見出し画像

TLA Magazine vol.10 【アカデミーの設計と学び】

この連載は、アカデミー生がアカデミー生にインタビューを行い、リアルな声を記事としてまとめた企画です。今回はスタッフの方のリアルな声をお届けします。

interviewer / writer
島﨑 恵茉
好奇心の赴くままに生きる東京都在住の高校2年生。音楽と対話が好き。アパレル産業に生じている社会問題の解決を目指している。

新宅 悠生

食が好きな大阪府在住の高校2年生。"学び"のために活動中。将来は生物工学を学びたい。
interviewee
神谷 渉三(きいろさん)

株式会社TimeLeap スタッフ
株式会社I'm beside you 代表取締役社長

山本 研(みがくさん)
株式会社TimeLeap スタッフ

ー TimeLeap Academy(以下、アカデミー)以前から TimeLeap のスクール事業を運営する中で、どのような学びがあり、どのようなスクール事業の設計を目指されていましたか?

きいろさん
参加してくれた生徒の考え方や思いの純粋さ、まっすぐな伝え方には、いつも学ばされています。
「(行動力や発想力などに)年齢はあまり関係ない。」「みんな違ってみんないい。」という綺麗ごとは世間でもよく言われているし、自分の頭の中でも分かっているつもりですが、アカデミーの活動を通じて「本当にそうなんだ。」と日々思わされています。
応募してくれた人の気持ち、パッション、可能性に対して「こんな子が世の中にいるんだったら、その子達が暮らしやすい環境を作らなきゃいけない。」と思うし、そのために自分ができることを普段から考えるようになりました。
アカデミー内では、グラウンド整備の公務員のおじさん的ポジションにいるつもりです。ITなどを使って環境を整備する係についていますね。
また、完全オンラインでここまでできるということを体感できたのもよかったと思います。

ー 年齢が関係ないなら、なぜ子供を対象にされましたか?
理由は2つあります。ひとつは「自分が未来志向で、未来のための活動を常にしていたいから。」もうひとつは「親になってから考えると、未来を変えるのは今の子どもたちだから。」です。
世の中に対して最もインパクトが大きいことは ”若い人たちが自分たちの感性で世の中を変えること” で、”子どもたちが未来を変えやすいように整備すること” が、大人が未来に対してする行動の中で最もインパクトが大きいと考えています。これを教育と呼ぶかどうかはラベルの問題です。

みがくさん
TimeLeap のスクール事業は Saturday School から始まっていて、その頃から一貫して「年齢は関係ない。」「社会と教育の間にある壁を壊したい。」という想いがあります。子どもも社会に生きているのに、「子どもは社会人じゃないのか」と。この「社会人」という概念を壊したかったんですね。
アカデミーの「社会接続」というコンセプトも、Saturday School からのテーマです。メンターとの対話やディスカッション、「誰かに何かを売ってみる」という経済活動や、買い手へのアプローチの設計などを通して、子どもたちの社会接続を目指しています。

ー アカデミーを通して得られた学びは何ですか?

きいろさん
そもそもオンラインでどうやれるかどうかすら最初は分からなくて、初めての完全オンライン開催を通してトライ&エラーを繰り返しました。これが全て学びになったし、結果的に運営も良い形になりました。
また、完全オンラインにしたことで全国の子どもが参加できるようになったことも大きなメリットです。”毎週土曜日に渋谷に集まれる人”という募集の壁から脱却できて、バックグラウンドも周りの環境も学年も違う人がブレンドされてできたこの環境は、本当にダイバーシティに富んでいます。オンラインでもひとりひとりの生徒の個性の良さを体感できました。

ー 多様性があることでアカデミーを通して得たスタッフの学びは学びは何ですか?また、アカデミーで生徒は何が得られたと思いますか?
アカデミー生の中には、自分の考えを最初からしっかり持っていた子も多くいましたが、そんな子たちでさえ、アカデミーの活動の中で高校生が小学生の発想に衝撃を受けたり、小学生にとって高校生の行動が学びになったりしていました。
あまりにも年齢や方向性が違い過ぎると、アカデミーのような相互の学びは最大限発揮されません。最適化された環境の中でアカデミー生は、多くの小中高生が知らない多様性を学び合い、心の中に埋め込まれていくことで変化していきました。アカデミー生にとって多様性を知ることがマイナスではないことは確かですね。46歳である私も全く同じで、アカデミー生たちと常に学びあっています。

みがくさん
TimeLeap としてオンラインスクールを運営することは初めてだったので、チャレンジもあったし得られた知見も幅広かったように思います。オフラインのスクール事業では、身体を使ったコミュニケーションが取れました。オンラインではそれができない。だからこその難しさを感じていました。
オンラインでコミュニケーションを重ねるうちに、人と人との話し合いの本質を学ぶことができたように思います。それは、コミュニケーションをとる相手のことを慮り、愛情を持って接することです。オンラインであれ、オフラインであれ、重要なことは変わりません。

ー アカデミー生から学んだことはなんですか?
いつもアカデミー生から学びまくっています。アカデミーのような多様性のあるコミュニティでは、”1人1人違う個性や価値観を持っている”ということを当然のように学ぶことができます。アカデミー生から「こんな生き方もあるんだ。」と気付かされることも良くありますね。
他にもアカデミー生のチャレンジする姿や、勇気、情熱、純粋さを感じることができ、大人になるにつれて失われてしまってる何かをを思い出せるのは面白い経験でした。

ー 「アカデミー生同士での学びが多かった」との意見がアカデミー生から聞かれましたが、みがくさんやきいろさんがアカデミーの設計で気を付けていることはありましたか?

みがくさん
いじめなどで相手を傷つける人や他者に対して攻撃的な発言をする人は生まないようにすることはアカデミー生同士のコミュニケーションを設計する上で大前提になります。アカデミー開講前にスタッフ同士で行った ”コミュニケーションスタンスに関するディスカッション” は大きな議題の1つでした。“アカデミー生のコミュニケーションは無しにして、メンターの授業だけみんなで受ける” という選択肢もあったけれど、「アカデミー生の学びはそれでは最大化されないだろう。」という結論に至りました。
基本的にアカデミー生間のコミュニケーションは自由にしているし、それがナチュラルな姿だと思います。

きいろさん
スタッフによるカリキュラムごとのグルーピングは神業だと思います。彼らは個性を踏まえてデザインしていて、これは愛情や人を見る力がないとできず、マニュアルがあったとしてもできることではないです。いつも「すごいな。」って思いながら見ています。

ー 人を見るときにどこを見てますか?
みがくさん

究極的には、人との接点、人との関わりには「暗黙知」的な要素が関わります。暗黙知とは、自転車に乗れる理由を全て説明できないように、顕在化されない領域に知があるという意味です。人を見るときにどこをみているのか、という問いに対しては、答えられる部分と、暗黙的、感覚的な部分も存在しているということです。
例えば、アカデミーでグループ分けをする際に、一つの基準で決めることはありません。あえて言語化するのであれば、「授業中の表情」「感想シートに書かれている内容」「興味の方向性」などの変数も考慮してグループ分けしています。また、平日のスタッフと1対1で対話するコアメンタリングにおいても、アカデミー生の才能の方向性や集中直の質、傾向性などをみてコミュニケーションをとります。特定の変数に着目せず、より幅広く、かつ感覚も大切にしています。

ー これからのアカデミー像について教えてください。

みがくさん
これからのアカデミー像としては、アカデミーの質をより高めていくことは当然ですが、もっと社会を巻き込んだ形を模索していきたいです。挑戦する子どもたちを、少し先を生きる人たちが支えてあげる。そしてお互いが学べる、アカデミーがそんな場所になるといいですね。
今アカデミー生に通ってくれている子たちにとっては、TimeLeap Academyという場所が心のふるさとになってくれれば嬉しいです。今後それぞれが自分の道を進んでいった後に、いつでも心置きなく戻ってこれる場所になってほしいです。

きいろさん
アカデミーの質を落とさずに広げていきたいと思っています。僕は別の側面からのアプローチとして、自分で立ち上げたIT会社で自分がフォーカスしやすいところからアカデミーをサポートしていく予定です。
僕は1974年生まれの団塊ジュニアで、社会の中心になった後、いわゆる次の老害の世代になってしまいます。その団塊ジュニア世代の人に次世代のインパクトを伝えることで、世代間の断絶分断を防ぎ、また同世代ならではの視点でその世代の意識をどう変えていけるかを自分なりに考えて、TimeLeap にも貢献していきたいと思っています。要は「ITに従事する面」と「おっさんの面」で貢献していきたいですね。

ー どのような世界にしたいですか?

きいろさん
全ての人が学び合える世界が理想形です。息子が生まれたときに、息子に対して「ただ生きててくれさえすれば良い。」と思っていたし、「それ以上何も望まない。」と思っていました。しかし、ある時から「日本の教育問題はたくさんあって、こいつ(息子)は繊細だし、このままだと死んでしまうかもしれない。」と思うようになりました。「死ぬのは親として流石に許容できないぞ。」とも思いました。その頃から、「息子が世界中のどこにいこうとも、個性が認められて、お互い認め合って暮らせるようにしなければならない。」と考えるようになりました。そして、そんなことを思っていた時に仁禮さんと会って、仁禮さんの目指す社会を知り、仁禮さんの活動にジョインしました。
僕の事業、I’m beside you は「唯一無二を見える化する」ということをビジョンにしています。世界中の人が唯一無二であることをお互いに理解しあえるようになること、それがやっていきたいことです。

みがくさん
自分の未来に対して絶望する人がいなくなってほしいと思っています。世界には問題が蔓延っていて、でも、その様々な問題の裏側には幸せを享受している人がいて…。そんな現実から目を背けてはいけないと思っています。まず、一人でも多くの人が自分の生存に脅かされることなく生きられる世界にしたいです。
また、今の日本は「豊かな社会になっているにも関わらず、自殺をしてしまう人がいる」という矛盾にも感じる問題があります。世界のどこかでは生存を脅かされている人がいて、その裏側では豊かなのに自らの命を絶たなければいけないほどに追い詰められている人がいます。全ての人が安全に生きることができ、自分の未来に絶望することなく、一人でも多くの人が生きることに喜びを感じられる、そんな世界を目指しています。

ー なぜそれらの問題に対して他人事にするのではなく、みがくさんが解決していこうと思うようになりましたか?
世界の人たちの苦しみを完璧に”自分ごと”にすることは不可能です。自分自身も中高生のときに、これだけ恵まれているのに ”AIによって仕事が奪われる” とか ”社会が高齢化していく” という情報を受け取り、未来に絶望していました。
自分や世界の未来に対して自分ごとになったきっかけは、17歳のとき、高校の修学旅行で鹿児島の知覧を訪れたことです。高校2年生の僕と同い年くらいの青年が、知覧から特攻隊員として戦地に向かっていきました。知覧にある資料館には特攻隊員たちの手紙が収納されていました。その手紙のうちの1つに「私は国のために死ぬのではない、未来の子どもたちを想って飛ぶのです」ということが書かれていました。
この時、心を大きく揺さぶられたんですね。あぁ今噛み締めている幸せは、これまでの誰かが未来を思って残してくれていたものなんだって。
それから、未来が自分ごとになりました。まずは自分の未来に、そして少しでも良い世界を残したいな、と強く想いました。TimeLeap Academyはこれからの未来を作るための確かな一歩だと信じています。

TimeLeap 公式HPはこちら!

I’m beside you 公式HPはこちら!

最後までご覧いただきありがとうございました。

Next→vol.11

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?