ある保安隊員の話

シャワーを浴びるために服を脱いでいた。暑くて汗をかいたせいか、防弾ベストが肌にくっついて脱ぎにくかった。
「お前さんさ」
しづるは壁にもたれながら話しかけてきた。
「もし俺が裏切ったらどうする?」
変なこと聞いてくる奴だ。
「それは『俺を』?『国を』?」
「んー…『国を』だね」
こいつはタイミングってものを考えないのか。
「てめぇの口に拳銃突っ込んで脳幹ぶち抜いてやる。俺のもんだと思って噛みしめて逝けよ」
目の前の鏡を睨みながら答えてやれば、「おー怖い怖い」とでも言うように肩をすくめる。
「諒はどこまでも諒だね」
当然だろ俺は俺だ。
「裏切ったらそれぐらいされても文句は言えねぇだろ」
「それぐらいってお前さん、殺されたら文句なんて言えないだろ」
「だから殺すんだ」
自分でもよくわからない返答をする。しづるがこちらへ近づいてきた。
「昨日みたいなかわいいところ見てたら、とてもそんなことができるようには…」
容赦なく肘鉄を食らわした。

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