ある保安隊員とある元男子高校生の話

「SNS…ってあれですよね、誰とでも簡単にネットで繋がれるっていう」
俺の言葉を聞いた2人が同時に顔をしかめる。
「んな簡単にできねぇよ」
「まだそんなふうに教えてんの?気がしれない」
「そういうふうに習ったというか読んだというか…元のところもそうでしたし」
元の世界と言うのも、元の時代というのも違う気がした。時間軸が同じなのか、空間軸が同じなのか、はたまたどちらも違うのか。パラレルワールドに飛ばされたのか、タイムスリップしたのか、時空を超えて迷子になったのか。
「もしかしてお前SNS使ってたのか」
なんで睨まれてんのか。
「えっ普通に使ってましたよ。連絡手段の1つみたいなもんでした」
「ひえー!あんなの使いこなしちゃうなんてお前さんら化け物かい?」
おどけたように千堂さんが言う。
「俺が使えるくらいだから簡単ですよ」
2人とも流行りのものに疎いおじいちゃんみたいな反応するのやめてほしい。
「お前の脳みそどうなってんだ」
それ最早悪口じゃないですか
「普通ですって…」
「これ使いこなしちゃうのかい侑ちゃん?ねぇねぇ」
見せられたPC…みたいなものの画面にはよく分からないものが写っていた。
「えっ…俺が知ってるのと違う」
なんだこれ。1つの画面が3つに分けられてる。しかも変なアイコンみたいなものがたくさんある。複雑すぎて何がどうなってるのか全く分からない。
「やっぱりな」
「千堂さんすごく安心した」
「こんなの使ってる奴らが信じられねぇな」
夏目さんは画面を睨みつけていた。なんか恨みでもあるんだろうか。
「だよなー使いたいとも思わない。これ個人情報ダダ漏れになるからさ、危険なんだよね」
後半は俺に向けられたものだった。
「…なんでこの人たち使ってるんですか」
「決まってんだろここ暇人しかいねぇよ、見てみろ」
画面にはコメントが飛び交っている。
「そういうのが楽しいらしい。わざわざ打ちこまなくても音声を文字に変換して、そのまま投稿されるだって」
「へー…喋るだけでいいんですか」
「そうそう、自動で変換されるから。でもどこの誰かすぐ分かるから、悪口とか言うと一発でアウト」
「SNSの悪口言って半殺しにあった間抜けもいたな」
…命懸けでSNSすんのかよ…
「…変換って気付かないうちにされてたりするんですか」
「うん自動だからね」
「いままでの会話って…」
夏目さんが瞬時に固まった。そういやめっちゃ悪口言ってたな夏目さん…
「大丈夫アカウント持ってないから!」
「びっくりさせんじゃねぇよバカが!」
思いっきり肩のあたりを叩かれた。

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