ある近衛隊員の話

「なぜ俺が行かなきゃならない」
彼は半年間拘束されることにたいへんご立腹な様子だった。仕方が無い、決まったことなのだ。
「国王陛下直々の命令は断れないだろー俺だって行きたかないわ!」
今回のことは勅令扱いになってしまったのだ、俺もたいへんご立腹だ。断れるわけないじゃないか。
「しかもジャック、お前と一緒か」
ものすごい勢いで睨まれる。これでもマシなほうだ、もし気に食わない奴であればこの場で殺されてる。冗談じゃなくて本当に!
「睨まないでバオ…怖い」
それでも文句は言いたいお年頃。盛大に溜息をつかれる。
「そんなことで護衛なんか務まるか」
「ただの護衛じゃないだろあれ!俺じゃなくても務まらないだろ!」
往復で半年の予定で敵国に非礼を詫びに行く。俺ら二人を含めた三人で。恐怖でしかない。
「ほんとなんでベテランじゃなくてペーペーの俺達なの?」
「知るか、お得意のお国の事情だろ」
吐き捨てるように言った。彼は食うためだけに軍に入ったそうだ。
「予算か、予算なのか!」
「知るか。どっちにしろこれはあんたにとって無意味なことでは無いだろう」
突然矛先が自分に向かってきたので驚いてじっと見つめ返してしまった。
「なんだ、ちゃんと資料読んでたのか…うん、二つ目の約束を果たしにいく」
あいつを迎えに行くんだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?