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【活動日記】『読者を想像して書き分ける』~第3節栃木戦~

ファジアーノが今シーズン初のアウェイ戦を戦っているとき、僕はランチを食べる人で賑わうファミレスにいた。ジューシーなハンバーグが鉄板で焼かれている音、スパイシーなカレーの匂い、食器と食器がぶつかる音、楽しい食事の時間を過ごす人が包み込むテーブルとは違って、僕は寺田さんと一緒にタブレットを見つめていた。


今シーズンはファジラボで速報マッチレポ―トをアップすることになっている。寺田さんがめっちゃ頑張っているんだけど、兼任している広島の試合と被ることもあるから、これから日程によっては僕が担当させていただくときもあるみたいだ。


どうやって書いているのか。どんなことを意識して書いているのか。


Jリーグ公式サイト、エルゴラッソ、ファジラボと3つの媒体でマッチレポートを書き分けている寺田さんから“イロハ”を学んだ。


試合を見た後に書くものだと思っていたけど、寺田さんはキックオフの少し前からマッチレポートを書き始めた。マッチレポートとは、一言で言うとどんな試合だったかが書かれたもの。どのように点が入ったのか、どんな展開で試合が進んでいったのか、どっちが勝ったのか。分かりやすく読者に伝えるものがマッチレポートだ。


僕は寺田さんの向かい側でノートを開く。それから試合で感じたことをメモしていこうとしたけど、何を書けばいいのかわからない。『栃木のプレスが激しい』とか、『ファジアーノのパスのテンポが良い』とか書こうとするけど、それは主観であって、人によっては感じ方が違う。ノートに何を書けばいいのか迷っていると、寺田さんは『シュートを時間と一緒にメモする』と言った。その一言で止まっていた僕のボールペンが走る。シュートは主観ではなく、実際に起こったこと。シュートを1つの明確な基準にしていくと、メモをしやすくするだけでなく、後から見返すときにチャンスシーンを遡りやすいメリットもあった。実際に、noteのレビューを書くときにもメモを見返せばよかったんだ。


『3分⑩クロス⑮落とし㉖シュート、ブロック』、『18分⑯クロス⑮ヘッド、GK正面』とメモをしていく。シュートシーンをメモしていく。前半、ファジアーノ岡山のシュートは6本に対して、栃木のシュートは2本だった。ファジアーノの方がよりゴールに迫れた前半だったことが読み取れた。



『48分、バーイス、FKゴール』と勢いよくノートに書き連ねる。徳島在籍時に同じ位置から決めたFKがよぎったけど、まさか同じように決めるとは。チームとしても久しぶりの直接FK弾には興奮して、紙が破れるくらい力強くメモをした。


その後も、ファジアーノのシュート、栃木のシュートもメモしていく。試合終了後、勝利の喜びを分かち合いながら、試合中に寺田さんが書いていたファジラボのマッチレポートの仕上げていく作業を横で見る。簡潔に試合内容を総括する最後の1文を僕も考えたけど、ピタリと当てはまる言葉を思いつかなかった。まだまだ修行が必要だと痛感した。


試合終了からおよそ45分後、アップする速報マッチレポートが完成した。アップされたものを読みながら、構成を教えてもらう。冒頭に試合の設定を分かりやすく伝える。試合展開、結果を書いた後に、感情を書く。最後に試合を一言でまとめる。町田戦の速報マッチレポートを自分が書くことをイメージしながら、しっかりと頭に叩き込む。


一通り終わったあと、寺田さんに素朴な疑問をぶつけた。


『3種類くらいマッチレポートを書いているじゃないですか。Jリーグ公式やファジラボのものは何となくイメージできるんですけど、エルゴラッソではどういうことを意識して書いているんですか?』


寺田さんは丁寧に答えてくれた。


『エルゴラッソを買って読む人は、サッカーがめちゃくちゃ好きな人。エルゴラッソを読む前に試合結果を知っていて。どんなゴールだったのかも見ている人が多い。だから、読み物としてしっかりと読んでもらえるように書くこと。それから僕は、どういう試合だったのか、自分が感じたことをはっきりと書くようにしている』


Jリーグ公式のマッチレポート、ファジラボのマッチレポートは速報性が重要で、試合を見ていない人が読む可能性もある。だから、ポイントを押さえて試合の中身が伝えるようなレポートにする。エルゴラッソは試合が終わってから、ある程度の時間が経って読者のもとに届くから、どんな試合だったのか、テーマに絞って書く。読み物として面白いものにすることが求められる。


読む人を想像して、読者に合わせて文章を書き分ける。ライターとしてすごく必要な能力だと、すごく感じたけども、伝える相手を意識して書くことはすごく難しい。だって、実際に相手が見えないから。でも、できるようにならないといけない。相手が見えないんじゃなくて、サッカーが好きな友だちに読んでもらうことを想定しよう。戦術ブログを書いている人に読んでもらうことを意識してみよう。自分の中でターゲットを設定することで、書き分けやすくなると思う。


ただがむしゃらに書くのではなく、読んでくれた人にもしかしたら自分に向けて書いてくれているのかもと思われるような文章を書くサッカーライターになりたいな。


8日、初めて政田に練習取材に行くことができた。これからは実際に取材をする寺田さんからもたくさんのことを学ぶことができる。学ぶことが本当に多すぎるけど、楽しくて仕方ない。

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