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【レビュー】『0-5の雪辱を晴らすウノゼロ勝利』~第41節V・ファーレン長崎VSファジアーノ岡山~

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スタメン

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強固な守備ブロックを崩すために

 強固な[4-4-2]の守備ブロックを形成する両チームの一戦。左右への揺さぶりに対して、素早いスライドで対応。どちらも中央へ差し込むことに苦戦した。なかなか決定機を作れないまま時計の針が進む。

  岡山が長崎のブロックを攻略するべく、1タッチプレーに3人目の動きを合わせる仕掛けを狙っていた。デュークへの縦パスで攻撃のスイッチを入れると、落としを受けた石毛から1タッチで裏に抜ける上門へのスルーパス。下がってきたデュークが空けたスペースを上門が取りに行き、そのタイミングで1タッチのパスが出ると、相手が反応しにくいタイミングでの攻撃になっていた。あと少しのところでパスがズレてしまい、この形からのゴールこそなかったが、デュークへの縦パスを起点にした1タッチコンビネーションから感じた主体性。これは昨年のアウェイ長崎戦ではあまり感じられなかったもの。メンバーの変化はあるが、1年後の対戦で十分に渡り合えた。。閉鎖感をなくし、主体性をもたらせた攻撃というのが有馬監督が今シーズンで積み上げてきたものなのだろう。

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 対する長崎は、岡山のブロックを攻略するために、ボランチのカイオ・セザールの飛び出しと、サイドハーフのインナーラップを仕掛けた。

 右のウェリントン・ハットがタッチライン沿いでサイドバックの宮崎をピン止めし、その背後にカイオ・セザールが斜めに飛び出していく。ブロックの中央を突く攻撃ではないが、岡山の選手の身体の向きを変えようとするものだった。

 左サイドでは、大外に張るサイドバックの加藤聖が高い位置でボールを持ち、サイドハーフの米田が内側から縦に突き抜けるランニングでサイドの奥への侵入を試みた。外と内の立ち位置は非常にハッキリしていたし、ニアゾーンを狙う意図も明確だったが、岡山のカバーリングの速さが上回っていた印象。

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 決定機はあまり作れなかったが、左右で異なる設計をして、ゴールに向かう長崎の攻めは見ていて面白かった。ただ、岡山にとって一番危険なゴール前への侵入はあまりなく、それほど脅威には感じなかった。都倉へのシンプルなクロスの方が、多少強引ではあるものの、クロスの質と都倉の高さと強さという質で殴られる方が岡山としては嫌だったのかもしれない。

値千金の決勝点と絆を感じる円陣

 46分40秒、相手陣内深い位置で長崎のスローイン。これを岡山がカットすると、ボールを収めたデュークが中央に運んでパス。これを受けた上門が右足を振り抜くが、毎熊のブロックに遭う。バイタルエリアでのルーズボールの奪い合いになると、誰よりも足を止めずに、ボールへの反応をやめなかった石毛がこぼれ球を拾い、そのまま左足を振り抜いた。ボールはゴール右隅に吸い込まれて、ネットを揺らした。

 スローインをカットして、相手の準備が整う前に中央にボールを入れる。どちらにボールが渡るかわからないゴール前にカオスを作り、そのカオスをものにしてのゴール。やや強引だったかもしれないが、美しく崩しての1点と、泥臭く奪っての1点は同じ1点。有馬監督のもとで戦う残り2試合、『絶対に勝つんだ』という想いがルーズボールを拾い、ゴールネットを揺らしたのだ。

 ゴールを決めた石毛はアウェイ席に駆けつけたサポーターにに拳を突き出して、ベンチに向かった。サブのメンバーも、あるいはベンチに入れなかった選手も一緒に戦っているという一体感を感じた。また、安部を中心に有馬監督のもとへプレーしていた選手がピッチから集まる。スタッフも集まる。石毛と喜びを分かち合っていたベンチメンバーも集まる。肩を組み、円を作った。パウリーニョが有馬監督の頭をポンポンと触る。ベンチの前にひとつの大きな輪ができた。絆を表す円陣が解かれたあと、石毛と有馬監督は力強いハイタッチから、熱い抱擁。12試合負けなしのという単に調子が良いだけでなく、チームの雰囲気の良さ、有馬監督を慕う気持ち。結束の強さを感じるゴール後の選手の振舞い、満面の笑みを浮かべる有馬監督の姿は涙腺を刺激するものだった。

みんなで掴んだ勝利

 1点を追いかける長崎は52分に、今シーズン限りで現役を引退する玉田圭司を投入。岡山のブロックを左右に揺さぶり、玉田がリズムの変化をもたらしてゴールに迫った。

 57分には玉田がキープしてカウンターの起点になると、都倉がゴール前に突進したが、パウリーニョが身体をピタリと付けてボーをつついて防いだ。

前半よりもカイオ・セザールがゴール前に飛び出してきたが、担当するゾーンに入ってきた選手がしっかりと対応。決定的な仕事をさせない。

 67分、ウェリントン・ハットクロスに合わせた都倉のヘディングは梅田ががっちりキャッチ。68分にはワンツーで中央に入ってきた玉田を安部がタイトなマークでストップ。

 みんなが集中して対応を続けたし、強度を落とさなかった。終盤には4-1-4-1にしたり、5バックにしたりと形を変えても、メンバーを入れ替えても、やることは変わらない。ゴール前中央に侵入させない、左右の揺さぶりに徹底して付いていく。入ってくるロングボールを跳ね返す。愚直に守り続けた結果、長崎の猛攻を危なげなく耐えきり、勝利を収めることができた。

 昨年の0-5で感じた悔しさを晴らすような充実した戦いぶり。決して偶然で勝ったのではなく、この日に出せたチームとしての力が、長崎を上回った。

 ラスト1試合。ホームに迎える千葉戦。相手も12試合負けなしと好調を維持している。有終の美を飾るために、Cスタで指揮する有馬監督の最後の試合に花道を。自分たのち力と、積み上げてきたもの、一体感を信じて、勝利で2021シ―ズンを終えよう。

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