【レビュー】『ホームで勝てないもどかしさ』~第22節ファジアーノ岡山VSザスパクサツ群馬~

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 ホームで勝てない。ファン・サポーターの大声援を受けてプレーできるホーム戦は一体感を作り、相手にプレッシャーを与えて、選手たちはより大きな力を発揮できる。いわゆる、「ホームの利」だ。ファジアーノ岡山の本拠地であるシティライトスタジアム(通称 Cスタ)は陸上競技場にもかかわらず、熱狂的な”ファジサポ”が声援を送り、岡山の雰囲気に包み込まれる。そんな後押しを受けて、2019年のホーム成績は11勝5敗5分けと勝ち越している。社会を悩ますウイルスと共存することになった2020年は8勝7敗6分け。そして、今シーズンは前半戦が終わって2勝8敗1分。声を出しての応援ができなくなってから勝率は落ちている。今年はそれが著しい。内容は決して悪くないが、踏ん張れない試合が続いている。最後の最後に泥臭くても決め切る、身体を張ってゴールを死守する。岡山らしさともいえるプレーがホーム戦で見ることができないのは、やはり背中を押してくれる声がないからなのだろうか。

スタメン

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ファジアーノ岡山
・フォーメーションは4-4-2。
・ここ数試合は右SH起用が多かったDF河野諒祐が右SBに。
・MFパウリーニョが久々のスタメン。
・MF木村太哉が右SHで起用された。

ザスパクサツ群馬
・フォーメーションは4-4-2。
・DF渡辺広大がスタメンに復帰。
・J2屈指の個人スキルの持ち主FW大前元紀に要注意。

攻撃で魅せたい狡猾さ

 3分、DF井上黎生人からDF宮崎智彦へ長いボールが渡る。MF徳元悠平とFW齊藤和樹が前のスペースに駆け上がることで空いたライン間に斜めのパスがDF宮崎からFW上門へ通った。シュートには繋げることはできなかったが、裏を狙う動きと手前で受ける動きを同時に行い、空けることができたのはFW上門が得意なエリア。得点力に悩まされるチームだからこそ、このような連動した動きを増やして、得点の可能性を高めていきたい。

 また、連動性に加えて相手の目線や身体の向きを変える攻撃も展開できれば有効になりそうだ。このシーンではDF井上からのサイドチェンジで相手の目線を右から左に変えている。目線や身体の向きが変わると、ボールとマークする選手を同一視野に収めることが難しく、適切なポジションを取り直しながら、マークの確認など状況把握をやり直さないといけない。そんな瞬間に隙は生まれるし、その隙を狙ってゴールに迫る狡猾さを見たい。ゴールに迫る貪欲で真摯な姿勢は見られるが、相手の正面でのプレーが多く、少し真面目過ぎるのではと思うことも少なくない。相手の意表を突いたり、相手の隙に付け込むような狡猾さは得点力アップに必要な要素ではないだろうか。


真面目な守備は好印象

 4-4-2で前から限定をかけながら、奪い所を定めて、粘り強い守備対応で守る岡山のブロック守備は日に日に精度が上がっている。攻撃の選手も守備への意識を高く持ち、両SHや2トップが献身的にプレスバックをすることで、後ろの選手を助けている。真面目な選手たちのパーソナリティと監督が構築する規律がマッチしており、誰が出ても高い水準で安定した守備ブロックを中断期間までに築き上げているのは後半戦に向けて好材料。

  この試合では、サイドに追い込んで相手SHに対してSBが対峙してからSHが戻ってきて挟み込んで奪う守備が随所で光った。特に左サイドのMF徳元の貢献は大きく、挟み込みが早い。簡単にはやらせない気迫、SBの選手を2枚置くことで得られる恩恵の大きさを感じた。

 FW上門の守備も向上している。パスコースの限定や中央を塞ぐ立ち位置だけでなく、奪うタイミングを自分のものにしている。ボランチに対するプレスバックは、背後から死角を突いて一気に寄せる。予期せぬタイミングでアプローチをかけることで、虚を突いて奪うやり方だ。FWとしての起用が増える中で、成長してしっかりと自分のものにしている。FW上門の守備を問題視する意見を目にすることはあったが、もう心配する必要は無さそうだ。


こぼれ落ちた勝点1

 岡山はホームの手拍子とペンライトが送るパワーを背に、ほとんどの時間で主導権を握れたと言える内容だった。監督が交代した下位チームとの対戦ということもあり、勝利を期待した人は多かったはず。しかし、試合終了間際のMF岩上祐三にゴールを許してしまい、そんな期待は打ち砕かれた。岡山が打った14本のシュートのうち、枠内に飛んだのはたったの4本。群馬が打ったシュートは7本で、枠内シュートは2つ。ゴールネットを揺らしたMF岩上のシュートの直前にFW大前が放ったシュートがもう1つの枠内シュートだった。引き分けに終わるだろうと思っていたら、最後の最後にやられてしまった。

 失点シーンを振り返ると、FW大前への寄せは甘かったのではないか。FW大前のような選手に簡単に前を向かせてはいいのか。この試合ではタイトな守備対応が継続的にできていただけに、後悔が残る失点になってしまった。突いていきたい隙を作ってしまい、仕留められた。相手よりも多くシュートを打っても、相手よりも多くパスを繋いでも、負けることがあるのがサッカー。何としてでも降格圏を脱したい群馬の意地や粘りが岡山を上回ったという試合になってしまった。悔しい敗戦を嚙み締めて、中断期間を生かして、後半戦で巻き返してほしい。

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