見出し画像

【レビュー】『勝ちきるために必要な3つの要素』~第32節FC琉球VSファジアーノ岡山~

全文無料公開。面白いと感じていただけたら投げ銭150円やスキ、RTやいいねをよろしくお願いします。

スタメン

画像1


マッチレポート

特徴のぶつかり合いは痛み分け

 4連敗中の琉球と5試合未勝利の岡山、遠のいている勝利が欲しい両チームは、開始早々から自分たちの強みを出していく。

 前半に多くのチャンスを作ったのは岡山。ヨンジェとデュークが揃ってスタメンに名を連ねると、ヨンジェが背後を狙い、空いたスペースにデュークが下がってボールを引き出すという互いの良さを引き出し合う良い関係性でゴールを目指す。

 最初のチャンスは5分。前線で粘ったデュークがこぼれ球を拾うと、パスを受けた上門がキックフェイントからニアへ鋭いシュートを放つ。相手の虚をつく切り返しからのシュートだったが、GK猪瀬が高い集中力で、足を伸ばし、ゴールを守った。

 2トップが強烈な存在感を放ち、琉球のDFに圧を与えると、岡山は立て続けにチャンスを作る。8分には、河野の斜めのボールを石毛がライン間でフリック。これにヨンジェが抜け出してゴール前にクロスを送るも、ヨンジェのポジションはオフサイド。オフサイドによってチャンスとはならなかったが、斜めのボールと、1タッチパス、3人目の動きという3つの要素で崩すことができた。連動した噛み合ったこの攻撃からは、準備してきたアタッキングサードでの崩しの成果が表れたシーンだっただろう。

 岡山の迫力あるプレスと攻撃を受けていた琉球だったが、ボランチが下がり、最終ラインを3枚にして数的優位を作りながらビルドアップを開始。ハーフスペース(内側)のSHへ斜めのボールを入れて目線を中央へ集めてから、ワイドレーン(大外)のSBへ展開してからのクロスという内→外の経路でゴール前に迫る。

 9分、右サイドの裏に抜け出した阿部からのクロスを池田がシュート。角度が無かったことから、池田は狭いニアハイを狙うしかなく、ボールは枠を捉えず。岡山がショートパスを繋ぐ琉球のビルドアップに対して、サイドの誘導して人数をかけてボールを奪おうとしたところをかわした金井の1タッチパスと阿部の抜け出し。下で繋ぐだけではない、パスを繋ぐことが目的ではないという背後を狙った琉球のボールの動かし方だった。

 互いにチャンスを作るが、決定的なシーンには至らず。スコアレスで折り返した。

 後半に入ると、琉球がアタッキングサードに入る回数を増やしていくが、シュートを打たせなかった岡山が試合を動かす。

 73分、岡山が右サイドに人数をかけてマイボールにすると、パウリーニョの縦パスで攻撃のスイッチオン。デューク、上門とつないでボールは石毛へ。石毛のクロスをデュークがダイビングヘッドで合わせてゴールネットを揺らした。デュークは町田戦以来の7試合ぶりとなるゴール。そのまえの71分に、ゴール前で決定機を外してしていたため、先制ゴールは汚名返上になった。

 先制した岡山は80分に白井と濱田を投入。[5-4-1]に変えて、琉球に使われたくないゴール前を固めるが、スコアが動く。

 87分、徳元の背中を取った金井に福井から精度の高いロングボール。これを処理しようとした徳元と抜け出そうとした金井が衝突。エリア内で徳元がファウルをしたとして、PKの判定。キッカーの富所が冷静に決めて、琉球が同点に追いついた。

 試合終了のホイッスルが鳴るまで、両チームは勝点3を獲得するためにゴールに迫ったが、スコアは動かず。勝点1を分け合う結果となった。

 

コラム

完璧な流れからのゴールと決めきらないといけない決定機

 73分の先制ゴールは本当に素晴らしかった。人数を集めて相手を逃がさないボールの奪い方。シームレスな守から攻を実現させたパウリーニョの縦パス。良い距離感でのデュークと上門のコンビネーション。アシストした石毛のクロスとゴールを決めたデュークのヘディングというクオリティの高さ。複数人が関わって、同じ絵を描いて、流れるような攻撃を完結させた。

 個々の選手がゴールに向かってプレーするというビジョンを共有することができたのは、日ごろのトレーニングの賜物。前半8分にもオフサイドになったが、複数人が連動してパスを繋いで崩すことができたシーンがあった。今まで嚙み合っっていなかったものが、多く噛み合った試合だったからこそ、引き分けに終わったことは悔しい。

 組織的な守備もできている、連動性も増している。そんな試合を勝ちきるためには、決めきるときに決めないといけない。奪った1点はこれからに繋げたい大きいものだったが、本当に1点しか決められなかったのかという部分には疑問が残る。

 岡山にはゴールシーン以外に決めきらないといけない決定機はあった。71分のデュークがGKと1対1になったシーンと、81分の木村のクロスを白井が倒れ込みながら合わせたシーンだ。

 71分は、ロングボールのこぼれ球を拾った上門が勢いを持ってゴール前に突進して2、3人を引きつけてからデュークに横パスを出してGKと1対1という決定機になった。パスがすこし後ろにずれたことでデュークのコントロールからシュートの流れがスムーズにいかず、シュートはGK猪瀬に正面で弾かれてしまっている。

 81分は、徳元のパスを受けた木村が左サイドで金井を突破。そこからしっかりと中を確認して、左足で丁寧な折り返し。これを白井のスライディングシュートは、大きく枠を外れた。

 どちらのシーンもシュートに持っていくまでの過程は相手を上回る精度を発揮している。だからこそ、もったいない。ラストパスの精度、シュートの精度を上げていくことは続けていかないといけない。精度が伴えばゴールを決めることができるということを先制ゴールが示している。勝つために、必要な決めきる力。シュートを打つまでの過程において、細かなプレーにも目を向けて精度の向上に努めてほしい。


メリハリと集中力

 5試合ぶりの勝利は目の前だった。絶体絶命なピンチと言えば、上里の強烈なシュートを梅田が防いだシーンくらいだったか。ゴール前に入られたり、クロスを入れられたりしても、高い集中力とコレクティブな守備で決定機を作らせなかった。やはり、このチームは良い守備からリズムを作っていくチームなのだ。

 しかし、試合終盤の87分に失点を喫した。失点シーンを振り返ると、ポイントは2つ。

 2つ目は福井に精度の高いロングボールを蹴らせてしまったこと。このとき、岡山はボールホルダーに制限を掛けに行くことなく、ブロックを作っている。福井がパスを受けて数メートル運んでからボールを蹴る前に、上門が少し寄せているが、間に合っていない。琉球が前に選手を押し上げている状態でもあったため、ある程度ロングボールを蹴られてることを想定している必要があった。

 2つ目のポイントは徳元のポジショニング。ゴールに近い内側を優先的に守り、外はパスが出てから対応しに行くという守備をしていく。このとき、徳元の背中には金井がいた。ロングボールが出されると、徳元はボールだけを見て、ボールの落下地点を見誤りながらボールに対応している。金井が自分の背中にいたことを認知していたのか。これは本人に聞いていないとわからないが、自分と金井とボールの関係性を理解しきっていないように感じた。だからこそ、ファウルのジャッジが下された場面で、徳元はボールに行っているが、相手にぶつかってしまうという事象が起きたのかもしれない。

 ジャッジが間違っていたのか、正しかったのか。いずれにせよ、チームとして行く行かないのメリハリがハッキリしなかったことと、終盤で集中力を切らしてしまったことが、PKと同点ゴールを招いてしまった。悔しい失点と引き分け。これを教訓にしていかないといけない。

 

ここから先は

0字

¥ 150

期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

読んでいただきありがとうございます。 頂いたサポート資金は遠征費や制作費、勉強費に充てさせていただきます!