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黒猫と金貸し 01

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#文フリ東京

case01-22 :幸福

case01-22 :幸福

「そ、そんなこと言われても事情が分かりませんし関係のしようがないですよ!」
今井が俺が肩に置いた手を、身をよじるように振りほどき声をあげる。

「狩尾さん、今井さんの言うことはもっともなんだが俺から説明するか?」
俺は狩尾が今井に対してどう自分の家のことを説明しているかも知らない。まずはそれを含めて承諾を得るかのように狩尾に預けてみることにした。

「…え?私?えっと、その…」

ここで察する。今

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case01-23 : 黒猫

case01-23 : 黒猫

5月になっていた。

狩尾と出会った冬からもう既に暖かな季節に移り替わり、木々は青々とした葉を揺らしていた。

狩尾の別宅を訪れた翌日、約束された額が振り込まれていた。もう狩尾がどういう生活をしているのかも分からない。

ただ、狩尾の母親とはなぜか身の上話を聞くような関係になっていた。身近に話せる相手がいないのだろう。俺も何故か話を聞いていた。

「そうそう!藤嶋さん、来週えりが誕生日なんです

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