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TimeLeap Magazine Vol.11 【幸せを創るために】

この連載は、アカデミー生がアカデミー生にインタビューを行い、リアルな声を記事としてまとめた企画です。今回はスタッフの方のリアルな声をお届けします。

interviewer / writer
島﨑 恵茉
好奇心の赴くままに生きる東京都在住の高校2年生。音楽と対話が好き。アパレル産業に生じている社会問題の解決を目指している。

新宅 悠生

食が好きな大阪府在住の高校2年生。"学び"のために活動中。将来は生物工学を学びたい。
interviewee
仁禮 彩香
株式会社TimeLeap 代表取締役

ー TimeLeap Academy(以下アカデミー)以前からスクール事業を運営する中で、どのような学びがあり、どのようなスクール事業の設計を目指されていましたか?

生徒の自己認識や才能発揮は、アカデミー以前のスクール事業からテーマにしていました。いろいろな職業の大人との接点や、生徒同士のコミュニケーションを通して、自分の価値観を認識することができます。アカデミー以前のスクールでも、それをプレゼンテーションにまとめ、アウトプットしてきました。
その中で、ディスカッションは足りているものの実践と結びつける要素が少なかったと感じていました。インプットしたものをアウトプットまでまで昇華することに難しさを感じていたので、社会接続の手段として ”アントレプレナーシップ” や ”起業経験” に注目しました。
アカデミーは当初、昨年(2020年)の秋冬にオフライン開催を予定していたプログラムで、それ以外の時期に Leaper School や Money School を一昨年同様開催する予定でした。しかし、感染症流行のため開催の見通しが悪くなったため、オンライン開催に変更しました。その際、オンラインでどこまでできるのか試してみようとプログラムを一新しました。
今でこそオンラインのプログラムは増えていますが、アカデミーを企画した3月下旬、世の中には面白いオンラインプログラムがあまりありませんでした。オンラインプログラム内で実践まで実現するのは難しいので、それ相応のことができる、自走できる生徒を求めていました。

ー 当初は「コロナは収束する」と言われていましたが、それでもオンラインに振り切ったきっかけはなんですか?

状況を見ていて、これは収束しないだろうなという確信を持っていました。仮に感染症が収束したとしてもオンラインでのプログラムは可能なので、ウィズコロナを前提に舵を切った方がむしろリスクが低いと思っていました。

ー 今振り返って、どのような点がオンラインでよかったと思いますか?
勿論反省点もありますが、完全オンラインでもここまでのコミュニティが作れることが分かりました。また週2時間程度のサポートでもある程度生徒たちが自走できるプログラムを作ることはでき、生徒も成長することができることも分かりました。もちろんその背景には、1期生として入ってきてくれたアカデミー生が、オンラインでも活発に議論や質問ができる人だったいうこともあると思います。関東圏以外にアカデミー生のエリアを広げられたのもとてもよかったです。
また「どの部分がオンラインに適していて、どの部分がオフラインの方が良いのか。」という、オフラインとオンラインのバランスに対する知見を得ました。コロナが収束したときに役に立つと思います。

ー オンライン開催に当たって、反省点は何ですか?
アカデミー期間内にもっと社会にアクセスできるところまでできればより良かったですね。今回は全員別の事業案で進めていたのでベクトルも進行スピードも異なっていて、その上でアカデミー生それぞれの成長スピードを無理やりねじ負けて、一律同時に社会実践を含めたフィードバックをもらうところまで進めると”やったこと”ではなく”やらされたこと”になってしまうのでそこのサポートがとても難しく感じました。それでも私たちプログラム側の設計次第でもっとフィードバックループを早められたのではないかなと内省しています。

ー 1年を振り返ってアカデミーでどんな学びや気付きを得ましたか?

オンラインでもメンターの熱量が生徒に伝わることを学びました。メンターの体験や学びを、熱量を持って伝えるとオンラインでもアカデミー生にちゃんと伝わったことや、授業内で質疑応答ができる状態が続いていたのがよかったです。アカデミー生に高い受け取る能力もあったことも一因だと思います。伝える側と聞く側のレベルが一致した結果ですね。
また、たとえリアルで会うことができなくても、アカデミー生の同士のディスカッションやスタッフとの 1 on 1 を通じて、実際に実践することができたり、新しいものづくりを提供できることを実感しました。アカデミー生1人1人が年齢関係なく、それぞれのペースでアカデミーを活用できたと思います。
一方で、ディスカッションの際に深い段階まで入り込めない子もいることが分かりました。オンラインだからこそスタッフのサポートも難しく、場によってはアカデミー生にお任せ状態になってしまう難しさも感じました。
“考える”ことに年齢は関係ないと思うので、こちらも年齢で評価しないようにしています。年齢ではなく、その人が今見えているもの、見えていないものに焦点を当てて、補うようなサポートをしています。

ー アカデミーで印象的だった出来事はありますか?

アカデミーに入ってすぐに事業計画書やビジネスモデルキャンパスを作成してもらいましたが、スタッフとのディスカッションを経て、やりたいことががらっと変わった人が多かったことが印象的でした。その背景には、アカデミー生自身の考えが深くなったことや、ビジョンと現実のどちらも見れるようになったことなど、さまざまな要因があると思います。
アカデミー生とのメンタリングの際に、アカデミー生に提案をしたり、悩みの答えを言いたくなったりすることもありますが、そこは本人から引き出すように気を付けています。本人に何かを押し付けないようにすることは凄く難しいんですよね。「どれだけ質問ベースで答えられるか。」が鍵になると思います。そのため、「起業家教育プログラム」ですが、マインド(を育てる)部分が最も大きな要素だと思います。
また、メンタリングや進捗を追う中で、メンタルの状況が悪くなった人が一定数いました。その状況下で、アカデミー生自身が ”今の自分はなにができるのか” について凄く考えたと思います。結果「やらない」という選択を意志を持って決めた人もいるし「やりきろう」と選択した人もいて、それを決断した瞬間に出会えたのは本当によかったです。自分で決断した人たちの清々しさは印象的で、この経験が生徒の成長に繋がっていくと思います。

ー アカデミー生に何を求めていましたか?また、アカデミー生らしさって何だと思いますか?

期待していたアカデミー生像は、アカデミーを生かして自分を成長させようという意欲を持つ人や、自走する力を持つ人です。初めてのオンラインプログラムだったので、誰もが参加できるプログラムではなく、アカデミー期間で「成長したい。」と思っている人を求めていました。
また、一貫して「アカデミーは学校ではないので、成長意欲が高い人へのスタッフのコミットメントを上げるよ。」とアカデミー生には伝えていました。正直、アカデミー生それぞれの成長度合いは大きな差がありました。今回のコンセプトとしてはそれでよかったと思います。限られた期間をどう生かしたかはそれぞれ違いますが、本人が成長しようとしたベクトルと、アカデミー(のベクトル)がマッチした人が飛躍的に成長を遂げた印象があります。
実は、私はアカデミー生に事業や成長の差があったとしても、「ハッピーに生きてほしい。」と思っています。最終的にコミュニティとしてスタッフやアカデミー生や大人など、助け合える仲間ができた人が多かったんですよね。これはアカデミー生と TimeLeap が産んだ一種の価値だと思います。今後につながるコミュニティを自分たちで作ろうとしているのが、アカデミー生らしさだと思います。

これからのアカデミー像について教えてください。

この後どういう形で運用するかはまた0から考えようと思っています。今年は「起業家軸」でアカデミーを運営しましたが、今回得た学びやフィードバックをうけて、これからも様々な方法で子ども達に対してアプローチし続けるつもりです。今までと同様、自己認識、社会接続、才能発揮は軸にしますが、そのための手段は起業家軸に限りません。

ー 「起業」と「自分の人生を切り拓く」というコンセプトはどのように決められましたか?

自分の知識や能力を価値として社会に提供することは、これから社会に出ると必要なことですし、小中高生がやってはいけない理由はありません。それなのに、実際に(社会に)何か価値を届ける経験や、それをするための思考回路の育成は、学校生活の中でほとんどありません。
そんな、学校でできていないことを提供する手段として私たちは「起業家教育」を行っています。そのため、軸は同じくして手段は置き換え可能です。「価値を生む」という曖昧な概念を、起業家教育に置き換えたことで、多くの人にイメージしやすいような設計をしました。

今後仁禮さんはどんな人になりたいですか?

教育に絶対的な正解はありません。足りていない部分あるからこそ、私たちが新しい仮説を提案して、アップデートし続ける必要があると思います。勿論私たちにも足りてないところはありますし、現場の生の声を聴かなくなったらおしまいです。教育業界でやり続ける以上は、常に生徒の声を聞いて、私たちを更新し続けようと思います。
私たちの活動の軸はよりハッピーに生きていける人を増やすことです。

ー 仁禮さんにとっての幸せは何ですか?

子どもたちの才能が開花する瞬間や、苦手を克服した瞬間、何かに気が付く瞬間に立ち会うことです。
当時、私は小学生の頃、学校内で自分の代が一期生だったため、常に最高学年として下の学年の子たちのサポートをしていました。人数も少なく、卒業することには1年生から6年生までの全員を知っていました。当時の学校では、今 TimeLeap で実際に行っているようなプロジェクトやグループワークの時間が多くありました。
自分が持つ能力を使って新しいものをデザインするために、ただ単に機会を与えるだけではなく、周りの様々な物事に対して問いをたてる必要があると思います。小学生の頃から学びの瞬間に立ち会えることが喜びでした。

ー 後輩育成のために行動しようと思考が変わったきっかけは何ですか?
小学生のときは完全に自分のために行動していましたし、受けたいと思っていた教育を受けることができて幸せでした。ですが、小学校高学年になったときに「こんな教育を多くの人に届けられたらいいのに。」と思い始めました。そう思えたのも、小1の頃に通っていた公立の学校で違和感を感じたからです。
その後、中学校の進学先を考えていたときに、「日本の学校について理解してない部分もあるから、体験しよう。」と思い、受験をしてインターではない中学校に進学しました。進学して「がちでこんなひどいんだ。」と思いましたし、中学でできた友達の多くが「学校がつまらない。」と言っていて、こんな状況は悲しすぎるな、と思いました。

ー 途中で投げ出さず教育に向き合い続けられる根底には何がありますか?

勿論「もういいや。」と投げ出したくなることも、やりたくなくなることもあります。昔は ”人や社会に対して貢献出来ること” が喜びでしたが、いつしか自分の中で義務化されて辛さを感じ、「自分が嫌なら一度距離を置いてみよう。」と距離をおいた事もありました。
距離を置いてから、やはり私は ”才能や個性が開花する瞬間に立ち会うこと” に喜びを感じて、それは私の好きなことでもあることに気が付きました。結果的に、好きなことで社会に貢献することができる方法を見つけられたのは幸運でしたし、自分が喜びを得られながらも周りに応援してくれる人もいて、「私だからできることだな。」と納得できました。
結局は”楽しさ”がないとできないですよね。

ー アカデミー生にはこのような人が多かった印象があるのですが、 学校外の学びで、学校の学びが面白くなることに相関性はあると思いますか?
相関性はあると思います。テストのための勉強が何に使えるかを疑問に思う人が多かったけど、ワクワクや楽しそうに仕事をしている人たちにたくさん出会えるだけでも自分の将来を想像できたり、こんな文脈で活かせるかも!という創造性が生まれます。

どんな世界にしたいですか?

楽しさや喜びを感じて「自分の選択に納得」できる人が多い世界にしたいです。学ぶ際も、働くという軸も、喜びや楽しさに対して誇らしさのようなものが持てると、その人の人生は「生きててよかったな。」と思えるものになります。この思いは昔から変わっていません。

ー そもそも自分の人生を切り開く必要性は何だと思いますか?

自分の時間に対して主体的になれると、楽しいと思える時間、豊かな時間が増えると思います。自分の人生が満たされていることを実感している状態って素敵ですよね。人のせいにして生きるよりも、自分で自分の環境を楽しくしたり、やりたいことをしたり、自分で何かを決めて生きれると、自分の時間を楽しめるのではないでしょうか。
アカデミーの「自分の人生を切り拓く」って言葉は躍動的に頑張らなければいけないイメージみたいなものがついてしまうけど、本質的には、私はただみんなに自分を大切にして、幸せに生きてもらえたらいいなと思っています。
主体的ではなくても、その人の幸せにつながるベクトルで行動する人が多くなればいいな。せっかく生きているなら、自分の時間を楽しんで生きるほうがよくないですか?生きていると、何度も自分の人生を切り拓くことが怖くなると思いますが、私は自分の道を切り拓くことで幸せを求めるプロセスが起業と似ているから、今回は「起業家教育」というテーマに決めました。

最後までご覧いただきありがとうございました。

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