ある保安隊員の話

あくびを噛みしめながら玄関の鍵穴に鍵を差し込む。1回まわす方向を間違えてやりなおした。ガチャンと音がして鍵が開いた。ドアを開け、我が家の中へ入る。
「おかえりー」
「ただいま…えっ?」
聞こえないはずの2人の声。リビングへ入っていくと、今日はいないはずの2人がそこにいた。
「兄ちゃんおかえりー」
いや、おかえりーじゃねぇだろ。お前ら確か…
「おい…学校は?」
双子が双子らしく同じタイミングできょとんとした顔をこちらへ向けてきた。
「何言ってんだよ〜今日土曜日!」
今日が土曜日なのは俺だって知ってる。そうじゃなくてな…?
「…お前ら今日出校日って言ってなかったか」
今度は2人は違う反応を示した。1人はピタッと動きを止めてじっとこちらを見つめ、声を出さずに「あっ」と口を開け、目を見開き、息を呑んだ。1人は「げっ、忘れてた!」と言うが早いか寝転がっていたソファーから慌てて起き上がろうとして盛大にコケた。
「いってぇぇぇぇ!」
「…倫大丈夫か」
倫は「あぁぁぁ」とか「うわぁぁぁ」とか言いながら痛みに悶えているようだった。
「どうすんだお前ら、もう10時だぞ」
杏がまた音を出さずに慌てはじめた。

2人の答えを待っていても時間がすぎるだけなので、高校に欠席の連絡をした。「兄さんって本当甘いよね〜。俺にも」とまたため息混じりに言われそうだ。
「歩何時に起きるっつってた?」
思い出したように聞いてみる。
「えっとね〜夕方!4時くらいだって」
「4時…?あぁそうか土曜日か…俺もそれくらいに起こしてくれ」
階段をのぼりながら下へ声をかける。
「いいよー!」
こうやって声が聞こえるのも、あの人達が守ってくれたからだろうな、と思いつつベッドに沈みこんだ。

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