ある近衛隊員とある元男子高校生の話

「あんたも来るのか」
「ええ、行きますよ」
侑人はバオの隣に立った。
「18禁見たことあるか?…グロい方だ」
品定めをするように、侑人をじっと見る。
「18禁の映画は見たことありませんけど、18禁の現場ならいくらでも」
「ほう?頼もしい」
バオはニヤッと笑った。おもしろいものを見つけた、と言い出しそうな笑顔だと思った。
「死ぬのは怖いか?」
「いや…死んだ方がもしかしたら、会いたい人に早く会えるかもしれないんで」
人は理由を考える前に選択するんだってしづるさんが言ってたっけ。
「それはいい。それはいい」
とても満足そうだ。
「バオさん、気をつけてないと来ますよ」
空気は、ぴんと張っている。
「言われなくても臭いで気付く。あいつら美味くなさそうだが」
完全に飢えた獣の目だった。
「人間って美味しいんですか?」
ふと気になってしまった。
「人間?いいもん食ってるからな…美味い」
バオは唇を舐めた。えっ食ったことあんの!?
「らしい」
「らしい…ですか」
「あぁ」
よかった…無かった。
「食いたいか?」
「いや全く」
思いっきり首を振る。
「同感だ。いいか?奴らは人間だ。家族がいる、待ってる人がいる、戦いたくない、死にたくない。可能性の話だがそういう奴らの集まりだ。言われなくても分かるだろうが、勝算はこちらにある。だがそういう奴らを相手にしてることを忘れるな」
真っ直ぐ相手の方を見つめている。
「…了解です」
俺も同じ方向を見た。
「あんたとは合図無しでよさそうだ」
本当に合図無しで、俺達二人は突っ込んだ。

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