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ももたろさん。 ーmaterialー

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我が子の家です(違う)#創作
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記事一覧

ある元男子高校生が見ちゃった話

「休憩中すいませんちょっと見て欲しいものが…」
写真を見ながら部屋に入り、何気なく顔を上げた。
2人と目が合った。
誰も動かない。
諒さんがみるみる真っ赤になっていく。
「…喉渇いたんでコーヒー飲んできます」
お取り込み中だった。
ドアって大切だ。

ある保安隊員とある元男子高校生の話

「『あそこにいいケツしてる子がいる』って言って、許される男と許されない男の違いってなんなんだろうね」
「…どうしたんですか突然」
「安心しろ通常運転だ無視しろ」
「ひどいよお前さん〜たまにはくだらない話のってよ」
「くだらないって分かってんのかよ」
「くだらないけど気にならない?」
「まぁ確かに気になりますね」
「広げんな…」
「でしょー?違いってなんなんだろうね」
「やっぱりイケメンかそうじゃな

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ある双子の兄の話

「これで撃て」
そいつらはひどく訛っていた。よくドラマや映画で見るような銃を渡された。詳しい名前は分からない。
「倫、だめ、撃たないで!!」
弟の泣き叫ぶ声がガンガン頭に響く。撃たないで殺されるのはお前だろ、分かってるのか。俺が撃たなければ…
「早く撃て、撃ちなさい」
父の声がズンと重く響く。父は落ち着いていた。隣にいる母も同じだった。
父と母の最期の願いを聞くか、弟の最期の願いを聞くか。ここ

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ある近衛隊員とある元男子高校生の話

「あんたも来るのか」
「ええ、行きますよ」
侑人はバオの隣に立った。
「18禁見たことあるか?…グロい方だ」
品定めをするように、侑人をじっと見る。
「18禁の映画は見たことありませんけど、18禁の現場ならいくらでも」
「ほう?頼もしい」
バオはニヤッと笑った。おもしろいものを見つけた、と言い出しそうな笑顔だと思った。
「死ぬのは怖いか?」
「いや…死んだ方がもしかしたら、会いたい人に早く会えるか

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ある保安隊員の話

シャワーを浴びるために服を脱いでいた。暑くて汗をかいたせいか、防弾ベストが肌にくっついて脱ぎにくかった。
「お前さんさ」
しづるは壁にもたれながら話しかけてきた。
「もし俺が裏切ったらどうする?」
変なこと聞いてくる奴だ。
「それは『俺を』?『国を』?」
「んー…『国を』だね」
こいつはタイミングってものを考えないのか。
「てめぇの口に拳銃突っ込んで脳幹ぶち抜いてやる。俺のもんだと思って噛みしめて

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ある軍学校生の話

「いよいよだな」
「おう、いよいよだ」
俺達はそれぞれの詰所に配属されて、保安隊としてこれから生きていくことになる。
「お前さ、都市のほうに出ていくのかと思ってたよ」
「えっなんで」
「確実にあっちのほうが情報量多いだろ?だから元の世界に戻る方法とか、見つかる確率はゼロじゃない。探しに行くのかと思ってたよ」
真顔で言う。驚いた。まだ覚えてたってことは、こいつ本当にあの話信じてたのか。ごめん、「俺は

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ある保安隊員とある元男子高校生の話

「お前さんなんで保安隊に入ったんだい?」
突然発した問いに、侑人はえっ、と小さく洩らした。こんなことを聞かれるとは思っていなかったらしい。
「いや、ちょっと聞きたくなってね」
「保安隊に入った理由、ですか」
彼は質問を確かめて俺から視線を逸らし、空中を見つめた。それが彼の考えるときの癖であると、この前はじめて知った。
「最初、千堂さんや仙崎さんにお世話になって…病院や児童養護施設の方々にも、すごく

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ある保安隊員の話

なんとも不思議な話だ。要人警護の経験がない3人を、長期間護衛として他国の要人につけるらしい。その3人だけを、だ。警備なんかはしたことがあるが、警備と警護では規模もやるべき事もする意味も、すべてが違う。
「乃南曹長」
「ん?」
乃南は顔だけを千堂の方へ向けた。
「今回の主な活動場所って国外じゃないですか。なぜ軍じゃなく保安隊が派遣されるんです?」
彼女はあー、と言いつつ顔をしかめた。ということは曹長

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あるバーテンダーとある保安隊員の話

街角の小さなバー。と言っても、店長さんの知り合いとかがいつも気軽にやってきて、時々暴れて帰るのでおしゃれだとかそういうのはない。そこがなんとなく好きでここにいる。
「歩さんこんばんは!」
今日もなかなかに賑やかな中、1人の女性がまっすぐカウンターへやってきた。
「いらっしゃいませ秋月さん」
歩はにこやかに秋月を迎えた。
「いつものやつお願いします」
「今日もおつかれさま」
いつものやつを用意しなが

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ある保安隊員とある元男子高校生の話

「SNS…ってあれですよね、誰とでも簡単にネットで繋がれるっていう」
俺の言葉を聞いた2人が同時に顔をしかめる。
「んな簡単にできねぇよ」
「まだそんなふうに教えてんの?気がしれない」
「そういうふうに習ったというか読んだというか…元のところもそうでしたし」
元の世界と言うのも、元の時代というのも違う気がした。時間軸が同じなのか、空間軸が同じなのか、はたまたどちらも違うのか。パラレルワールドに飛ば

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ある近衛隊員の話

「なぜ俺が行かなきゃならない」
彼は半年間拘束されることにたいへんご立腹な様子だった。仕方が無い、決まったことなのだ。
「国王陛下直々の命令は断れないだろー俺だって行きたかないわ!」
今回のことは勅令扱いになってしまったのだ、俺もたいへんご立腹だ。断れるわけないじゃないか。
「しかもジャック、お前と一緒か」
ものすごい勢いで睨まれる。これでもマシなほうだ、もし気に食わない奴であればこの場で殺されて

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ある保安隊員の話

「お?これは…」
慣れた事務処理を淡々とこなしていると、隣でページをめくる音が止まった。
「どうしたんですか遠藤さん」
新人が来るということで、いつもは全くと言っていいほど書類に目を通してくれない上司に無理矢理書類を読ませていた。静かにしていると思ったら、ちゃんと読んでいたらしい。
「乃南くんこの子さ、あの双子のお兄ちゃんだよね」
遠藤が指し示した写真の人物は確かに見覚えがあった。名前の欄には夏目

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ある保安隊員の話

あくびを噛みしめながら玄関の鍵穴に鍵を差し込む。1回まわす方向を間違えてやりなおした。ガチャンと音がして鍵が開いた。ドアを開け、我が家の中へ入る。
「おかえりー」
「ただいま…えっ?」
聞こえないはずの2人の声。リビングへ入っていくと、今日はいないはずの2人がそこにいた。
「兄ちゃんおかえりー」
いや、おかえりーじゃねぇだろ。お前ら確か…
「おい…学校は?」
双子が双子らしく同じタイミングできょと

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