこからどんどんサビが生じたりするわけです。
たしかにメーカー(ブランド)や車種による塗装の技術・方法・工数・塗料の品質等は違います。
しかし、どんなに製造段階で良くても、使っていくと避けられない問題ということです。
ちなみに過去に勤務していたショップでも納車から1ヶ月後に無料点検を実施していましたが、購入からたった1ヶ月でサビサビ状態にしてしまっていたユーザーさんもいました。
そのユーザーさんは買ってから完全に雨ざらし(しかも梅雨時期)だったことや、空気すら入れずにノーメンテだったようです。
せっかくの10万円のロードバイクがたった1ヶ月でサビサビ状態とは悲しい気持ちになりますよね。
そのユーザーさんは全く気にしていないようすでしたが。
もちろん、その車体の品質に問題があるわけではありません。
同じ車種で1年たっても全くサビが見当たらないユーザーさんの方が多かったですし。

◆組立の差

エラソーにするつもりはありませんが、事実として間違い無く存在するので解説します。

↑にあるように、自転車は最終的には販売店で組み立てられます。
この組立が、ショップ(担当者さん)によって差が出る部分です。
その差は本当に、すごく…大きいです。

例えば当店では質問者さんがお使いになっている『ママチャリ』(以下、軽快車とします)でも可能な限り分解してから組み立てています。

同業者さんやメーカーさんからも
「やりすぎィ!」
とドン引きされる程です。
各部を分解して、

↑のようにネジ類ひとつひとつにもサビにくくするための下処理を施しています。
が、量販店ではこういう組立はできません。
効率良く車体を組立販売し、修理がどんどん来ることで儲けを生み出し、数多の従業員さんに還元される
からです。
それが一概に悪いわけではありませんが、車体の寿命のことを考えるとお世辞にも良いとは言えませんよね。
いちいちこんな手間(工数)をかけるので、当然コストも上がります。
当店では基本的に値引き販売はしませんが、現状ではこんなに手を入れても追加工賃はありません。
『ステルス値下げ』ということですね。
車体が長持ちするので修理までの間隔も長くなります。
店の儲けは少なくなりますが、ユーザーさんにとってはお得でしかありません。
それでもいいんです。

そしてここまでやっても、鉄素材にはいつか茶サビが生じます。

◆車種(仕様)の差

高価だから全てにおいて良い、安価だから全てにおいて悪いということではありません。
しかし、価格の差は仕様の差でもあります。
スポーツタイプの自転車だと販売価格が250万円を超えるものもありますが、耐久性というか実用性はありません。
F1カーのようにレースだけのための仕様だったりするので、同じ『自転車』と言っても軽快車とは全くの別物です。
とは言え、軽快車同士でも価格によって仕様の差は当然あります。
ヴィジュアル的には大差が無いように見えるかもしれませんね。

↑当店でも取り扱いのある【SAKAMOTO TECHNO】のALEAP(アリープ)は内装3段変速の軽快車ですがご覧の通りの販売価格です。
『本格的なクロスバイク』とされている他ブランドの車体より高額で、軽快車カテゴリーどうしでも他の車種より高額な販売価格設定になっています。
その理由は、使っている部品の素材に大きな差があるからでしょう。
フレームやハンドルバーはサビに強いアルミ素材で、フェンダー(ドロヨケ)はステンレス製です。
材質によって耐久性や価格等の差が生じ、それがあらゆるメリットやデメリットにもなります。
繰り返しになりますが、価格が安い自転車が悪いわけでもないし、高い自転車だから錆びない・壊れないなんてこともありません。
それぞれの車種に違いがあるというだけのことです。
もちろん、車体購入後に部品を交換してアップグレードすることもできます。
カスタマイズはスポーツ車の方がやりやすいですが、軽快車だって可能です。

◆おそらく異常ではない

ということで、サビの発生や塗装の劣化は無いに越したことはありませんが、それだけで品質に問題があると考えるのは早計です。
よくあるのが、車体(フレーム)にヒビが入っているように見えて、実はデカール(車体のデザインに使われているシールみたいなやつ)がひび割れただけだったり…。
デカールは紫外線でひび割れたりします。
塗装が時間とともに色褪せてくるのも自然なことです。
もちろん、プロに点検してもらわないと異常か正常かは判断できませんが、塗装についてだけは品質に異常ということはないと考えられます。
ちなみに当店ならネジ類のサビもある程度は落とすことが可能です。
サビを落としたとしてもネジの寿命のことを考えたら、ネジもたまには新品に替えるべきではありますが。

■美しい塗装を長持ちさせるには

前述したカバーの件もそうですが、塗装面にコーティング処理をするというのも有効な手段です。
当店ではいろいろなコーティングサービスを実施しています。
お手軽なのが『バリアスコート』というガラス系コーティングです。

当店のオーバーホール作業や

新車販売のための組立でも実施しています。

単純にコーティングだけのご依頼も承ります。
バリアスコート施工サービスは当店でも人気のメニューです。
金額は車体の状態や条件によって異なるため、実車を見せていただいてからご案内致します。

↑ヘッドチューブ(車体の先端部分)がケーブル類の擦れやいろいろな原因で少し色褪せています。

そこへバリアスコートを施工すると…

↑ご覧のようにツヤッツヤになります。

デメリットは、マットカラー(ツヤ消しカラー)の乾いた質感がお好みのユーザーさんには合わないということくらいです。

元がマットカラーの場合はツヤツヤテカテカになるわけではなく、↑のように濡れた感じの質感になります。
ですがクリア系のカラーと同じく、水や汚れを弾いてくれる上、もし汚れても掃除が楽になるので、本当にメリットが多いです。
効果の持続期間は3ヶ月~5ヶ月くらいと言われていますが、これも環境によって大きく差が生じます。

■シメ

こんな感じで、真剣に回答・解説すると長くなっちゃうわけですよ。
それでも、質問者さんの疑問にはできるだけ真剣にお答えしたいので、今後もこうしてnote等を通じて回答・解説することもあります。
内容によっては無料だったり有料だったりしますが、一番確実なのは実車を当店へ点検に出していただくことです。
有料になりますが出張も可能で、点検費用も車種や条件によって異なりますので、お気軽にお問い合わせ下さい。
単純に質問等もコメント欄ではなく直接メールか公式LINEからどうぞ。
手がふさがっていたり多忙だったりですぐに答えられない(書けない)場合もありますが…。

■自転車関連のご注文・ご依頼等はメールか公式LINEでお気軽にどうぞ↓

当店は出張修理等が多いため、決まった店休日や営業時間という概念がありません。
他店様が営業していない時間帯でも予約制にてご依頼等を承ります。
また、当店にて自転車の販売(防犯登録含む)も行っておりますが、他店様にてお買い上げの自転車の組立や点検及び調整、修理やカスタマイズ、オーバーホール等のアフターケアも大歓迎です。

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